2013.10.04

マンU移籍を振り返るフェライーニ「次のステップに踏み出すべきだった」

[ワールドサッカーキング1017号掲載]

“赤い悪魔”の新戦力は、あらゆる点で理にかなった補強だった。フィジカルにもスキルにも優れ、プレミアリーグでの経験を持ち、指揮官の教えを知り尽くす。成功を半ば約束された新天地で、マルアーヌ・フェライーニは新たな一歩を踏み出した。
フェライーニ
インタビュー・文=ミシェル・デスラック Interview and text by Michel DESLAC
翻訳=石橋佳奈 Translation by Kana ISHIBASHI
写真=ゲッティ イメージズ Photo by Getty Images

 2013年、夏の移籍市場における最後のビッグディールは、最終日の夜に決着した。マルアーヌ・フェライーニは、5年前に彼をイングランドへと導いた恩師、デイヴィッド・モイーズの後を追うように、エヴァートンからマンチェスター・ユナイテッドへと移籍することになった。

 長身でたくましく、ハードな守備と繊細なテクニックを兼備する彼は、エヴァートンでの5シーズンを経て、プレミアリーグ屈指のMFとしての評価を確立した。昨シーズンのゴール数は11。決定力も申し分ない。

「次のステップに踏み出すべき時だった」

 そう語る本人の言葉どおり、十分な経験と実績を重ね、肉体的にも充実した25歳で決断した新たな挑戦。そして、新天地には気心の知れた指揮官が待っている……。フェライーニの「次のステップ」に輝かしい栄光が待っていることは、もはや約束されているようにも思える。

移籍が決まる前から心の準備はできていた

――まずはマンチェスター・Uに移籍した経緯から聞きたい。君の移籍のうわさはかなり前からあった。夏の移籍期限の最終日、実際に契約が決まった時の心境はどうだった?

フェライーニ あれは僕のサッカー人生で最高の日だった。ただ、二度と経験したくないな(笑)。それはもう、ものすごいストレスだったんだ。交渉が進んでいることは知っていたけど、移籍金や年俸の条件が合わなければ破談になるかもしれなかった。自宅待機の状態で、自分の身がどうなるのか分からないまま、ずっと時計の針が進むのを眺めていたよ。

――移籍は本当に最後の瞬間、夜12時の少し前に発表された。

フェライーニ そうなんだ。エヴァートンは最後まで僕を手放すことに納得していなかったし、モイーズ監督は最後まで僕を欲しがった。移籍交渉そのものは数週間前から始まっていたんだけどね。なかなか決着がつかなかったから、ずっとピリピリしてたよ(笑)。今は笑って話せるけど、あの時は本当に気が気じゃなかった。あと少しタイミングが遅れていたら、移籍契約が成立していなかったかもしれないわけだから。

――エヴァートンに残留する、という展開も考えていた?

フェライーニ 正直に言えば、気持ちはユナイテッド行きで固まっていた。エヴァートンを去るつもりで、心の整理もできていたし、モイーズ監督にもそう伝えてあった。だってそうだろう? ユナイテッドに誘われて「ノー」と言えるプレーヤーなんかいない。しかも、これまで指導を受けた、尊敬する監督がいるわけだからね。あとはエヴァートンが認めてくれるかどうかだった。クラブの幹部とも話をしたよ。「こんなオファーが来るのは一生で一度のことなんだ」ってね。僕の気持ちは伝わったと思う。最後まで難航したとはいえ、エヴァートンにはそれなりの移籍金を残すことができたから、まあ、良かったんじゃないかな。

――2750万ポンド(約41億3000万円)の移籍金はプレッシャーにならない?

フェライーニ 他人がどう思うかなんて気にしていない。そもそも、移籍金は僕にどうこうできる問題じゃないし。

――君は08年にスタンダール・リエージュからエヴァートンへ移籍した。その時もなかなか厄介だったようだけど、当時を思い出した?

