2014.03.04

【W杯開幕100日前】日本代表・運命の3戦を20人の論客が占う

サムライサッカーキング 2014年2月号掲載

賽は投げられた。コートジボワール、ギリシャ、コロンビア。難敵相手に日本は勝ち抜けるのか。サッカー界きっての有識者20名が運命の3戦を占う。

20人の論客が激突!

飯尾篤史「日本にとってギリシャは“最弱”ではない」
小澤一郎「ポゼッションとモビリティを貫ければ勝機あり」
粕谷秀樹「グループリーグ突破は極めて難しいミッション」
加部 究「個の総和がチーム力になるわけではない」
河治良幸「自分たちのスタイルを押し出すだけでは×」
川端暁彦「得失点での争いに持ち込まれる可能性大」
川本梅花「“3つの問題”をクリアできればベスト8も」
北健一郎「『攻撃的に戦った結果』グループリーグ突破を!」
後藤健生「暑さを味方にできれば突破の可能性は高まる」
清水英斗「現状のままでは厳しい“最後のピース”が必要」
杉山茂樹「得失点での争いに持ち込まれる可能性大」
戸塚 啓「一体感を高める役割を担うのは誰か」
中林良輔「23人でどう戦うのか日本の総力戦に期待」
永野智久「1失点は“不可避”“1点以上”を奪えるか」
西川結城「日本の突きどころは長短所の裏表にあり」
西部謙司「対戦順は良い初戦がすべて」
二宮寿朗「コートジボワール戦で“奇策”の検討を」
細江克弥「日本は“ベスト8相当”の力を持っている」
六川 亨「1失点は覚悟の上で攻撃陣の爆発がカギ」
吉崎エイジーニョ「新米サッカーファンに“本質”を伝えよう」

<投票>ブラジルW杯、日本代表のグループリーグの成績は?

飯尾篤史(サッカージャーナリスト)
『サッカーダイジェスト』で日本代表、FC東京、川崎F、G大阪、仙台などの担当を歴任。12年からフリーに。構成として『城福浩 プロフェッショナルの思考法』(カンゼン)、共著に『本田と香川の正しい使い方』(ベースボール・マガジン社)。

グループリーグ勝敗展望
コートジボワール戦 ○
ギリシャ戦△
コロンビア戦△

グループリーグ突破可否 ○

日本にとってギリシャは“最弱”ではない

 日本にとって決勝トーナメント進出の可能性が過去最も高い大会―。そう言ってもいいだろう。かの有名な英国のブックメーカー『ウィリアムヒル』も、グループCにおける決勝トーナメント進出チームの予想に、次のようなオッズを付けている。コロンビア1.22、コートジボワール2.00、日本2.25、ギリシャ2.87。

 ここまでオッズが接近しているグループは他にない。これの意味するところは、16強への道は全チームに等しく開かれていて、どこが突破してもおかしくないということだ。ウルグアイ、イタリア、イングランドとW杯優勝国が3チームも同居するグループDが「死の組」と言われているが、最激戦区は間違いなくグループCだ。

 オッズも示しているように、実力はコロンビアが頭ひとつ抜け出している。では、ギリシャが最弱かと言えば、少なくとも日本にとってはそうではない。守備が堅く、カウンターを繰り出し、セットプレーに強いギリシャは日本が最も苦手とするタイプ。逆にコートジボワールのほうが守備組織に粗さが目立ち、付け入る隙がありそうだ。ブラックアフリカンのチームは大会への準備が甘く、内輪で揉める傾向もある。日本にとって勝ち点3を最も狙えるのが初戦であって、また、絶対に取らなければならないとも言える。 理想は2戦を終えて勝ち点4。ただし、その時点でコロンビアが勝ち点6を確保しているのが望ましい。コロンビアが勝ち点を失うようだと、第3戦が日本にとってもコロンビアにとっても“決勝戦”になってしまう。そのシチュエーションは避けたいところだ。

 ラウンド16の相手として戦いにくいのはウルグアイ、戦いやすいのはイングランド。とはいえ、チーム力で劣るイングランドが首位通過するのは考えにくい。となれば、同じ南米で地の利のあるウルグアイより、イタリアと顔を合わせたほうがまだ勝機は見出せる。指揮官の母国で、エースがプレーする国とベスト16で激突して勝利をもぎ取る―。集大成として、これ以上ふさわしい舞台はない。

 

小澤一郎(サッカージャーナリスト)
スペイン在住5年の経験を生かし、翻訳や訳本の監修も務める。主な著書に『サッカー日本代表の育て方』(朝日新聞出版)、『スペインサッカーの神髄』(ガイドワークス)。13年11月に『レアルマドリード モウリーニョの戦術分析』を刊行。

グループリーグ勝敗展望
コートジボワール戦 ○
ギリシャ戦 ○
コロンビア戦 ●

グループリーグ突破可否 ○

ポゼッションとモビリティを貫ければ勝機あり

 選手個々の能力は高いがチームや協会という組織力、対戦相手のスカウティング力は低いコートジボワールは前回大会のカメルーン同様、ある程度の慢心を持って日本戦に臨んでくれるはず。ギリシャはプレーオフも含めて欧州予選12試合で9勝2分け1敗とソリッドなチームではあるが、ポゼッションとモビリティが融合した直近の日本代表のサッカーを貫くことができれば勝利の確率は50%を超えると見る。連勝発進で勝ち点6を奪うことができれば第3戦のコロンビア戦は主力を休ませるターンオーバーで「引き分けOK」のゲームプランを持つ余裕ができる。組み合わせ抽選会後に日本国内に漂った楽観ムードはご法度だが、一方で日本の実力を過小評価する必要もないし、現時点ではザッケローニ監督も選手も対戦相手の良さを消すようなサッカーよりも日本の良さを出すサッカー、戦術を打ち出す方向性を共有している。

 最終的な成績予想はベスト8。日本にとって鬼門となるラウンド16で当たるグループDの突破国は、識者から「死の組」なる評価を受ける強豪国揃いのグループだが、ウルグアイとの対戦を回避できれば勝機あり。というのも、近年のサッカーや戦術の進化によって欧州の国はどこも攻守のオーガナイズが特徴としてはっきり出ており、スカウティングも対策も練りやすい。逆に局面でセオリーや戦術無視で個による打開を図ってくる南米(アフリカ)のチームと対戦する方が日本のようなチームにとってはやっかいだ。

