2013.12.11

元レアル幹部が明かす、マドリーの現状と移籍市場の舞台裏とは

[ワールドサッカーキング2014年1月号掲載]

現在はマーケティング会社の共同経営者を務める傍ら、コメンテーターとしても活躍、最近になって本も出版した。かつてフロレンティーノ・ペレスの右腕として暗躍した男が、レアル・マドリーの現状とマーケットの舞台裏を語る。
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インタビュー=セルヒオ・レビンスキー Interview by Sergio LEVINSKY
翻訳=工藤 拓 Translation by Taku KUDO
写真=ゲッティ イメージズ Photo by Getty Images

最も重要だった契約はC・ロナウドの獲得

――レアル・マドリーのGDを退いて2年半が経過しました。外から見て、現在のクラブはあなたの目にどのように映っていますか?

バルダーノ 非常に困難な戦いを続けていると見ている。マドリーは民間の非営利団体という体制を保ちながら、強大な資金力を持つビッグクラブと競わなければならない。マーケティングの観点から新たなアイドルを作り出すべく、絶えずチームをリニューアルすることがクラブに義務づけられた戦略の一つだ。ただ、収入以上の支出を費やすことで、負債を増やし続けるような経営にはストップを掛けるべきだ。その意味で、マドリーの経営は限界への挑戦を繰り返しているようなものだと言える。

――あなたがいた頃と比べて補強方針に違いは見られますか?

バルダーノ 補強については特にここ数年、マーケティング戦略だけでなく、あらゆる手段でバルセロナとの差を縮めなければならないという使命感が根底にあった。ゆえにインパクトをもたらすビッグネームの獲得を重視してきたのだが、最近はクラブがアクセルを踏み込み過ぎて混乱が生じてしまっているように見える。

――チームのプレースタイルについてはどうでしょう?

バルダーノ クラブは優れた協調性、柔軟性を持つカルロ・アンチェロッティを監督に選んだ。彼は会話を重視する落ち着いた性格の持ち主で、ビッグクラブとは何たるかを熟知している。メディアへの露出が多く、何かと現場に口を出すシルヴィオ・ベルルスコーニのミランを何年も率いた経験を持ち、チェルシーやパリ・サンジェルマンで多くの扱いにくいスター選手と良い関係を築いてきた。彼は問題の扱い方を心得ている。こうした特筆すべき能力により、彼は徐々にチームを解放し、緊張感を取り除いているように見える。

――今夏はメズート・エジルの放出が議論を呼びました。カルロ・アンチェロッティ監督がポゼッション重視のスタイルを目指すと公言した矢先、チームで最もクリエイティブな選手を放出するのは矛盾していると思いませんか?

バルダーノ 今はクラブの人間ではないから放出の経緯や詳細は分からない。ただ、私は彼の移籍を大いに悔んだ人間の一人だ。エジルの放出は一人の才能を失ったというだけでなく、クリスチアーノ・ロナウドにとっても大きなマイナスになったと思う。エジルはクリスチアーノに最も多くのアシストを供給していた選手だからね。

――ギャレス・ベイルの移籍金があれほど膨れ上がったのはなぜでしょう? 市場の主役となるためにR・マドリー側が望んだことでもあるのでしょうか?

バルダーノ マドリーは非常に複雑で強大な組織であり、何百万人ものファンに対してコンスタントに新たな魅力を提供する義務がある。今やその対象はサンティアゴ・ベルナベウを訪れるファンだけでなく、世界中のファンにまで広がっている。現在はこれらのファンを引き込むべく、10~15のクラブが競い合っているんだ。昨シーズン、バイエルンは取れるタイトルをすべて取ったが、それでも世界中のファンを引きつけるには至らなかった。彼らが監督を変えたのはそのためだ。ただ勝つのではなく、世界中のファンを魅了できる試合をするためにね。

――R・マドリーのGDとして関わった移籍交渉のうち、最も重要だった契約、また最も困難だった交渉を教えてください。

バルダーノ 最も重要な契約は間違いなくC・ロナウドの獲得だ。彼がクラブにもたらした利益はもちろん、加入後の彼が世界の頂点に立つ2選手のうちの一人へと成長したことも含めてね。クリスチアーノがチームに及ぼす影響の大きさは計り知れない。彼はリーダーとしてチームを引っ張っているだけでなく、並外れたプロフェッショナルとしても周囲の模範になっている。彼を目指そうと髪型などをまねる選手は多いが、まずやるべきことは彼のようにトレーニングに従事することだろう。最も困難だったのはロナウドの獲得だ。インテルとの交渉がまとまらず、話し合いは夏の移籍市場が終了する最後の1分まで続いたからね。彼の獲得に対する周囲の期待は非常に大きく、ゆえに失敗が許されないというプレッシャーから、ストレスも相当に大きかった。ロナウド本人までが公にマドリー行きを求めていたくらいだ。幸いにも、我々が提示した最後のオファーが受け入れられた。交渉がまとまったのは時計の針が移籍市場の終了を指す直前のことだった。

2011年5月にクラブを去ったバルダーノが、退団のきっかけとなったモウリーニョとの関係悪化の経緯を明かす。インタビューの続きは、12月12日(木)発売のワールドサッカーキング2014年1月号でチェック!