フェライーニ それは全くなかった。当時の僕は21歳で、スタンダールで快適にプレーしていた。移籍を焦ってるわけじゃなかったんだ。だから、仮にエヴァートン行きが決まらなくても落ち込むことはなかっただろうね。

――しかし、今回は違った。

フェライーニ そう。何もかもが違った。移籍が決まる前から、オールド・トラッフォードでプレーするつもりでいたし、その準備はできていると感じていた。もしエヴァートンに残ることになったら、ちょっと落胆したかもしれない。

――もうエヴァートンでプレーを続けるモチベーションがなかったということ?

フェライーニ エヴァートンには感謝しているよ。この5年間、素晴らしいシーズンを過ごせた。彼らへの敬意は忘れないつもりだ。僕をフットボーラーとして成長させてくれたクラブはどこかと聞かれたら、迷いなくエヴァートンと答えるさ。でも、その時代は終わった。僕には新しいチャレンジが必要だったし、次のステップに踏み出すべき時だった。そこにユナイテッドからオファーが来れば、誰だって断ることはできないよ。

環境が厳しいのはどこでも同じ

――モイーズ監督がマンチェスター・Uの監督になっていなかったら、状況は変わっていたと思う?

フェライーニ どうかな。彼がいなくてもユナイテッドはユナイテッドだ。このクラブの伝統と哲学、魅力は変わらないよ。ユナイテッドに違う監督が就任していたとしても、僕は移籍を決断したと思う。もちろん、モイーズ監督がいるというのは、率直に言ってラッキーだけどね。

――マンチェスター・Uのどんなところに魅力を感じる?

フェライーニ シンプルに言うと、強いチームってことだ。このクラブはすべてのタイトルを狙える。フットボールプレーヤーなら誰もがタイトルを目標にするけど、それを夢じゃなくて現実的なターゲットにできる人間は一握りなんだ。僕はスタンダール時代の08年にベルギーリーグで優勝しているけど、タイトルと言えばそれっきりだ。エヴァートンは過去数年で力を伸ばしたとはいえ、プレミアリーグのタイトルを獲得できるレベルにはない。タイトル争いの緊張感とか、チャンピオンズリーグ(CL)のハイレベルな戦いを経験したいって思うのは当然のことだろう?

――以前からこのクラブに良いイメージを持っていた?

フェライーニ そうだね。最初にインパクトを受けたのは1998-99シーズンのCL決勝かな。僕は11歳で、テレビの前にかじりついていた。あの時から、僕はユナイテッドが好きだった。素晴らしいクラブだし、僕が好きなタイプのフットボールをするしね。

――ただし、新しい環境に身を投じれば、またゼロからやり直すことになる……。

フェライーニ そんなことはない。プレミアリーグで5年プレーした経験が無駄になるとは思わないよ。僕は自分にそれなりの力が備わっていると思うし、そうでなければユナイテッドに来ることはできなかった。エヴァートン時代、僕はユナイテッドやアーセナル、チェルシーと戦った。トップレベルのフットボールがどういうものかは分かっている。

――マンチェスター・Uのポジション争いは、エヴァートンよりずっと激しい。それについてはどう?

フェライーニ エヴァートンでポジションを勝ち取るのだって簡単じゃなかった。当時は誰も僕のことを知らなかったわけだし。競争が激しいのはどこでも同じだと思う。フットボールは自分の力で勝ち取らなければ、何も手にできない世界だ。でも、立場は全員同じだよ。僕だけが厳しい環境に置かれてるわけじゃない。モイーズ監督だって、指揮官としての能力を証明する必要があるんだ。アレックス・ファーガソンの後任を務めるのは大変なことだと思う。

――そのモイーズ監督は君に絶大な信頼を置いているようだ。

フェライーニ それは分かっている。だけど、それでポジションが約束されるわけではない。特にユナイテッドは、プレーヤーや監督よりもクラブそのものを大切にする。デビューした時からそれを感じたよ。

マンチェスター・Uへの移籍の経緯を語ったフェライーニ。デビュー戦を振り返るとともに、自身のスタイルにも言及した。インタビューの続きは、ワールドサッカーキング1017号でチェック!

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