 日本のキーマンは本田圭佑で、攻撃面よりも守備面での貢献がカギを握ると見ている。高い位置からのプレスでボールを回収したい日本としては、彼がプレスの初動やポジショニングをサボるようなら積極的なプレスが後手を踏むリスクをはらむ。大迫勇也や山口螢を起用することである程度の穴埋めはできるが、チームや監督が本田にどの程度の要求を出すのか、彼自身がどの程度の献身性を守備で見せるのかをチェックしたい。

   

粕谷秀樹(サッカージャーナリスト)
『サッカーダイジェスト』編集部を経て『ワールドサッカーダイジェスト』編集長に就任。同誌を海外サッカー誌のトップブランドに育て上げた後、フリー転身。海外リーグ中継の解説、コメンテーターとしても活躍している。

グループリーグ勝敗展望
コートジボワール戦 ●
ギリシャ戦 △
コロンビア戦 ●

グループリーグ突破可否 ×

グループリーグ突破は極めて難しいミッション

 日本を始めとする東アジア勢にとって、対アフリカは“永遠のテーマ”である。緻密な戦略に基づいた高等戦術をもってしても、彼らのナチュラルなパワーに抗うことは難しい。強靭な体幹を誇る長友佑都、類稀なフィジカルバランスを有する本田圭佑であれば、コートジボワールの強烈なチェックに耐え得るだろうが、その他の選手たちはあっさりボールを奪われたり、転倒したりする危険度が高い。当然、日本はボールをキープする時間が短くなり、辛抱強く守る時間帯が長くなる。歓迎できない展開だ。

 コートジボワールに比べると、ギリシャは戦いやすい相手かもしれない。基本はカウンター。日本のポゼッションが高くなると考えられ、リズムはつかめるだろう。ヨーロッパ予選の組分けもラトヴィア、リトアニア、ボスニア・ヘルツェゴヴィナ、リヒテンシュタイン、スロヴァキアと相手に恵まれ、プレーオフの相手も斜陽のルーマニアだった。FIFAランク12位は全く、全くあてにならない。ただし、予選10試合のうち8試合を完封した守備力は侮れず、日本が決定力に一抹の不安がある現実を踏まえると、スコアレスドロー、あるいは0-1で敗れる危険も十分にあるはずだ。

 さて、コロンビアである。優勝候補とは言えないまでも、ダークホースの一角であることに疑いの余地はない。ラダメル・ファルカオ、テオフィロ・グティエレス、ジャクソン・マルティネス、ハメス・ロドリゲスを軸とする攻撃は、南米予選で堅守ウルグアイから4点を奪うほどの破壊力を秘め、ディフェンスラインにはミランのクリスティアン・サパタ、ナポリのフアン・カミーロ・スニガなど、セリエAで研鑽を積む実力者を擁している。選手個々の力で、日本をはるかに凌駕していることは明白だ。なおかつホセ・ペケルマン監督は柔軟性に富み、今回の予選もTPOに応じてフォーメーションを使い分けてきた。チーム全体の経験不足が不安視されているとはいえ、日本も歴戦の強者という部類に入るわけでもない。したがってグループC突破は、極めて難しいミッションである。

加部 究(サッカージャーナリスト)
『サッカーダイジェスト』、『サッカー批評』で10年以上連載を継続中。著書に『大和魂のモダンサッカー』(双葉社)、『忠成』(ゴマブックス)など。近著に「それでも“美談”になる高校サッカーの非常識』(カンゼン)。

グループリーグ勝敗展望
コートジボワール戦 △
ギリシャ戦 ○
コロンビア戦 △

グループリーグ突破可否 -

個の総和がチーム力になるわけではない

 グループリーグを勝ち抜く条件は、最初の2試合で勝ち点4以上と考えたほうがいい。現日本代表は、トップレベルのストライカーを擁す南米勢に分が悪く、まして追い込まれた状態でのコロンビア戦は厳しくなる。

 幸いコートジボワールやギリシャは必ずしも相性の悪いタイプではない。ひと昔前なら、コートジボワールのようにフィジカルに長けたブラックアフリカ系は苦手としていた。実際個々の水準を比較すれば、勝算を導くのは難しい。だが現実に個の総和が、必ずしもそのままチーム力にならないところに代表戦の面白さと難しさがある。規律に忠実で、戦術吸収力が高く、総体的に育成段階から似た志向を持つ日本は、代表チームとして集結するとプラスアルファを生み出す。逆にアフリカ勢の場合は、レベルの高い個を集めても、なかなか無駄なく組織力に昇華するのが難しい。日本が万全のコンディションを整え、凡ミスで失った得点を追いかける展開にならなければ、互角の勝負を挑めるはずだ。

 またギリシャ戦は、しっかりとポゼッションをしてゲームをコントロールすることも可能で、逆に90分間隙のない試合を進める必要がある。カギを握るのは、遠藤保仁と長谷部誠の使い分け。フィジカルな対応が求められる初戦は、可能な限り長谷部で引っ張りたい。一方ゲームを支配しながら勝ち切りたい2戦目は、遠藤の味付けで先行したい。対戦3カ国が、いずれも内紛のリスクを抱えていることも考慮すれば、日本のグループリーグ突破の可能性は5割強と見る。

 もっとも1位と2位で、どちらが吉と出るかは神のみぞ知るところ。セカンドステージの対戦相手は「死のグループD」の突破国になるので、どこが出て来ても難敵になるが、最も避けたいのはウルグアイだろう。もしイタリアかイングランドなら、多少なりともベスト8への希望が繋がる。ただしコンフェデ杯で一度食い下がってしまっているので、次も同じようなイタリアと戦える保証はない。

  

河治良幸(サッカージャーナリスト)
本大会は日本戦を始め決勝まで取材予定。「サムライ達の戦いを記者席から盛り上げたい」と語る。新著『サッカーの見方が180度変わるデータ進化論』(ソル・メディア)に続き2月に日本代表関連著書を刊行。

グループリーグ勝敗展望
コートジボワール戦 ○
ギリシャ戦 △
コロンビア戦 △

グループリーグ突破可否 ○

自分たちのスタイルを押し出すだけでは×

 戦力的には日本が確実に勝利を計算できるチームは一つもない。ただし、コートジボワールとギリシャは対策次第で五分以上に持っていける相手だ。個や組織の向上、コンディション、更には環境対策も重要だが、しっかり対戦相手の視察や研究を行って大会に臨めるかがグループリーグ突破のカギと見ている。

