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アギーレJAPAN初陣の楽しみかた~ミスター第一印象を探せ!~

2014.09.04

金崎夢生

kanazaki
「俺のこと覚えてる?前回のミスター第一印象は俺だよ!」【写真】=Getty Images

文=フモフモ編集長

 さぁ、やってきました。新たな4年間の始まり、アギーレJAPANの初陣が。日本側からすれば4年越しのアギーレ氏への想いが届いたという、記念すべき試合でもあります。これからどんな4年間を過ごしていくのか、胸躍る第一歩を刻みましょう。

 初陣はタダの1試合とは意味が違います。物事には何でも「初めて」があり、そこには特別な感慨があるもの。初恋は特別ですが2度目・3度目の恋はそこまで特別ではありません。初体験は忘れられない思い出ですが2度目・3度目はよく覚えていません。初夜は特別な一夜ですが二夜目・三夜目はただの日常。初陣もそう、初陣だけの素晴らしい喜びがあり、それは二度とやって来ないものなのです。

 初めてのメンバー発表。

 みなさんもドキドキしたのではないですか。「え!」という新鮮な驚き。「誰?」という素朴な疑問。多くの識者が選手名鑑を慌ててめくりながら「サカイ…」とやっている場面を想像しながら、こういう選考をするんだというトキメキを覚えましたよね。

 初めての背番号発表。

 誰に期待し、誰は今後呼ぶつもりがないのか。識別番号を言うだけなのにドキドキしますよね。8番が空くのを狙っていたであろう柿谷曜一朗さんが、目の前で田中順也さんに8番を持っていかれたことに同情してみたり。アギーレ監督的には何となくの割り当てなのでしょうが、柴崎岳さんが7番をもらったことに「遠藤保仁さんの後継者指名ですね!」と浮ついてみたり。

 初めてのスタメン発表。

 理想としてはこういうチームを作りたいんだ、という意志表明の瞬間。4年の中で紆余曲折し、結局は違う形に落ち着くのでしょうが、一歩目だけはまっすぐゴールに向かっているはず。初陣でしか見られない「初志」がそこにはあるはずです。貫徹できるかどうかは別問題です。

 選手入場(並び順、初招集選手への気遣い感)、キャプテンマークを誰が巻いているのか(長谷部さんの沽券問題)、国歌斉唱(肩を組むときの距離感、人間関係)、試合前の円陣(長谷部さんの沽券問題)、メンバー交代(アギーレ監督の行動パターン)、ピッチ脇での戦術的指示(アギーレ監督の行動パターン)、負けたときのキレ方(アギーレ監督の行動パターン)、試合の反省会を兼ねた食事会(長谷部さんの沽券問題)、すべてが初めてのトキメキに満たされている。自分の子どもが「初めて立った日」や「初めてしゃべった日」を見るような気持ちで見守らなくてはもったいない。すべてが見所、すべてがメモリーです。

 少しくらい失敗があってもいいじゃないですか。

 いや、むしろ初々しい失敗こそが「初めて」の醍醐味。

 初めてキスした日、前歯をぶつけたほうが思い出になる。

 そんな気持ちで温かく見守っていきましょう。

 僕が特に念入りにねちっこく見守りたいと思っているのが、きっと現れるであろう「ミスター第一印象」について。初陣のメンバーはこれから挑むどの試合よりも準備期間が短く、じっくり選ぶ余裕がない中での選考だったはず。選手の人間性や協調性まで把握するのは現実的には難しいところ。選考にあたっては多分に「第一印象」がモノを言っていたはずなのです。恋愛でも、まず「第一印象」が大事なように。

 アギーレJAPANも、ぶっちゃけ今は「第一印象」だけで選ばれている段階。だからこそ、いざ目の前で観察したり、直接話してみたりしたら、「あれ、思てたんと違うな…」というケースが出てくるはずなのです。この短期間の視察でめっちゃいい第一印象を残し、第一印象で選ばれ、第一印象だけでチームを去っていくオトコ。それが「ミスター第一印象」。


 例えば、前回のザックJAPANの場合。

 ザッケローニ監督自身がメンバーを選び、自ら采配をふるった初陣は2010年10月8日のアルゼンチン戦および同12日の韓国戦でした。その際のメンバーは以下のとおりです。

