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エンターテインメント化する移籍市場…移籍金高騰の舞台裏に迫る

2013.09.22

[ワールドサッカーキング1003号掲載]

史上最高額の移籍金が動いたとされるギャレス・ベイルを筆頭に、この夏は高額の移籍契約が次々と決まった。移籍金の高騰は今だけの一時的な現象なのか、それとも……。高移籍市場が大きく変容している背景を分析する。
ベイル
文=スコット・シールズ Text by Scott SHIELDS
翻訳=影山 祐 Translation by Yu KAGEYAMA
写真=ゲッテイ・イメージズ Photo by Getty Images

目的が判然としない高額移籍の増加

 ギャレス・ベイル、エディンソン・カバーニ、ラダメル・ファルカオ。この夏、最もフットボールファンの注目を集めたのは、天文学的な額面の移籍金で新天地へ渡った選手たちだった。今や夏の話題と言えば移籍のことばかりで、従来ではあり得ないほど高額の移籍金が動くケースも珍しくなくなってきた。と同時に、スポーツ的な観点から見て理解し難い移籍が増えてきたことも事実だ。

 例えばメズート・エジルは推定4240万ポンド(約63億6000万円)の移籍金でレアル・マドリーからアーセナルに加入した。だが、その金額があれば、どう見ても頭数の足りない最終ラインに即戦力のDFを3人は獲得できたはずだ。エジルがいかに素晴らしいプレーヤーだと言っても、DFが足りないチームがMFの獲得に4240万ポンドも費やすことが、賢明な選択かどうかは疑わしい。そして、同じ謎はベイルやカバーニにも共通している。要するに、目的が判然としないのだ。

 一方で、そういった謎と無縁のクラブもある。バイエルン、ドルトムント、バルセロナといったクラブは、最高級の選手をチーム戦術に合わせてプレーさせることで成功してきた。実際、開幕前にバイエルンが獲得したマリオ・ゲッツェやチアーゴ・アルカンタラは、新指揮官ジョゼップ・グアルディオラが獲得を望んだ新戦力だった。

 それに比べると、明らかにFWが不足してMFが余っている状況で、ギャレス・ベイルに史上最高額の移籍金を払ったレアル・マドリーの補強策は、戦術よりもエンターテインメントを優先したと言わざるを得ない。

移籍金の額が宣伝効果につながる

 高額の移籍金にはもっともな理由がある。リーグ・アンに復帰したモナコにとって、各クラブが争奪戦を繰り広げていたファルカオを射止めること以上に効率良くクラブを宣伝する方法があっただろうか? 自分たちは最高のタレントを引きつけ、およそ5000万ポンド(約75億円)もの移籍金を支払い、巨額の報酬を約束するビッグクラブであると世間に示したのだ。マンチェスター・シティが5年前、ロビーニョを使ってやったのと同じことだ。

 移籍市場の動きが大きな注目を集める現在、高額選手の獲得は絶大な宣伝効果を発揮する。より注目を集めたいなら、より移籍金の高いプレーヤーを選べ。選手のポジション? そんなものはどこだっていい――こうした論法が、高額移籍金を正当化する。

 パリ・サンジェルマンは、リーグを制した今も同じ手法に固執している。確かに昨シーズン、ズラタン・イブラヒモヴィッチを獲得した宣伝効果は抜群だった。だが、エセキエル・ラベッシとルーカス・モウラ、ジェレミ・メネズがいるチームに、カバーニを加えてどうするつもりなのだろうか? あえて獲得に踏み切った理由は恐らくたった一つ。そう、移籍金がとんでもなく高かったからだ。

 そんな流れに伴って、ファンの反応にも変化が生じている。必要な人材がそろい、チームとしてうまく機能しているにもかかわらず、積極的に補強をしないクラブの姿勢を非難するファンは大勢いる。嘘だと思うならTwitterで確かめてみるといい。

 昨夏、マンチェスター・ユナイテッドが契約した香川真司は、それまでチームに不足していた創造性を補うという点で理にかなった新戦力だった。だが驚くべきことに、一部では香川が「わずか」1800万ポンド(約27億円)の選手だということに不満をぶちまける声があった。優秀な選手を安く手に入れることができたのなら、本来なら称賛されるべきなのだが……。

戦術よりもエンターテインメント性を優先した選手補強。大型投資には宣伝効果を生み出すこと以外にも目的があった……。本文の続きは、ワールドサッカーキング1003号でチェック!

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