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ジーコ「日本は、独自にサッカーの発展を模索してきたことに自信を持っていい」

2013.09.17

Jリーグサッカーキング 10月号 掲載]
Jリーグの発展に大きく貢献し、まさに「伝道師」となったジーコ。1991年に住友金属で現役復帰し、鹿島アントラーズと日本サッカー界に「プロ意識」を植えつけてくれた彼の目に、Jリーグが歩んできた20年間はどのように映っているのだろうか。日本は、独自にサッカーの発展を模索してきたことに自信を持っていい。
ジーコ
インタビュー・文=増島みどり 写真=兼子愼一郎

――ジーコが日本代表監督を務めた2006年のW杯から早くも8年になろうとしています。この間の代表をどうご覧になりますか。

ジーコ Jリーグ同様、成長を続けている。私が指揮した当時は、ヨーロッパに移籍する選手が多く出たものの、彼らが必ずしも試合に出られるポジションを与えられているわけではなかった。国内でプレーすれば非常に高い技術とメンタリティーを持った選手たちが、ヨーロッパではベンチにいるような状況は難しいものだった。しかし今は、所属するビッグクラブでポジションを得た選手たちが、代表を形成している。個人のポテンシャルは向上しているが、一方で、世界のベスト10に入るような国と真剣勝負の中でどこまで戦えるか。チーム力のレベルアップが課題という点では、私の時代もザッケローニ監督も変わらないのではないか。プロリーグが始まってわずか20年の国のサッカーが、W杯に5大会連続で出場を果たし、アジアで圧倒的な力を築いた事実に、世界中が驚いているのは間違いない。

――ジーコが初めて代表に呼んだ選手たちが今も活躍しています。

ジーコ そのことをとてもうれしく思っている。私が初めて代表に招集した遠藤(保仁)はAマッチ最多出場記録を更新し、長谷部(誠)はキャプテンで、2人がボランチとしてチームの中心を動かしている。今野(泰幸)は守備の要、両サイドをこなせる駒野(友一)もベテランになった。今は代表ではないが、FWの佐藤(寿人)、大久保(嘉人)、柳沢(敦/代表合宿への初招集は98年の岡田武史監督)は、私の代表で招集したFWだ。彼らが長いキャリアを築き、Jリーグの歴史を刻む100ゴールを達成し、日本を代表するストライカーにまで成長した。若さや一過性の活躍で選ばれた選手ではなく、その後の日本代表を長く背負っていく人材であったこと、それをこうして証明してくれていること、これも代表監督を務めた自分にとって代えがたい誇りだ。彼らと今どこかで偶然会ったら、楽しかったと握手できるはずだ。

――その日本代表は、先のコンフェデ杯でブラジルと対戦しました。

ジーコ ブラジルとの試合は、日本にとって厳しいものになってしまった。スケジュールの問題から、万全の準備が整っていないまま試合に入り、終わってしまったようなゲームだったのではないか。同時に、私が代表監督を務めていた頃と同様に、南米サッカー特有の個人の創造性、高い技術に苦戦しているようにも見えた。もちろんネイマールたちは世界でも特別な存在だが、組織力を誇る日本が苦手とする個人の創造性や技術、想定外のプレーで主導権を奪うといった、南米の独特の試合運びにどう対応するのか、来年に向けた課題の一つになるはずだ。ザッケローニ監督はとてもいい仕事をしている。ブラジルに負けたことを悲観することなどないし、今回もそうだったように、ブラジル国民はW杯で日本を後押しするはずだ。私も楽しみにしているよ。

――これからのJリーグに何を期待しますか

ジーコ この20年の進化と同じ速度で進化を続けてほしいということだ。Jリーグだけではない。プロリーグ発足の大きな動機だったW杯出場、W杯の自国開催、育成年代の世界大会など、様々な場面で日本サッカー界の存在感は増す一方だ。日本ではよく、欧米ではこうだ、といった比較をすることがあるが、必ずしも重要ではない。なぜなら日本は、独自にサッカーの発展を模索してきたからだ。そのことに自信を持っていいと思う。

――具体的には?

ジーコ この20年間、多くの選手がヨーロッパのビッグクラブに行くことが叶った。さらに多くの選手がそこで絶対的な存在感を築くこと、あるいは日本の指導者が海外のクラブで指揮を執ることも、発展の一つの指標になるかもしれない。とにかく、これまでがそうだったように、日々のリーグ戦の90分を懸命に戦うしかない。鹿島もタイトル数に満足してはいないだろう。進歩を遂げたからといって、Jリーグは決して近道をしたのではなく、他国が歩んだのと同じ苦難の歴史をその勤勉さ、向上心によって全速力で駆け抜けたというべきだ。私がJリーグの立ち上げに関わり、日本人とともに仕事をしたことがその歴史の一部であるならば、本当に光栄の一言に尽きる。両国の関係が本当に素晴らしいものであることを、来年のW杯で日本代表は身を持って体験するはずだ。今までの歩みを止めないでほしい。そうすれば次の20年もきっと素晴らしいお祝いができるはずだ。

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