2013.10.23

バルセロナの今をひも解く11のキーワード Part.1/クライフの遺産|アヤックス流の継承|最強の“メッシ・システム”|奇跡の復活

昨シーズンのチャンピオンズリーグではバイエルンに2戦合計で0-7の大敗を喫した。黄金時代の終焉を指摘する声もあるが、今夏にネイマールを獲得、虎視眈々と完全復権を狙う。現代サッカーのトレンドを作り、王者然とした勝利を追求し続けるバルセロナはいかにして現在の姿にたどり着いたのか。11のキーワードでバルセロナの今をひも解く。

文=池田敏明 写真=Getty Images

【KEYWORD 01】クライフの遺産
 1988年にバルセロナの監督に就任したヨハン・クライフは、トップチームのみならずクラブ全体の大改革に着手した。その中で最も特徴的だったのが、カンテラ(下部組織)の整備である。年代別チームのフォーメーションや戦術をトップチームに統一させ、クラブの哲学、チームスタイルをじっくり教え込むスタイルが確立されていった。これにより、晴れて昇格を果たしたカンテラーノはそれまでと同じシステムの中でプレーできることになり、本領を発揮しやすくなったのだ。

 ジョゼップ・グアルディオラやイバン・デ・ラ・ペーニャ、カルラス・プジョル、チャビ、アンドレス・イニエスタ、そしてリオネル・メッシとカンテラから数多くの選手が昇格しており、現在ではカンテラ出身選手をチームの中軸に置き、足りない部分を補強で補う戦略が採られている。2013-14シーズンのトップチーム登録選手は25人で、そのうちカンテラ出身者は17人。実に68パーセントがカンテラ出身選手という計算になる。

【KEYWORD 02】アヤックス流の継承
 リヌス・ミケルスが考案し、ヨハン・クライフがピッチで具現化したオランダ伝統のトータル・フットボール。ボールポゼッションを高めてリズムを作り、流動的なポジションチェンジを繰り返して相手の守備を切り裂き、ボールを奪われれば前線からの積極的なプレスで奪い返す。オランダの名門アヤックスをヨーロッパの頂点へと導いたこの戦術は、彼ら2人によってバルセロナに導入され、以来、攻撃を重視したポゼッションサッカーがクラブの伝統となった。

 クライフは1988年に監督としてバルセロナに帰還し、“エル・ドリーム・チーム”でヨーロッパを席巻。21世紀に入るとアヤックス出身のフランク・ライカールト、そしてジョゼップ・グアルディオラがクライフイズムを継承してチャンピオンズリーグ制覇などの実績を残し、ポゼッションサッカーはワールドスタンダードとなった。バルサは2007-08シーズンから2013-14シーズンにかけて公式戦316試合連続で50パーセント以上のボール支配率を記録しており、2012-13シーズンのチャンピオンズリーグ、グループステージのセルティック戦では90パーセントという驚異のポゼッション率を記録した。

【KEYWORD 03】最強の“メッシ・システム”
 現在のバルセロナは“リオネル・メッシのチーム”と言っても過言ではない。トップデビュー当初は右ウイングでプレーしていたが、ジョゼップ・グアルディオラ元監督は彼の得点力を生かすべく3トップの中央にコンバートし、さらには両ウイングよりもややポジションを下げて“偽9番”としての機能性を確立させた。ティト・ビラノバ前監督やヘラルド・マルティーノ現監督もこのシステムを踏襲し、中央にメッシ、左右のウイングにペドロ・ロドリゲスやアレクシス・サンチェス、ネイマールらを配置する戦術を採用している。

 メッシには動きの自由が与えられ、中盤に下がってビルドアップに参加したり、左右のスペースに流れて起点を作ったり、ドリブルやパスワークで相手守備網を突破したりと攻撃の全権を担う。メッシに得点を挙げさせるために周囲が動き、メッシもまた自らのフィニッシュを最優先させる。2012-13シーズンに達成したリーガ・エスパニョーラ19試合連続ゴール、バルセロナでの公式戦通算300ゴールなどの大記録は、この“メッシ・システム”の賜物と言えるだろう。

【KEYWORD 04】奇跡の復活
 ケガ人を出さずに長いシーズンを乗り切るのは不可能。バルセロナの場合、シーズンが後半に突入する1月以降、守備的な選手にケガ人が続出し、それまでの快進撃に陰りが見えることが多い。

 2012-13シーズンもカルラス・プジョルやハビエル・マスチェラーノらが長期離脱を強いられ、選手のやりくりに苦労したが、このシーズンはケガ人以外の長期離脱者にも見舞われた。肝臓腫瘍で2012年3月から離脱したエリック・アビダル(現モナコ)、そして耳下腺腫瘍で同12月から離脱したティト・ビラノバ前監督だ。両者とも以前に一度、同じ病気を発症し、完治の後に復帰していただけに、残された選手たちが受けたショックは想像して余りある。だが、離脱した2人は不屈の闘志を見せた。肝臓移植の手術を受けたアビダルはビラノバ前監督の離脱と同時期にチーム全体練習に復帰。2013年4月のリーガ・エスパニョーラ第30節マジョルカ戦で戦列復帰を果たした。ビラノバ前監督も手術、療養を経て4月2日のチャンピオンズリーグ、対パリ・サンジェルマン戦でベンチに戻っている。

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