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藤田俊哉「未来を作るのはものすごく難しい。でも、それが一番面白い」

2013.10.16

Jリーグ草創期から今に至るまで、藤田俊哉は様々な角度から日本サッカー界を見つめてきた。ジュビロ磐田の背番号10として、日本代表の一員として――。新たなチャレンジに向かう彼にとって、Jリーグが歩んできた20年と、その先に見える未来とは。

インタビュー・文=青山知雄(本誌編集長) 写真=足立雅史 Jリーグサッカーキング11月号掲載(9月24日発売)

――近年のJリーグは予想が難しい実力拮抗型のリーグになりました。それについてはどう考えていますか?

藤田俊哉 残念ながら、全体のレベルが上がったということではないと思いますね。もちろん、どんな相手とやっても勝つのは難しい。だから最近のJリーグのように優勝チームが毎年のように入れ替わることがあってもおかしくない。でも、個人的には今の状況が続くことはあまり好ましくないとも思いますよ。ただ、その原因を選手の国外流出による戦力の低下に求めるのは少し違うと思う。選手たちが海外に出ていくことはあくまでポジティブなことだと思っているから。

――確かに、選手目線で考えれば、よりレベルの高い世界で自分の力を試したいと思うのは当然のことかもしれません。

藤田俊哉 僕はそう思うよ。レベルの高いところでプレーしたいという純粋な思いがあるからこそ、選手は選手でいられるんだと思う。それはサッカー界全体の流れでもあるから、そこに何かの原因を求めるのは少し違う気がする。僕は、選手たちにはどんどん海外に行ってほしいと思いますね。トライすることは何歳になってもできる。僕はそう考えている。ただ、若ければ若いほど多くのサポートが必要だから、成功するように手助けをしてあげることも必要。何もかも自己責任でっていうのは、サッカー界全体のことを考えたら決してプラスにはならないと思うから。

――その一方で、国内でも優秀な選手を輩出できるような環境作りが必要だと思います。

藤田俊哉 もちろんそうだよね。その役割を担っているのがJリーグだし、選手たちにその可能性を示していかなきゃいけないと思う。そういう意味でも、リーグ全体のレベルを上げることを考えなきゃいけない。ただ、選手はどんな環境でも育つんですよ。それは間違いない。だから国内と海外を比べるのではなく、どちらの環境も整えることが大切だと僕は思いますね。

――藤田さん自身、オランダでプレーして初めて感じた日本の良さはありますか?

藤田俊哉 日本は整っていますよ、すべての面で。それは自信を持って言えるし、誇りにも感じた。日本にいると外に対する憧れを持つけど、外に行けば日本への誇りを持てる。そういう意味でも、海外でプレーすることの意味は大きいと思うよね。

――ピッチ内における日本の強みはどこにあると思いますか?

藤田俊哉 日本の良さはチームとしての規律を守れることだよね。つまり、チームワーク。海外ではあくまで個人を大切にしていて、日本と比較すれば規律を守るという意識は低い。ただ、サッカーにおいてはどちらが優れているという話ではないと思う。歴史の中で培われてきたものがサッカーに反映されているということだから。国民性と言えばいいのかな。だから決して、他の国のスタイルを真似する必要はないんだよね。

――規律を守るという日本人の特徴が、この20年におけるJリーグの成長につながっている気がします。

藤田俊哉 それは間違いないんじゃないかな。Jリーグは、普通なら50年かけてやることをたった20年で実現してきたと思う。日本という国には、それだけのポテンシャルがあるんだよね。だから、大切なのは今の状態に満足することなく前に進むこと。より高いところを目指して突き進むことだと思う。

――そのために必要なことは?

藤田俊哉 チャレンジし続けることじゃないかな。新しい挑戦を避けていたら、それ以上の成長は望めない。より良いものにするために必要なのは何か。それを考えながらトライし続けることが大切なんじゃないかと思う。

――なるほど。

藤田俊哉 日本は世界のトップじゃないですからね。先を走っている国がたくさんあるわけで、それがある以上は立ち止まっていられない。そういう意識を失わずにチャレンジし続ければ、50年後、もしかしたら日本が世界のトップに立っているかもしれないよ。可能性はゼロじゃない。

――藤田さん自身もこの秋に指導者として海外へ渡るという新しいチャレンジが控えていますね。

藤田俊哉 そうですね。自分に可能性があるなら、それに向かって何でもやってみる。やってみて初めて分かることがたくさんあるし、全力でぶつかることで得るものがあるから。それが僕のポリシーですね。

――日本サッカー界の未来を考えると、世界に通用する指導者を育成することも課題の一つであると思います。

藤田俊哉 そういう意味でも、岡田(武史)さんが中国で戦っていることに刺激を受けますよね。監督として海外で勝負する難しさって、言葉で表現できないほどのものがあると思うんですよ。この世界には経験した人にしか分からないことがたくさんあるから。

――藤田さんに続く形で海を渡る指導者が出てくるかもしれません。

藤田俊哉 そうなることを僕自身も期待している。Jリーグが開幕した頃に海外でプレーした人なんていなかったでしょ? でも今はすごく多くの日本人選手が海外でプレーしている。それと同じで、きっと20年後には指導者が海外で活躍する時代が来ていると思う。

――藤田さんが今後のJリーグに期待することを教えてください。

藤田俊哉 僕らはJリーグに育ててもらったようなものだから、これからも多くの選手を育てるリーグであってほしいと思いますね。期待というか、Jリーグがこれからどんなリーグに成長していくのか、僕は本当に楽しみにしている。この20年間で、Jリーグの認知度は飛躍的に上がったでしょ? これを“認知”から“生活の一部”に変えれば、やがて文化になる。海外のリーグもそういう歴史をたどってきたんだと思いますよ。Jリーグはものすごいスピードで成長を遂げてきたリーグだから、これからもこの勢いを失っちゃいけないですよね。未来を作るのはものすごく難しい。でも、それが一番面白いんじゃないかな。

――最後に日本のサッカーファンにメッセージをお願いします。

藤田俊哉 皆さんもよくご存じのとおり、日本のサッカーは着実にレベルアップしています。だから僕たちは自信を持っていい。だけど、僕たちにはもっと高いところを目指せる、成長できるポテンシャルがある。サッカーという文化は選手や監督だけが作るものじゃなくて、ファンやサポーターを含めたすべての人が一緒になって作るものだと思うんですよ。だからみんなで力を合わせて、Jリーグの価値、日本サッカーの価値、それからスポーツの価値を高めていけたらいいですね。

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