 ザッケローニ監督は「勇気とバランスを持ち、攻守に連動していく回転数の高いサッカー」を掲げるが、親善試合の様に自分たちのスタイルを押し出すだけでは本大会で勝ち点を積み重ねることはできない。前回の岡田ジャパンでは初戦の相手だったカメルーンの守備的な欠陥を見抜き決勝点に結び付けたが、今回も相手の長所と弱点はしっかり見極めて臨みたい。

 コートジボワールは身体能力に関しては32カ国の中でも1、2を争うが、アフリカ予選を見る限りはディテールにいくつか問題がある。彼らの攻撃力をしっかり封じることが前提になるが、素早いコンビプレーを生かせば流れの中で1点は取れる。

 香川真司と柿谷曜一朗がキーマンだ。ギリシャは現在の日本が最も苦手とする堅守速攻タイプだが、流れの中でポジションにズレが生じる場面もあり、両SBの長友佑都と内田篤人が交互に攻め上がり、中央とサイドの合間に一瞬生じるスペースを突ければ得点が狙える。ただ、ギリシャはセットプレーの得点力が非常に高く、90分での戦い方も手堅い。引き分けが妥当な予想だが、競り勝てれば大きい。

 コロンビアはタレント力が高い上に組織的で、状況に応じてポゼッションとカウンターを使い分ける。2試合の結果で突破のノルマは違ってくるが、勝負の生命線になるのは守備の集中力だ。吉田麻也の統率するディフェンスラインが、昨年8月のウルグアイ戦の様な隙を見せればラダメル・ファルカオに簡単に得点を許しかねない。中盤の守備もポイントで、ボランチで山口螢か細貝萌を起用する手も有効だろう。何とか守り切れても、コロンビアから得点することは非常に難しい。勝利をもたらすとすれば本田圭佑の直接FKか。

 

川端暁彦(サッカーライター)
02年からフリーライターとして活動を始め、育成年代を中心に取材を重ねる。04年、『エル・ゴラッソ』の創刊とともに記者・編集者として制作に携わり、10年から編集長に就任。13年からフリーとして専門誌やサッカーサイトに寄稿。

グループリーグ勝敗展望
コートジボワール戦 ○
ギリシャ戦 ○
コロンビア戦 ○

グループリーグ突破可否 ○

得失点での争いに持ち込まれる可能性大

 楽な組か厳しい組かと聞かれれば、「どっちでもない組」だろう。今回のポッド分けを思えば、移動面などを含めてもっと酷い組になる可能性もあった。まずは御の字。いろいろな意味で「W杯アベレージ」の組だと言える。

 ネームバリューが低めの国と同居したことについて、「W杯に出てくる国に弱い国などない」という主張を聞いたが、全くもってそのとおり。

 そしてその言葉は、日本についても当てはまる。日本代表は、弱くない。

 相性面でも欧州勢が総じて日本人アタッカーを苦手とするのは確かで、ギリシャに対して攻撃面で劣位になるとは思えない。05年のコンフェデ杯(1-0で勝利)の再現は狙える。

 その意味で、山場は初戦のコートジボワールだろう。ここを落とすようだと、ギリシャ戦もメンタル面で苦しくなる。日本代表のアフリカ勢との公式戦での対戦成績はかなり優位にあるが、コートジボワールはそのアフリカ勢の中でも恐らく実力No.1。ただ、実際に映像も見てみたが、「勝てる可能性よりも負ける可能性のほうが大きい」と、やる前から畏怖してしまうほどの差があるとも思えなかった。ここからの準備、特にコンディショニングで差を付ければ、五分以上の戦いはできる。

 そして最後のコロンビア戦。これは厳しい。南米勢とは相性も最悪だ。おまけに今回は彼らに南米開催という利もある。できれば2勝同士での激突となり、お互いにメンバーを落としているという展開が理想ではある。消化試合で頑張るメンタリティーは日本の控え組が上だろうから、そうなれば十分に勝機はあるはず。

 できれば1位抜けしてラウンド16でイタリア(グループDの2位抜け予想)と当たれれば、美しい戦いが見られそうだが……。

 キーマンは良くも悪くも本田圭佑。組織のパーツとしても、個人のプレーとしても、そして心理面でも「彼次第」の部分は大きい。

川本梅花(サッカーライター)
『サッカー批評』で柏レイソルの田中順也のノンフィクションを連載中。著書に『サッカープロフェッショナル超分析術』(カンゼン)、『俺にはサッカーがある 不屈のフットボーラー16人』(出版芸術社)などがある。

グループリーグ勝敗展望
コートジボワール戦 ○
ギリシャ戦 ○
コロンビア戦 ○/△

グループリーグ突破可否 ○

“3つの問題”をクリアできればベスト8も

 日本は、3勝あるいは2勝1分けでグループを突破して、ベスト8に入れるだろう。キーマンとなる選手は香川真司。

 以上の予想は、次の3つの問題がクリアされなければなし得ない。[1]コンディションの問題(移動や暑さ対策)[2]選手選考の問題[3]戦術の問題。今の問題は、[2]と[3]であり、両方とも先の欧州遠征(対オランダ、対ベルギー)で明らかになったことである。

 [2]に関しては、GK、CB、CH、FWの選択は再考が必要だ。これは私見だが、GKのポジションでは川島永嗣よりも西川周作。CBでは吉田麻也と今野泰幸よりも森重真人。CHは長谷部誠よりも山口螢。FWは柿谷曜一朗のファーストチョイスで本当にいいのか。過去に呼ばれていない選手にも機会を与えるべき。

 [3]については、オランダ戦の前半と後半(ベルギー戦はオランダの後半と同じやり方だった)では、日本は2つの違ったサッカーをやっていた。前半は、ピッチの左右の横幅を広く使うことで相手の中央の選手を薄くして縦へのパスを利用するやり方。一方で、後半の日本は、短いダイレクトパスを使って中央突破を狙うやり方。はっきり言えば、前半はザッケローニ監督がやりたいサッカーで、後半は選手たちがやりたいサッカーだったのだろう。それほどまでに、前後半では違ったサッカーをしていた。ここで監督は、どちらのサッカーをやるのかをはっきりさせるべきだ。後者のやり方を極めていけばベスト8も夢ではない。

 グループCの中で一番強い相手は間違いなくコロンビアだ。守備力については、W杯南米予選での対チリ戦で前半3点を奪われた守備力と日本の攻撃力を照らし合わせれば、恐れを抱くことはない。ギリシャは引いて守って素早くカウンターを仕掛けるチームだ。攻守の総合力で最も劣るのがコートジボワールだろう。攻撃では警戒が必要だが、相手にボールを持たれた時の守備力はそれほど強くない。

 日本はもはや、相手選手の名前に脅威を覚えるという時代にさよならを告げている。

 

北 健一郎(スポーツライター)
『ストライカーDX』編集部を経て09年よりフリーに。現在はサッカーとフットサルを中心に取材・執筆活動中。近著に『サッカーはミスが9割』、『増補改訂版 なぜボランチはムダなパスを出すのか?』(ともにガイドワークス)。

グループリーグ勝敗展望
コートジボワール戦 ○
ギリシャ戦 △
コロンビア戦 △

グループリーグ突破可否 ○

「攻撃的に戦った結果」グループリーグ突破を!

