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世界一のクラブであり続けるために…“銀河系の仕掛人”ペレスの手腕に迫る

2013.12.14

今夏の移籍市場で、ペレスはベイル(右)獲得のために9300万ユーロを費やした

[ワールドサッカーキング2014年1月号掲載]

フロレンティーノ・ペレスの存在を抜きにして、近年のレアル・マドリーの発展を語ることはできない。ペレスはいかにしてクラブの規模を拡大してきたのか。銀河系と形容されるチームの生みの親の手腕に探る。
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文=セルヒオ・レビンスキー Text by Sergio LEVINSKY
翻訳=工藤 拓 Translation by Taku KUDO
写真=ゲッティ イメージズ Photo by Getty Images

銀河系軍団の構築で栄華を極める

 9月2日、強い日差しが降り注ぐサンティアゴ・ベルナベウ。ギャレス・ベイルの入団発表の場でフロレンティーノ・ペレスが壇上に立つと、詰め掛けた3万人のファンから「エジルを売るな!」という大合唱が沸き上がった。

 今夏、ペレスはプレミアリーグの年間最優秀選手を獲得するために、史上最高額となる1億ユーロ(クラブの発表額は9300万ユーロ)の移籍金を費やした。そして、攻撃のキーマンだったメズート・エジルを惜しげもなく売却、収支の帳尻を合わせたのだ。ファンや関係者の反感を買ったこの補強戦略は、いかにも敏腕ビジネスマンのペレスらしいやり方だった。

 スペイン最大手の建築グループ『ACS』の会長を務めるペレスが、経営のスペシャリストとしてサッカー界に広くその名を知らしめたのは2000年の夏。彼が初めてレアル・マドリーの会長選挙に当選した時のことだ。ペレスは会長に就任して間もなく、街中にあった旧練習場をマドリッド市に売却し、選挙時に公約として掲げていた400億ペセタ(約337億円)の債務返済を完了。更にもう一つの公約であったバルセロナのルイス・フィーゴ獲得を実現してサッカー界の度肝を抜いてみせた。

 ペレスはチャンピオンズカップ5連覇を成し遂げた1950年代の黄金期を再現すべく、フィーゴを皮切りに、ジネディーヌ・ジダン、ロナウドと毎年一人ずつビッグネームを獲得して、“ロス・ガラクティコス”と形容されるスター集団を作り上げた。また、スター選手とクラブ生え抜きの選手を組み合わせる「ジダネス&パボネス」政策を実施。会長就任1年目に国内リーグ制覇、2年目には通算9度目となるチャンピオンズリーグ優勝、3年目は再び国内リーグ制覇と、主要タイトルを取り続けた。

 一方で、スター選手の人気の高さを最大限に生かすため、ユニフォームの販売や興行遠征といったマーケティング事業も推進。それまで赤字が当たり前だった年間収支は、毎年数十億円の利益を計上するようになっていた。

 しかし、栄華を極めた銀河系軍団の軌跡は、会長就任4年目の03-04シーズンを境に下降線を描き始める。既に攻撃陣が飽和状態でありながら、新たなマーケティングの柱としてデイヴィッド・ベッカムを獲得。一方で、守備のタスクを一手に担っていたクロード・マケレレやロッカールームで絶大な影響力を持っていた主将のフェルナンド・イエロを放出するなど、いきすぎたスター重視の強化策がチームバランスを著しく狂わせてしまった。

 更にペレスはこの時、ある重大なミスを犯した。「彼は旧時代の監督。今後はよりモダンな戦術家タイプの監督がふさわしい」と語り、スターぞろいのチームを巧みにコントロールしてきたビセンテ・デル・ボスケとの契約を更新しなかったのだ。

 4年半の間に2度のCL制覇と2度のリーグ制覇を成し遂げていた名将を失ったチームは、その後の3シーズンで重要なタイトルを一つも取ることができなかった。また、マイケル・オーウェンやジョナサン・ウッドゲイト、アントニオ・カッサーノなど、補強面でも空振り続き。監督が頻繁に入れ替わる混乱状態にあった06年2月、ペレスは「これ以上やれることはない」と、失意のうちにクラブを去ることになった。

成績不振の責任を取る形で会長職を辞任したペレスだったが、2009年に復帰。同年の夏にはクリスチアーノ・ロナウドやカカー、シャビ・アロンソといったビッグネームを獲得し、大きな注目を集めた。敏腕ビジネスマンのペレスが思い描くクラブのあるべき姿とは……。続きは発売中のワールドサッカーキング2014年1月号でチェック!

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