「カルチョ・スキャンダル」以降、名門クラブの“格”に相応しい成績を残せず低迷していたユヴェントスは、アントニオ・コンテを監督に迎えたことで上昇気流に乗った。就任から2年でスクデット連覇を達成。新スタジアムは熱気に満ち、チームは着実にレベルアップしている。
しかし、この2年間勝ち続けていたユーヴェの快進撃は、先日のチャンピオンズリーグでのグループリーグ敗退でストップした。イタリアで敵なしとなった今シーズンは、ヨーロッパの舞台での躍進が見込まれていただけに、落胆は大きい。
かつてのユーヴェ黄金期をキャプテンとして支え、そして今は新たな黄金期を築こうとするコンテが、チーム作りの進捗と今後の展望を語ってくれた。
「スクデット連覇という素晴らしい結果を出した。内容についても満足できる」と過去2シーズンを振り返った上で、今シーズンについても「さらに上のレベルを目指すべく、いくつかの取り組みをしていて、それについても手応えを感じている」と指揮官は言う。
2011年夏の就任時に彼は、「強いユーヴェを復活させるには、しっかりとした計画を立て、着実に遂行しなければならない」と語っている。もっとも、“良い意味で”計画どおりには行かなかった。「実際のところ、1年目のスクデットは想定していなかった。1年目でチームの土台を固め、2年目でスクデットを獲得するというのが当初の計画だったからね。ところが我々はスクデット連覇を達成し、計画を前倒すことになった」
成功の秘訣はどこにあるのだろう? 「自分の手腕というわけじゃなく、選手やスタッフ、フロントなどユヴェントスというクラブを取り巻くすべての人たちの努力があってこそだ。ただ、自分が幸運だったと思うのは、ユーヴェの監督になった時点で、素晴らしい人間性を持った選手が揃っていたことだ」
この回答は正しいが、こちらの聞きたい部分を欠いている。“コンテ以前”にもユーヴェには優れた選手が揃っていた。2006年のカルチョ・スキャンダル以降、様々なタイプの監督がユヴェントスを率いた。知性派のディディエ・デシャン、経験豊富なクラウディオ・ラニエリ、若く選手と良い関係を築けるチーロ・フェラーラ、チーム再建に長けたアルベルト・ザッケローニ、革新的な戦術家のジジ・デルネーリ……。だが、彼ら全員が、優れた選手が揃ったチームを成功に導けずにクラブを去っている。
前任者たちは同じような条件で失敗したのに、コンテは成功した。その違いはどこにあるのだろう? イタリアでは同業者の手腕を批判するのはタブーである。コンテはそこに触れないようにしながら、自分のやり方を説明してくれた。
「私がやったのは、自分のサッカー観を選手全員に等しく伝え、同じ方向を向かせること。私のサッカーに対する取り組み方に、みんな真正面から向き合い、吸収して自分のものにしてくれた。チームにとって良い選手とは、才能があるだけではダメで、自分がチームを引っ張っていくんだという責任感がなければならない」
彼が着任してから約2年半、ユヴェントスは着実にレベルアップを続けている。だが、チャンピオンズリーグ早期敗退という現実からも分かるとおり、まだ「最強」と称されるほどの実力には至っていない。コンテにインタビューをしたのはチャンピオンズリーグからの敗退が決まるガラタサライ戦の前のことだが、彼は非常に慎重な言葉を選んで、ヨーロッパにおける自分たちの立ち位置について語っている。
「チャンピオンズリーグ優勝を“ツキで”達成できることは決してない。しかるべき道筋を、正しい順序で進む必要がある。私はユヴェントスというクラブが、チャンピオンズリーグの舞台で常に主役を演じるべきだと思っている。チームはまだそのレベルにないが、焦ってはいけない」
スクデットはともかく、チャンピオンズリーグは地道な歩みを重ねることでしか優勝はない、ということか。彼は続けた。「ヨーロッパのトップレベルとはまだ差がある。これは認めなければならない。バイエルンやバルセロナと比較すると、あらゆる面でまだ差がある。戦力だけじゃなく、ピッチ外も含む様々な点で、我々はもっと向上しなければならない」
チャンピオンズリーグで“計画外の優勝”を手にすることはできない。ただ、コンテ率いるユーヴェは、しかるべき道筋を、正しい順序で歩いているようだ。