 各チームの実力が拮抗しているだけに、1勝2分けの勝ち点5でも突破できる可能性があると見る。最も大事なのは前回大会同様に初戦だ。コートジボワールは個の力はグループ内でもナンバーワン。4-3-3のシステムで中央から両ワイドに振って突破を仕掛けてくるスタイルなので、日本の両SB(長友佑都、内田篤人)の働きが必要不可欠になる。守備に力を注ぐ分、攻め上がる回数は制限されるかもしれないが、まずは目の前のウイングをしっかりと抑えてもらいたい。1トップの“ディディエ・ドログバ対策”としては、日本のCBとの力関係上、ボールが入ったらアウトなので前線や中盤のプレッシャーが肝になる。

 第2戦のギリシャは日本にとって最もやりづらい相手かもしれない。組織的にブロックを作って守ってくるため、セルビア戦やベラルーシ戦と同じような「ボールを回しているんだけど崩せない」展開に陥る可能性がある。もちろん、積極的に仕掛けることも必要だが、カウンターを食らっては元も子もない。それならば、ファイティングポーズをとったフリをしながら90分をやり過ごし、引き分けを狙うのも手だろう。

 コロンビア戦は引いて守っても、相手にはラダメル・ファルカオというスーパーな点取り屋がいる。それならば、少々リスクを背負ったとしても高い位置からボールを奪いに行って、ゴールを狙ったほうが結果的にリスクは小さい。コロンビアと真正面から戦って点の取り合いを演じたとなれば、世界に大きなインパクトを与えられるはず。

 個人的には今回のW杯では「攻撃的に戦った結果」としてグループリーグ突破を果たしてほしい。それができれば、例え前回と同じベスト16だったとしても日本のサッカーは進歩したと言える。 最後にキーマンとしては「GK」を挙げたい。前回大会では楢﨑正剛に変えて川島永嗣を大会直前にスタメン起用したが、短期決戦を乗り切るのにはGKが“当たっている”ことは必須条件だ。川島か、西川周作か、どちらがゴールマウスを守ることになるのか注目したい。

 

後藤健生(サッカージャーナリスト)
64年の東京五輪以来、サッカー生観戦及び取材活動を続け、13年、その数ついに5100試合に到達した。昨年12月に『国立競技場の100年―明治神宮外苑から見る日本の近代スポーツ』(ミネルヴァ書房)を出版。

グループリーグ勝敗展望
コートジボワール戦 ○
ギリシャ戦 ○
コロンビア戦 △

グループリーグ突破可否 ○

暑さを味方にできれば突破の可能性は高まる

 グループCに入った4チームとも、優勝を狙えるほどの実力はないが、ベスト8に入ってもおかしくはない実力は持っている。全くオープンな、予想の難しいグループである。トップ通過の可能性もあるが、同時に最下位の危険もある。

 13年11月のオランダ戦、ベルギー戦でも見られたように、敏捷性の高い日本選手の動き、短いパスをつなぐ攻撃は大柄なDFに対してはかなり有効だ。例えば、ギリシャは守備の強いチームだが、まさにその屈強で大柄なDFが揃っている。コロンビアも伝統的に守備の強い国だが、20年前のエスコバル、ペレア時代のようなアジリティーの高いDFはいない。

 つまり、日本の攻撃力をもってすれば、3試合ともゴールは奪える。一方、ジェルヴィーニョ、ディディエ・ドログバ、ラダメル・ファルカオを日本の守備陣が完封できるとは思えない。ギリシャのセットプレーも高さのない日本にとっては脅威となる 3試合ともスコアレスドローはない。点の取り合いになるのではないか。

 アフリカのチームは事前準備不足のままブラジルに乗り込んでくるはずだけに、初戦にコートジボワールというのは悪くない。また、日本は3戦とも蒸し暑い中での試合となるが、暑さは基本的には日本の味方だ。アフリカの選手は暑さを苦にしないだけに、暑さ対策を怠り、試合中にもしっかり給水をしないため、最後に足が止まることが多い。ギリシャの夏も暑いが、ヨーロッパでは夏はシーズンオフだ。

 日本のサッカーは走ることが生命線。暑さを本当に味方にできるかどうか。それは、コンディショニングに懸かっている。暑い中で相手より走れるコンディションを作れれば、グループリーグ突破の可能性は高まる。

 走る選手を生かすためにも、特に本田圭佑のコンディションがカギとなろう。


清水英斗(サッカーライター)
プレーヤー目線での戦術解説、観戦指南に定評ある気鋭のライター。近著に『居酒屋サッカー論』(池田書店)、『サッカー好きほど知らない戦術の常識』(カンゼン)、『3 時間でサッカーの目利きになる』(ベスト新書)。

グループリーグ勝敗展望
コートジボワール戦 ●
ギリシャ戦 ○
コロンビア戦 △

グループリーグ突破可否 ×

現状のままでは厳しい“最後のピース”が必要

 この予想はギリシャから勝ち点3を奪うことが前提となる。ギリシャは堅守速攻をベースとし、どんな強豪国をも困らせる難しい相手だが、高温多湿のナタルではコンディショニングに苦しむことが予想される。1戦目を快適なベロオリゾンテでプレーした後、移動してきたナタルでの日本戦でどこまで力を発揮するのか。この流れはコンフェデ杯のイタリアにも似ている。日本にとっては朗報、勝つべき相手だ。

