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好調横浜FMを支える中村俊輔、35歳を超えてなお輝きを増す「察知力」

2013.10.02

今季好調の中村俊輔 [写真=山口剛生]

中村俊輔

インタビュー=田中亮平 写真=山口剛生

 J1第27節終了時で首位に立ち、2004年以来のリーグ制覇に向けて快走する横浜F・マリノス。その中心に君臨する中村俊輔は、35歳を迎えた今季、全盛期に匹敵するほどのキレと存在感でリーグを席巻している。トップ下としてピッチ上のすべてを把握し、ベテランとしてチームのすべてに目を光らせる中村の根底にあるのが、物事を「察知する力」だ。
 
 2008年に出版され、累計22万部を突破している中村の自著『察知力』(幻冬舎)が、今秋に電子書籍化された。今改めて評価される中村の「察知力」について、担当編集者の二本柳陵介氏(幻冬舎)に訊いた。
  
──『察知力』は22万部を超えるベストセラーとなりました。当時ここまでの反応は予想されていましたか?
  
二本柳 もちろん幅広く支持されるという自信を持って送り出しました。ただ、22万というのは予想を超えた数字ではありましたね。
 
──今でこそ、サッカー選手の自著、それも単なる自伝ではなくて、ビジネスマンだったりサッカーファン以外にも届くように作られた自己啓発本的なものが多く出版されていますが、『察知力』はそのパイオニア的存在ですよね。二本柳さんは長谷部誠選手の『心を整える。』の担当編集でもありますが、そういった市場というのは計算されていたのでしょうか?
 
二本柳 『察知力』で自信がついたというのはありますね。もともと僕は雑誌『ゲーテ』の編集員なので、普段からビジネス書をよく読んでいて、いつか自分の好きなサッカーでビジネス書、自己啓発書を作れればいいなと思っていました。と同時に、2008年あたりから、自己啓発により優れている人たちが日本代表として前に出てきた時代でもありました。物事を捉える力のある人たちというか、サッカーだけではない、生きることに対するクレバーさを持った人たちですね。彼らを見ていて、サッカーで使う頭の筋肉は、日常でも使えるはずだと感じ、そうした本を担当させていただいているのですが、僕の中で「察知力」はその始まりです。これがあったから長谷部選手の本につながったというのはありますね。
 
──『察知力』を改めて読み返すと、非常に普遍的なことが書かれていて、まったく色褪せていませんね。
 
二本柳 いろんなことのベースとも言える本ですよね。編集者としては、書籍のタイトルって時間が経つとちょっと恥ずかしくなったりするんですけど、これはギリギリ大丈夫というか(笑)。最初は『危険察知力』とか『危機察知力』というタイトルにしようと思っていたんですけど、新書の編集長が『察知力』でいこうと。結果的に良かったです。
 
──彼の今季の活躍ぶりを見てどう感じますか? それこそ、いろんなことに目を配り、準備するという「察知力」が存分に発揮されていると思いますが。
 
二本柳 そうですね。物事を察知すること、そのために準備すること、そして手を抜かないこと、というベースは変わらない中で、より引き出しが増えているから、確実に進化していますよね。あらゆる経験が糧となり、かつてないほど精神的な余裕があって、チーム全体を察知できているように感じます。
 
──プレーもさることながら、キャプテンマークを巻いたりとか、選手としての振る舞いにおいても変化があるように見えますね。
 
二本柳 本書の中に、セルティック時代に感銘を受けた人物としてニール・レノン(元北アイルランド代表)とのエピソードが出てくるんですね。レノンは当時35歳くらい、つまり今の中村選手と同じくらいの歳で、中村選手は彼のキャプテンとしての立ち居振る舞いにすごく影響を受けたと。レノンの背中、影は今の中村選手の中に息づいているんじゃないかなと思いますね。最近の中村選手はあえて泥臭くやっているようにも見えたりしませんか? 例えばゴールの後のリアクションが派手になってきていたりとか。もちろん、プレーしているのが楽しいというのもあるんでしょうけれど、そういう振る舞いで、チームの空気も操っているように感じますね。

──電子書籍化にはどんな狙いがありますか?

二本柳 『心を整える。』を電子書籍化したときに、読者の方からサッカー系の電子化をもっと進めて欲しいという声もちらほら聞いて、求めている人が多いのかなと思いました。それにそもそもサッカーと電子書籍は、非常に相性がいいとも感じていて。本の中に出てくるプレーをインターネット経由で見る事も
できますし、サッカー本に関しては今後も積極的に電子化していくべきだなと思っていますね。

──改めて、どういう人に読んでもらいたいですか?

二本柳 もともと新書として出版したということは、第一義として若いビジネスマンに向けて、ということがあって、この本には彼らの日常生活の中できっと役立つであろう物事の察知の仕方というものが詰まっていると思います。今読み返してみても、中村選手のベースがここにあるのは間違いないですし、それがより磨かれている、生かされているのが今の好調ぶりですよね。つまり、中村選手自身が察知力の大切さを証明していっている、最高の見本なわけです。という中で、改めて電子書籍として出して、より多くの人に読んでもらいたいと思っています。

──35歳での活躍ということを考えれば、若い世代だけでなく、30代中盤に差し掛かった方々にもぴたりとはまりそうですね。

二本柳 そうですね。30代半ばを過ぎてくれば、仕事に慣れてきて、手を抜こうと思えば抜けるかもしれない。若いころのように刺激を受けることも少なくなってくる。僕自身も歳を取れば取るほど仕事がきつくなってきているなという実感があるのですが、この本はそうした人にも届いてほしいですね。中村選手は35歳を超えてなお、すごく楽しそうに仕事をしている。ぜひ、本書を読んで横浜FMの試合に足を運んでもらいたいですね。彼のプレーがもっとおもしろく感じるはずです。

──ありがとうございました。

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