<ザックJAPAN初陣のメンバー>

▼GK
川島永嗣
西川周作
権田修一

▼DF
田中マルクス闘莉王
駒野友一
栗原勇蔵
伊野波雅彦
長友佑都
槙野智章
内田篤人

▼MF
遠藤保仁
中村憲剛
阿部勇樹
今野泰幸
長谷部誠
本田拓也
細貝萌

▼FW
松井大輔
前田遼一
関口訓充
岡崎慎司
本田圭佑
森本貴幸
金崎夢生
香川真司

 まず「ミスター第一印象」は、いわゆる「過去のリスト」に載っている人は対象外です。前任者がワールドカップメンバーに選出していたなら、第一印象云々は無関係。前任者がまったくスルーしたか、最終的に「ないな」と判断したか。いずれにしても、ワールドカップメンバーは除くのが適切でしょう。

 また、「海外組」も外したほうがいいでしょう。自分が行くか、相手を呼ぶかしないとプレーをちゃんと見られないわけですから。まずは敬意を払い、挨拶くらいしておいても損はないでしょう。

 そして「ミスター第一印象」は、その後呼ばれることがないというのがポイント。2回も3回も呼ばれるなら、それは実力と言うべき。ミスターはあくまでも「第一印象」が唯一最大の武器なのです。すごいイイ感じの第一印象からスタートし、1回面通ししただけで永久に袂を分かつ。それでこそ「ミスター」の称号を与えるにふさわしい。

 ザッケローニ氏の初陣メンバーにおいて、GKは3人とも2014年までザッケローニ氏に重用される顔ぶれ。DF陣は2010年ワールドカップメンバーおよび、その後も継続して呼ばれている面々。MFも同じです。唯一、本田拓也さんは「おや?」と思いますが、拓さんは栄光のアジアカップ2011優勝メンバー。僕も「拓さんがいると本田圭って一文字多く書く必要が出てきて面倒臭いです」と思ったことを、よく覚えています。

 そして、FW陣。松井大輔さんは2010ワールドカップメンバー。森本貴幸さんも2010ワールドカップメンバー。前田遼一さんは最終予選を共に戦ったザックJAPAN主要メンバー。関口訓充さんはあまり印象に残っていませんが、2011年のペルー戦・チェコ戦にも出場しているのですから「ミスター」とは程遠い。香川真司・岡崎慎司・本田圭佑の3選手は言うまでもないザックJAPAN不動の三銃士。

 そして残った金崎夢生さん。

 もうおわかりですね。

 そうです、金崎さんこそが栄光のザックJAPAN「ミスター第一印象」。

 金崎さんは岡田監督時代にも数試合の招集がありましたが、ワールドカップを前に代表メンバーからは外れていた復帰組。ザッケローニ監督が「世代交代を意識した」と語った新生ザックJAPANの初陣に打たれた、未来への一手でした。金崎さんは10月12日の韓国戦において0-0で迎えた後半33分から出場し、本田圭佑さんとの連携などで韓国ゴールに迫る奮闘を見せました。そして、その試合を最後にザックJAPANと袂を分かったのです。

 香川真司さんと同じ1989年の生まれのロンドン五輪世代。のちにドイツ・ポルトガルでの海外経験も積む若き才能。ザッケローニ監督は初陣メンバー発表の直前、9月18日に金崎さんの所属する名古屋グランパスの試合を視察していました。その試合で金崎さんは後半3分、右足のボレーシュートを決めたのです。名刺代わり、いや名刺そのものの一発。

 この一発の印象でザックJAPAN入りをはたし、そしてわずか1試合の出場で「思ってたんと違うな」となった。合宿中に何があったのか。あるいは試合で何があったのか。それが表に出ることはありませんが、おそらく何かがあったのでしょう。ザッケローニ氏が感じた素晴らしい第一印象を、スコーンと引っくり返し、4年間再度引っくり返ることを許さなかった「第二印象」が。

 今回のアギーレJAPANにも、そういうメンバーがいるかもしれません。アギーレ監督がメンバー発表までに視察した16日の浦和-広島戦、20日の天皇杯・FC東京-松本山雅戦、そして23日のFC東京-浦和戦。この辺で強烈な第一印象を残し、ミスターに名乗りをあげた選手が…!