 恐らくギリシャ戦でカギを握るのは酒井宏樹。ブンデスリーガで高い空中戦の勝率を誇る長身の右SBは、セットプレーなどの空中戦に対する武器となる。ビルドアップには難を抱えるが、相手が堅守速攻チームであることを考えれば、そのデメリットはある程度は隠され、逆にベルギー戦で見せたようにオーバーラップからの鋭いクロスが試合を決める可能性を秘める。ザッケローニ監督は、この試合では内田篤人に代えて酒井宏を起用すると筆者は読む。

 しかし、ギリシャからの勝ち点を計算に入れてもなお、日本代表が突破を果たすのは難しい。日本がオランダ戦、ベルギー戦で示したもの。それは、強豪国にリードを許した状況からでも、引き分けに追い付き、逆転するエネルギーを備えたチームであることだ。これは本大会でも大きな自信になる。しかしその一方、リードした状況の戦い方はどうか。ベルギー戦で3-1の状況から押し込まれ、3-2に迫られた、1点。その1点が、本命不在のグループCでは最終的に得失点差において明暗を分ける。その意味では、現状のままでは厳しい。

 最後のピースは、遠藤保仁と西川周作だろう。オランダ戦、ベルギー戦で試した“スーパーサブ遠藤”作戦は、リズムを変えて攻撃に転じることも、あるいはボールキープから相手のパワープレーを許さず、試合をシメることも可能。更にGKにビルドアップに優れた西川を起用することで、フィジカルとテクニックに優れたコートジボワールやコロンビアをポゼッション率で上回れば、より競った試合になるのではないか。

 

杉山茂樹(スポーツライター)
大学卒業後、フリーのスポーツライターとしての取材活動をスタート。W杯は82年のスペイン大会以降8大会連続、五輪は夏冬合わせて9大会の現地取材を経験。独自の視点でサッカー界に話題を提供し続ける“サッカー番長”。

グループリーグ勝敗展望
コートジボワール戦 △
ギリシャ戦 △
コロンビア戦 ●

グループリーグ突破可否 ×

得失点での争いに持ち込まれる可能性大

 第3戦で対戦するコロンビアは相当強い。優勝候補と言ってもいい。サッカーは40対60の関係なら逆転可能だが、それ以上になると、よほどの運が必要になる。○●△の三択では●が妥当。大敗する可能性もある。コートジボワールも格上。45対55の関係にある。なので予想は△が妥当。ギリシャは思いのほか強い。崩れにくいチーム。トーナメントでは威力を発揮する弱者の気質も備えている。コートジボワールより勝ちにくい相手。△が妥当。

 ラウンド16進出の可能性は40%。コロンビアを80%とすれば、残る120%を3チームで割れば40%になる。つまりこの組の2位争いは激戦。コロンビア3勝。他の3チームが1敗2分け(勝ち点2)で並ぶ可能性さえある。得失点での争いに持ち込まれる可能性大と見る。日本が期待したいのはコートジボワールの自滅。前回のカメルーンのような、間の悪いサッカーをしてくれれば。逆にギリシャにはそれが期待できない。100の力を100発揮するチーム。日本は初戦の勝利を目指したい。避けたいのはコロンビア戦の大敗だ。それまでにコロンビアが2勝して、1位抜けを決めていれば、対戦順で日本優位になる。

 決勝トーナメント1回戦の相手はウルグアイかイタリア。「過去3年で対戦したチームとはやりたくない」とザック監督は述べたそうだが、そうした意味ではいずれもやりたくない相手であるはず。彼らは日本をよく知っている。弱者(日本)に対して警戒心を持って臨んでくる強者(ウルグアイ、イタリア)が、番狂わせを許す可能性は低い。イタリアに勝つ可能性は20~30%。ウルグアイに勝つ可能性は10%。日本が望むのはイタリアとの対戦になる。過去3年対戦がなく、俊敏性な相手が苦手そうなイングランドが対戦相手なら、勝利の可能性は40%近くに跳ね上がるのだが。

 結論。ベスト16の可能性40%。ベスト8の可能性10%。心配なのは、前回南アW杯で「運」を思い切り使っている点。天の配剤によれば、今回は運は期待できない。実力が問われる大会になる。

 

戸塚 啓(スポーツライター)
『サッカーダイジェスト』編集部で編集記者を経て98年からフリー。00年以降、11年の北朝鮮戦(アウェー)以外、日本代表戦はすべて現地取材を続けている。近著に『不動の絆~ベガルタ仙台と手倉森監督の思い』(角川書店)。

グループリーグ勝敗展望
コートジボワール戦 △
ギリシャ戦 ○
コロンビア戦 △

グループリーグ突破可否 -

■一体感を高める役割を担うのは誰か

 1勝2分けとした勝敗展望についてですが、現時点では率直に言って明確な理由はありません。どこかの国にケガ人が出たりしたら、状況はかなり変わってくると思いますので。

 このグループは非常にフラットな組み合わせで、どの国にもベスト16入りのチャンスがあり、どの国にもグループリーグ敗退の可能性があると思います。勝敗予想については、ひとまず「こうなったらいいな」という願望でしかありません。近年のW杯において、最も実績を挙げているのが日本という事実は、ザックのチームが持つアドバンテージですが。

 その上でキーマンを挙げるとしたら、チームの一体感を高める役割を誰が担うのか。より具体的には、02年大会の中山雅史と秋田豊、10年大会の川口能活、楢﨑正剛、中村俊輔ら、控え選手の立場でチームを盛り上げる経験豊富な選手の存在意義を、ザックは認識しているのか、ということです。

 11年のアジアカップで、ザックは森脇良太と権田修一の献身さを大会後に評価しましたが、W杯でも同じような存在は必要だと考えます。ただ、苦しい時にチームをまとめ上げるという意味では、誰もが一目置くような実績なり経験を積んできた選手が望ましい。

 候補者は……いますけれど、このところザックは招集していませんね。


中林良輔(サッカー書籍編集者)
東邦出版編集長。自身が編集を担当した書籍『フットボールの犬』が第20回ミズノスポーツライター賞の最優秀賞を受賞。1年に10冊ペースで、過去に100冊近いサッカー関連書籍を世に送り出している。

グループリーグ勝敗展望
コートジボワール戦 ○
ギリシャ戦 △
コロンビア戦 △

グループリーグ突破可否 ○

23人でどう戦うのか、日本の総力戦に期待

 日本にとって最悪ではないものの、なかなか厳しいグループに入ったなあという印象です。

 コロンビアとコートジボワールは、日本と似たクリエイティブなサッカーをするチームでありながら全体的に質がワンランク上で、ギリシャは、高さも強さもあってゴール前をしっかり守れる、日本にとって苦手意識の強いタイプのチームという印象。

