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ミランでの2年目に挑む本田圭佑…現状を打破して救世主となれるか

2014.08.19

救世主となるか、放出候補となるか。すべては本田次第

[ワールドサッカーキング1409号掲載]

失意のワールドカップから1カ月半、本田は2年目のミランで新たな戦いに身を投じている。新指揮官の下でのレギュラー争い、生き残るための選択肢は既に2つに絞られている。

文=小川光生 Text by Mitsuo OGAWA
写真=アフロ Photo by AFLO

メネズが負傷離脱…アピールの絶好機到来

 7月10日の就任会見でミランのフィリッポ・インザーギ新監督は「まだプレーをよく見たわけではないが……」と前置きした上で、新シーズンの本田圭佑の起用法について次のように“示唆”した。

「3トップの一角としてプレーさせるなら右サイドだろう。中盤でもプレーできる選手だと思う」

 インザーギが採用する基本システムは4-3-3。新指揮官はまずは3トップの右サイドで本田を起用するつもりだという。事実、7月末から始まったアメリカ遠征では、このポジションで再三本田を試している。

 ただし、現段階では開幕からレギュラーが保障されているわけではない。ミランはパリ・サンジェルマンと契約切れになったフランス人のジェレミ・メネズを獲得。今シーズンの本田の最大のライバルと目される選手だ。キープ力やフィジカルの強さでは本田に分があるが、スピードとドリブル力ではメネズに軍配が上がる。2008年から3年間、ローマに在籍していたことがあり、セリエAの環境にも適応済み。本田はまず、このメネズとのポジション争いに勝たなければならない。

 前線でのポジション確保に向けてはプラス材料もある。チームの精神的支柱だったカカーがMLSのオーランド・シティに移籍(年内はレンタルで古巣サンパウロでプレー)、同じく技巧派のアデル・ターラブトもQPRとの完全移籍交渉がまとまらず、プレミアリーグへと帰還した。クラブのシンボル的存在だったカカーは、コンディションの善し悪しに関係なくピッチに立つことが多く、必然的に前線のポジションが一つ埋まることを覚悟せねばならなかった。そういう意味では、カカーの移籍は本田にとって“朗報”と言える。今のところ現地メディアの予想は、レギュラーがメネズ、本田は控えという認識。ただ、メネズには故障が多いという欠点があり、事実、移籍後すぐに筋肉系のケガで戦列を離れている。本田にもアピールのチャンスは十分にあるだろう。

中盤起用の可能性…限られた出番で結果を

 もっとも、アドリアーノ・ガッリアーニCEOは、夏の移籍市場閉幕までに新たなアタッカーを獲得する可能性を示唆。その新戦力の実力次第では本田が前線のポジション争いから弾き出されることも考えられる。もし、右ウイングがダメだった場合、本田が生き残るための道は、指揮官の“示唆”にもあった中盤となる。レジスタのリッカルド・モントリーヴォがワールドカップ直前の親善試合で左足を骨折し、復帰は早くても年末の見込み。中盤に手薄感があるのは事実だ。

 現時点でインザーギはトップ下タイプのリッカルド・サポナーラの中盤起用を考えているようだ。だが、中盤の機能不全、あるいは更にケガ人が出るようなら、本田の中盤起用(恐らく左のインサイドハーフ)も有力な選択肢になる。本人がそれを受け入れるか否かという問題はあるが、今の彼にポジションを選んでいる余裕はない。このチームで生き残るためには、手段を選んではいられないのだ。

 新シーズン序盤の本田に求められるのは、もしかすると“ジョーカー役”なのかもしれない。前線と中盤の両方で不調の選手、あるいはケガ人の穴を補う役どころだ。レギュラーは確約されていないが、今の本田は「何か」が起きれば、すぐにチャンスを与えられる位置にはいる。

 昨シーズンまでユースチームを率いていたインザーギのモットーは「若手の重用と育成」。将来を見据え、前線ではエムバイェ・ニアン、中盤ならブライアン・クリスタンテやマリオ・ピッチノッキといった若手を積極的に起用していくだろう。また、今シーズンのミランには欧州カップ戦の出場権がなく、ローテーションを採用する必要性がない。シーズン序盤にポジションを取り逃がすと、そのまま1年を棒に振る危険性も十分にあるのだ。

 現状を打破して悩めるチームの救世主となれるか、それとも結果を残せず放出候補に名を連ねることになるのか。すべては本田次第だ。

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