<アギーレJAPAN初陣のメンバーと「ミスター第一印象」争いの展望>

▼GK
川島永嗣(スタンダール・リエージュ)←候補じゃない
西川周作(浦和)←候補じゃない
林彰洋(鳥栖)←試合に出るか出ないかそもそも微妙なので判断できない

▼DF
水本裕貴(広島)←オシム氏・岡田氏・ザッケローニ氏・アギーレ氏といろんな監督に1回は呼ばれ、2~3回くらいで去ってきた歴戦のミスター候補
長友佑都(インテル)←候補じゃない
森重真人(FC東京)←候補じゃない
吉田麻也(ウサンプトン)←候補じゃない
酒井宏樹(ハノーファー)←候補じゃない
坂井達弥(鳥栖)←そもそもアギーレ監督が第一印象を受けるのがこれからなんじゃないかという、そこはかとない疑問を抱かせる「ミスター無印象」
酒井高徳(シュツットガルト) ←候補じゃない
松原健(新潟)←「新潟まで行くのが面倒だから手元に呼んだ」んじゃないかという、そこはかとない疑念を抱かせる疑似海外組

▼MF
長谷部誠(フランクフルト) ←候補じゃない
細貝萌(ヘルタ・ベルリン)←海外組
田中順也(スポルティング・リスボン)←海外組
森岡亮太(神戸)←「神戸まで行くのが面倒だから手元に呼んだ」んじゃないかという、そこはかとない疑念を抱かせる疑似海外組
扇原貴宏(C大阪)←「大阪まで行くのが面倒だから手元に呼んだ」んじゃないかという、そこはかとない疑念を抱かせる疑似海外組
柴崎岳(鹿島)←「関東地方のはずなのに何故か鹿島まで行くのは面倒だから手元に呼んだ」んじゃないかという、そこはかとない疑念を抱かせる疑似海外組

▼FW
岡崎慎司(マインツ)←候補じゃない
本田圭佑(ミラン)←候補じゃない
柿谷曜一朗(バーゼル)←候補じゃない
大迫勇也(ケルン)←候補じゃない
皆川佑介(広島)←アギーレ氏がその目でプレーを見た有力なミスター候補
武藤嘉紀(FC東京)←アギーレ氏がその目でプレーを見た有力なミスター候補

 16日の浦和-広島戦で試合途中から出場し、名刺を叩きつけた皆川佑介さんか。それとも23日のFC東京-浦和戦で2得点を挙げた名刺乱舞・武藤嘉紀さんか。いかにも「ミスター」っぽい出会いを果たした選手だけでなく、鳥栖の坂井達弥さんのように世間も驚くサプライズメンバーもいます。

 今回はかなり第一印象重視な予感がします。ていうか、二度も三度も印象を受けるほど見てもいないし、そもそもそんなに試合数もこなしていないメンバーも含んでいるのです。皆川さんなんかJリーグ出場全試合を見ても、メンバー発表前には最大で第七印象までしか受けられないわけですしね。

 こうした選手がどんなアギーレ監督にどんな第二印象を残すのか。初陣はそこに注目してみてはいかがでしょうか。指揮官の「呼んだのに使わない」という露骨な起用法や、試合中に垣間見えるイラッの顔、練習中にクビを捻る姿、記者会見での名指しの苦言など、「ミスター」の予感漂う瞬間に。

 そしてアジアカップぐらいの時期に、ある程度まとまってきた代表メンバーを見ながら、栄光の「ミスター第一印象」を認定するのです。「●●は落選」などと特に新聞に書かれることもなく、世間も特に反応するわけでもなく、まるで最初からいなかったかのようにリストから漏れる「ミスター」を、もう一度心のひのき舞台に上げてあげましょう。

 そして、再評価するのです。

「外れたことよりも、一回入ったことを褒めるべき」
「鮮烈なファーストインプレッション」
「一瞬の輝き」
「細く高いピーク」
「一目惚れからの成田離婚」
「試食が美味しかったので買ってみたら普通だった」
「それでも彼のキャリアから永遠に代表歴は消えない」
「燦然と輝くキャップ数1」
「広い意味での2018ワールドカップ代表候補」
「誰にでもチャンスがあるという実例」
「競争意識の象徴」
「ゼロからスタートしてゼロでゴール」
「名もなき日本代表」
「5年後くらいに呼ばれたときに逆に初招集じゃないことに驚くパターン」
「不祥事のときだけ思い出したように元・日本代表呼ばわり」
……などのフレーズで。

 彼らのことをときどき振り返り、4年後くらいに蒸し返す。忘れてしまいそうになるのをグッとこらえ、みんなが忘れた頃にクイズ形式で持ち出してみる。漬物でも漬ける感じで、初陣の記憶を胸に漬け込むことができたら、この試合だけの特別な喜びを感じられるのではないでしょうか。

「ミスター第一印象」候補のみなさん、貴重な自分のネーム入り代表ユニフォームは気安く誰かと交換したりせず、ご自宅にお持ち帰りくださいね。あとで自分でサッカーショップ加茂に行って、自分で自分のネーム入れを依頼するのは、めっちゃ恥ずかしいと思いますから…。

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