 一方で日本の最大の武器」は、5大会連続5回目の出場というW杯における経験値の高さではないでしょうか。コロンビアは日本同様5回目の出場ながら4大会ぶり。コートジボワールとギリシャはともに連続出場中ながら出場回数は3大会です。

 そのため日本は、前回大会の経験を生かし、組織的に穴があり、試合によって波もある初戦のアフリカ勢の攻略を徹底的に練りに練り、第1戦にベストコンディションを整え、コートジボワールに競り勝つことこそがグループリーグ突破のカギになるのではないでしょうか。ここでの1勝が実現できれば、グループ1位抜けも見えてくると思います。

 ラウンド16の相手はウルグアイは避けたい、イタリアとイングランドもできれば避けたい(笑)。ベスト8以上の躍進は、02年大会の稲本潤一、10年の本田圭佑を超える活躍を見せてくれる新星の出現がなければ難しいのではないかと思います。大会期間中にブレークするフレッシュな選手の出現を温かく見守りたいです。

 また個人的にキーマンだと注目している選手は“控え選手としての”遠藤保仁です。ここ最近の試合で見られた、後半から登場してガラッと試合の流れを変える遠藤の存在に注目しています。同じくイタリアも最近の試合でアンドレア・ピルロの途中投入を機に流れが変わるという展開を見せましたが、こういった世界的にも希有な一人でリズムを作り出せるベテラン選手を日本はうまく生かすべきだと思います。先発の11人が最高のメンバーというわけではなく、90分を14人でどう戦うのか、大会を通して23人でどう戦うのかという日本の総力戦に期待したいです。


永野智久(慶應義塾大学総合政策学部専任講師)
専門はスポーツ心理学、人間工学。日経ビジネスオンライン連載の「ビッグデータで読み解く現代サッカーの神髄」が話題に。日本代表の試合を中心に、なかなか表には出てこない数値を見ながら、勝敗を決めたポイントを解説する。

グループリーグ勝敗展望
コートジボワール戦 △
ギリシャ戦 ○
コロンビア戦 △

グループリーグ突破可否 ○

1失点は“不可避”“1点以上”を奪えるか

 グループリーグの日本の3試合の結果について、データに基づいたある程度の根拠をもって予想したかったのですが、過去の対戦データ及び対戦国の大陸予選のデータが十分ではないため、具体的な勝敗予想は残念ながらできませんでした。上で挙げた勝敗予想はむしろ個人的な強い「願い」です。

 そもそも、日本のW杯での最終成績について、初めて出場した98年フランス大会から並べてみると、グループリーグ敗退、ベスト16、グループリーグ敗退、ベスト16という不吉な規則性を見ることができます。古代人なら、予選敗退の兆候があると考え、お祓いをするかもしれません。この不吉な規則性を今大会で打破するためにもまずはベスト16以上を最低の目標としましょう。

 ここで少し視点を変えてみます。要は、初戦が「すべて」を左右するということです。W杯出場国が32カ国となった1998年フランス大会以降の4大会の初戦にフォーカスしてみます。これは日本が過去に出場しているすべての大会にあたります。参加国すべて(のべ128カ国)の初戦の勝敗と最終的な成績の関係を見てみると、初戦で引き分け以上の結果であれば72%(のべ82カ国のうちのべ59カ国)でグループリーグを突破しています。一方、初戦で敗れた場合8.7%(のべ46カ国のうちわずか4カ国)でしかグループリーグを突破していません。一つの試合の中でも先取点が勝利を大きく引き寄せるように、W杯でも初戦が一番大事だということです。ということは、少しでも優位に物事を運ぶには初戦の先取点が非常に重要です。

 次にグループリーグ2位通過を最低目標とした場合、勝ち点をどの程度稼がなくてはならないのかを探ってみます。過去4大会の2位通過国の勝ち点の平均は4.9です。更に勝ち点5(1勝2分)を稼いだ国はすべてグループリーグを突破しています。一方、勝ち点4(1勝1敗1分)だと48%で突破となります。そして、2位通過国の得点は1試合平均1.4、失点は1です。失点1は覚悟して、それを上回る得点を挙げることが重要だと思います。であれば、守備以上に攻撃が大きな役割を担っているはずです。

西川結城(サッカージャーナリスト)
大学在学中より横浜FCの専属ライターとして活動。その後『エル・ゴラッソ』の記者として名古屋グランパスとFC岐阜を担当し、楢﨑正剛や本田圭佑、吉田麻也ら日本代表選手の取材を重ねる。現在は川崎フロンターレを担当。

グループリーグ勝敗展望
コートジボワール戦 ○
ギリシャ戦 ○
コロンビア戦 ●

グループリーグ突破可否 ○

日本の突きどころは長短所の裏表にあり

 いわゆるサッカー大国が不在のグループだが、それぞれの国が独特の特徴を持ったチームでもあるだけに、余計に予想を難しくさせている。

 ただ逆説的に言えば、その“特徴がある”、つまり長所と短所の裏表が存在するところに、日本の突きどころがある。

 初戦の相手・コートジボワールは、言わずと知れたアフリカ人特有の身体能力を生かしたプレーが長所である。スピーディーかつパワフルなサッカーは、日本が苦手とする部類のスタイルとも言える。しかし、その超人的な“個”で無理が効くために、細かい組織的なプレーや振る舞いが疎かになってしまうのもアフリカのチームの常。もちろん昔に比べれば改善されてはきたが、例えば前回大会で日本が初戦に戦ったカメルーンにしても、組織としてはチグハグであった。つまり、明らかな弱点を持っている相手だけに、現時点で日本が勝利できないと予想することはナンセンスである。

 続くギリシャも、同じく日本は十分勝利できる相手でもある。彼らの長所は、堅固な守備と鋭いカウンター。ただ反対に選手個々の技術力や能動的にボールを動かす力に関しては、日本に分がある。相手と比較してこちらの特長が明らかに劣っている、もしくは少ないことはなく、だからこそ倒せる可能性を自分たちで否定する必要はない。

 しかし、コロンビアに関しては、少し様子が違ってくる。なぜならば、この3カ国の中では攻守のバランス、または個と組織の能力バランスが最も安定している国だからである。日本との比較で言えば、前述の2カ国とは違い、長所の数も潜在的な実力も明らかに日本より勝っている。客観的に、現状での予想では勝利は苦しいと見るのが妥当だろう。

 もちろんサッカーほど予定調和ではないスポーツはなく、予想が覆ることは当たり前。それでも今の日本の実力を、過大評価も過小評価もすることなく冷静に見れば、2勝1敗が現実的だ。ラウンド16以降の話は……今は時期尚早である。

西部謙司(サッカー記者)
『ストライカー』編集部で編集記者を経て02年からフリーでの取材・執筆活動をスタート。『サッカーで大事なことはすべてゲームの中にある』(出版芸術社)と『ゴールのあとの祭り』(ベースボール・マガジン社)が発売中。

グループリーグ勝敗展望
コートジボワール戦 ○
ギリシャ戦 ○
コロンビア戦 ●

グループリーグ突破可否 ○

対戦順は良い初戦がすべて

 ベスト16、できれば初のベスト8進出を期待したい。

 厳しいグループに入ってしまったが、対戦順はいいと思う。最も強力なコロンビアと戦うのが3戦目というのは助かる。ギリシャとの2戦目もいい。ギリシャが初戦でコロンビアに負けてくれると、日本戦は勝ちにくるだろうから彼らの持ち味である堅守速攻のスタイルが崩れる。ギリシャに本気で守られたら辛い、高さもあるのでセットプレーも怖い。だが、普通に攻めてくるなら話は別だ。

 コートジボワールはオレンジ色のジャージからオランダを連想させるチームだ。技術の高さや洗練されたパスワークも似ている。オランダ同様、クセはない。ポジションをぐちゃぐちゃにしてプレーするタイプではないので、強いけれども戦いにくい相手ではないと思う。この初戦がすべてと言っていいかもしれない。

 楽観的な予想だが、最初の2戦に勝って突破を決めてしまいたい。

 ラウンド16はイタリア、イングランド、ウルグアイのどこが相手でも難敵なのは間違いない。ただし、「死のグループ」を戦ったチームはかなり消耗しているに違いない。楽観ついでに言えば、日本がグループ2位の通過ならレシフェでの試合になる。

 暑くて湿度も高いレシフェは本来ならプレーしたくない会場だが、日本にとってはコンフェデ杯(イタリア戦)とコートジボワール戦に続く3戦目になる。もうホームみたいなものだ。日本人は高温にも湿度にも耐性があるはずなので不利にはならない。イングランドが来てくれれば一番良さそうだ。イングランドは毎回W杯のコンディションが悪い。しかもPK戦に弱い。イングランドに勝つのは難しくても、引き分けに持ち込んでしまえばPK戦で勝てる。

 まあ、こんなに都合良くいくかどうかは分からないが期待しましょう。

 

二宮寿朗(ノンフィクション・ライター)
スポーツニッポン退社後、『Number』編集部を経てフリーに。新聞記者時代にサッカーを含む様々な現場取材で培った観察眼と確かな筆致で対象に迫る。近著に『松田直樹を忘れない~闘争人Ⅱ 永遠の章』(三栄書房刊)。

グループリーグ勝敗展望
コートジボワール戦 ○
ギリシャ戦 ○
コロンビア戦 ●

グループリーグ突破可否 ○

コートジボワール戦で“奇策”の検討を

 カメルーンに勝って波に乗った前回の南アフリカW杯同様、初戦が大事になる。シード国のコロンビアをここで回避できたのは悪くない。

 相手はアフリカ最強の呼び声高いコートジボワール。筆者は南アフリカW杯前にスイス・シオンで戦った親善試合を見ているが、日本は全く歯が立たなかった。その時の強烈なインパクトはいまだに残っている。強靭なフィジカルを誇り、激しく、相手をねじ伏せるようなチームだ。

 しかし隙が全くないかと言えば、そうでもない。アフリカのチームはメンタルにムラがあるという印象を受けるが、コートジボワールもその例外ではないと言える。フィジカルで押されようとも、日本がパスワークを武器に粘りながら揺さぶっていけばチャンスは必ずや来ると見る。

 キーマンには香川真司と遠藤保仁を挙げたい。この試合に限り、オランダ戦のように2人をスーパーサブで起用する“奇策”を検討してもいいとは思う。激しいファイトが要求されるだけに、消耗戦となるのは必定。90分トータルで試合を考えた場合、途中でどうカンフル剤を打っていくかが肝要になる。その意味で、良い流れなら加速させる、また、悪い流れならそれを変えられる力が2人にはある。厳しい戦いにはなると思うが、勝てる可能性も十分にあると踏む。

 もしコートジボワールに勝利できれば、余裕を持ってギリシャ戦に臨める。ギリシャは日本が苦手とする堅守速攻を特色にしているチーム。どうしても勝ち点3が必要なケースになると、前掛かりになり過ぎてカウンターの餌食になる危険性も高まる。ギリシャも初戦のコロンビア戦を落としていれば後がなくなるが、日本が初戦を取っていれば焦るのは相手のほうになる。うまくいけば2連勝という最良のシナリオだって考えられる。

 ただ、日本にとって厳しいグループであることに間違いはない。3戦全敗もあり得るだろう。勝利の女神を振り向かせるには、コンディションとチームの結束、総力がグループリーグ突破のカギを握るのではあるまいか。


細江克弥(サッカーライター)
『CALCIO2002』や『ワールドサッカーキング』編集部を経て、『ワールドサッカーグラフィック』編集部入り。フリー転身後は『Number』への寄稿の他、フットワークの軽さを生かして様々なジャンルの雑誌や書籍の執筆・編集も手掛ける。

グループリーグ勝敗展望
コートジボワール戦 △
ギリシャ戦 ●
コロンビア戦 ○

グループリーグ突破可否 ○

日本は“ベスト8相当”の力を持っている

 決して楽観論ではなく、日本は“W杯ベスト8相当”の力を持っていると見ている。不安よりも期待感のほうが大きい。

 グループリーグの予想は1勝1分け1敗、勝ち点4で2位通過。しかしその内訳は、「コートジボワールに勝って勢いに乗り、ギリシャに引き分けて勝ち点4を獲得。コロンビアとの第3戦を仮に落としても何とか2位通過を確保する」という理想的なプランには落ち着かず、むしろ“最弱”と見られているギリシャに負け、“最強”と見られているコロンビアに勝つ展開を予想する。その根拠は、「普通の予想が通用しない」というW杯という非現実的な舞台の特性にある。

 ザック体制発足後の3年半の実績は全く加味していない。アジア杯制覇も、コンフェデ杯での惨敗も、セルビア&ベラルーシ遠征の惨敗も、それからベルギー遠征の手応えもあくまでその時点の結果。W杯本番は「そこに全精力を注ぐ」という意味において完全なる“別世界”であり、途中経過に一喜一憂することの意味はあまりない。

 この3年半で、日本はたとえ優勝候補に挙げられる強豪国が相手でも一発勝負なら勝てる力を蓄えた。選手の口からもたびたび「組織と個」の強化について言及されるが、W杯で通用する組織力とはチームとしての一体感や団結力に他ならない。従って、問題は個が通用するかどうかの一点。本田圭佑や香川真司、長友佑都といった世界に通用する個が本来の力を発揮することができれば、世界を相手にしても十分に通用する。

 個の勝負における懸念は守備にある。従って、キーマンとなるのは今野泰幸と吉田麻也のCBコンビ。彼らが上手く組織の力を利用して卓越した個を抑えることができれば、日本の勝機は見えてくる。

 ラウンド16は死のグループの通過者。しかし相手がイタリア、ウルグアイ、イングランドのいずれかでも“気を緩められない”という点で日本にとってはプラスに作用するだろう。持っている力をフルに発揮すれば、ベスト8進出は十分に可能だ。

六川 亨(サッカージャーナリスト)
法政大学卒業後、日本スポーツ企画出版社に入社。『サッカーダイジェスト』編集記者・編集長としてW杯、EURO、南米選手権を取材。フロムワンにて『CALCIO2002』編集長など歴任、フリー転身後も精力的に取材活動を続ける。

グループリーグ勝敗展望
コートジボワール戦 ○
ギリシャ戦 ○/△
コロンビア戦 △

グループリーグ突破可否 ○

1失点は覚悟の上で攻撃陣の爆発がカギ

 W杯優勝国がいないのはグループCとHだけ。まずはグループ分けに恵まれた(それは他の3カ国も思っているはず)。次に“地の利”に恵まれた。初戦のレシフェ、第2戦のナタルは東部の沿岸地帯。大会中は30度近い高温多湿となる。対戦相手は主力の高齢化が目立つのに対し、日本は中東勢との対戦で暑熱対策のノウハウがあり、更に蒸し暑さにも慣れているのは大きなアドバンテージ。そこでキーとなるのはシーズン終了後にW杯を迎える海外組の選手のコンディショニングだ。キャンプ地の設定や直前のテストマッチなど、事前の準備がグループリーグ突破に向けて大きなウエイトを占める。

 次に、対戦スケジュールにも恵まれた。アフリカ勢は前回大会のカメルーンも“エトー派”と“ル・グエン派”で内紛が勃発。過去にも大会ボーナスを巡って選手と協会が試合前に対立したことがある。欧州で活躍する高給取りのアフリカ出身選手は、W杯へのモチベーションも低いため、同じことがコートジボワールに当てはまるかもしれない。ギリシャは初戦でコロンビアに敗れれば、日本戦で勝ち点3を奪わなければならなくなる。そこで堅守速攻のギリシャを焦らすような、スローな試合展開ができれば勝ち点(1か3)奪取も見えてくる。

 3試合を通じてキーマンになるのは香川真司、遠藤保仁、長友佑都の左サイドのトライアングルと本田圭佑、岡崎慎司、柿谷曜一朗(か大迫勇也か前田遼一?)ら攻撃陣の爆発。ザックジャパンはコロンビアやウルグアイのような、守ってカウンターという試合運びはできない。90分間攻守に連動して攻め抜くスタイル。不安定なCBのため1失点は覚悟して、2点以上奪うことで活路も開ける。そのためにも攻撃陣の爆発はベスト16進出に必須条件となる。11月のベルギー遠征のように、不用意な形での失点だけは避けたい。

六川 亨 グループCを2位通過すると、グループD1位のイタリアと対戦するが、場所はコンフェデ杯で接戦を演じたレシフェだ。消耗戦を制して雪辱し、初のベスト8に進出する!

吉崎エイジーニョ(ライター)
大阪外大卒。自在な朝鮮語を武器に朝鮮半島のサッカー事情を伝える一方、05年にはドイツリーグへ参戦するなど実践派スポーツライターとして精力的に活動中。朝鮮半島の社会情勢について一般誌へのリポートも多数寄稿している。

グループリーグ勝敗展望
コートジボワール戦 ○
ギリシャ戦 ○
コロンビア戦 ●

グループリーグ突破可否 ○

新米サッカーファンに“本質”を伝えよう

 ○○●。うーんまあ、どの方も考えは似たようなものでしょう。「コロンビア戦までにケリをつける」という話です。

 それはさておき、本書の読者に言いたいです。この本を手に取り、この原稿を読んでくださっている時点で、相当なコアファンなはず。だったら、ちょっとした「責任」がありますよ! W杯をきっかけにサッカーを知った人(=つまりにわかファン)に対して、少しでも本質的なサッカーの楽しみを伝えていくということです。

 3戦終了後、2位以内にいるために何が必要か。この観点を伝えるべきだと思います。「突発的なゴールを生み出せる選手は誰?」

 コアファンなら、ワーワー騒ぐだけではなくあらゆる状況に対処する心の準備が必要です。ブラジルでの日本にとっての最悪な展開とは何なのか。今夏~10月の「地獄スパイラル」を再発しないこと。こういうことです。「日本にとっていい試合の流れの時に点が取れない。一方で守備のミスで簡単に失点を喫してしまう。挽回しなくちゃいけない。でもザックの言う『バランス』を重視するあまり、誰も『なんとかしよう』という意思を感じさせずに試合終了。結果イライラムカムカ」

 これを打開するヒントは、さる11月16日のオランダ戦の前半44分にあります。劣勢の中、長谷部誠の突破から大迫勇也が突発的なゴールを生み出した。本田圭佑も試合後のテレビのインタビューで「2点取られ厳しいかな、と一瞬思ったところにあのゴールが決まった」と言っていたでしょう?

 流れが悪くなっても、なんとかなるという希望。劣勢の中でも相手に「やられる」というプレッシャーを与え続けること。こういうプレーが、強い相手に戦う時に重要なんだと。楽しい想像はにわかファンにお任せして。コアなファンなら違う観点を伝えたいものです。ぜひ、お近くの家族・恋人・友達・友達以上恋人未満・兄弟・同僚などにお伝えください。