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『フィジラボ powered by miCoach』の活用で広がるフットボールの可能性

2013.08.30

MUNICH, GERMANY - APRIL 23: Arjen Robben of Bayern Muenchen celebrates scoring the third goal during the UEFA Champions League Semi Final First Leg match between FC Bayern Muenchen and Barcelona at Allianz Arena on April 23, 2013 in Munich, Germany. (Photo by Alex Grimm/Bongarts/Getty Images)

FC Bayern Muenchen v Barcelona - UEFA Champions League Semi Final: First Leg
[写真]=Getty Images

 世界有数のビッグクラブやナショナルチームをサポートし続けるアディダスが、「戦術・技術」、「メンタル」、「フィジカルフィットネス」というフットボールに欠かせない要素の中で、今後のフットボール界で重要だと捉えているのが「フィジカルフィットネス」の強化だ。欧米諸国でも、イタリアのACミランやオランダのアヤックス、イングランドのチェルシー、スポーツデータを重要視するアメリカのメジャーリーグサッカーに所属するほとんどのクラブが、アディダスの『miCoach SPEED_CELL™』を始めとするデバイスを活用し試合中に計測したデータ(フィジカルフィットネスデータ)をトレーニングに活用している。現在、フットボールにおける「データの活用」が世界のスタンダードになりつつあるが、そもそもフットボールにおいて、「データ」とはどういった意味を持つのだろうか。

 『miCoach SPEED_CELL™』のデータをプレータイプ分析やトレーニングプランに活用できるウェブサイト『フィジラボ powered by miCoach』をアディダスと共同で開発したスポーツデータマネジメントの専門集団、CLIMB Factory 株式会社の馬渕浩幸代表取締役のプレゼンを引用しながら説明しよう。

 ここでは、2013年4月に行なわれたUEFAチャンピオンズリーグ準決勝第1戦のバイエルン・ミュンヘルン対バルセロナの戦いから「データ」の意味を紐解いていく。前提として、昨シーズンのバイエルンのブンデスリーガのデータを示しておくと、彼らはホームゲームで62パーセント、アウェイゲームで59パーセントのボール支配率を誇り、さらにリーグ1位のパス本数、そしてパスの総本数に対する選手の走行距離もリーグで最も短い。これは人よりもボールがよく動いていることを意味する。つまり、バイエルンは現代フットボールを象徴するような「パスサッカー」を主体とするチームだということだ。

 ただ、この試合のデータはそれとは大きく異なる。

■ポゼッション
バイエルン33% バルセロナ66%
■パス本数
バイエルン354本 バルセロナ694本
■パス成功率
バイエルン71% バルセロナ86%

 4―0でバイエルンが制した試合であるにも関わらず、数値上で圧倒していたのは敵チーム。しかし、実際の試合内容と照らし合わせて考えると、ボール支配率ほど敵チームはチャンスを作っていない。つまり、バイエルンが「あえてボールを持たせながら組織的に守ってチャンスを与えず、逆に自分たちのチャンスとなれば一気に攻撃へと転じてそれをものにした試合」と見ることができる。それを裏付けるデータがある。

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※データはCLIMB Factory 株式会社調べ

 74分、バイエルンがアルイェン・ロッベンのゴールで3―0とした場面。ロッベンは、自陣のペナルティーエリアから最高時速30キロのダッシュで90メートルほどを駆け上がってゴールを決めている。試合終盤にこのパフォーマンスを発揮できることも驚異的だが、70分から75分のバイエルンのボール支配率は20パーセントに満たない。つまり、いかに一瞬のチャンスを逃さなかったかが示されている。また、GKのマヌエル・ノイアーはこの試合でチーム6番目に多いパスのレシーブ本数(パスを受けた回数)を記録しているのだが、この数値から、バイエルンが劣勢の中でいかに自陣でボールを回していたかが分かる。

 選手個々のデータに注目してみると、トマス・ミュラーが優れた数値を示した。ミュラーは、リーグ戦の平均で(時速16キロ以上の)スプリント数71本、走行距離約9.6キロ、最高速度約28.7キロを計測しているが、この試合ではスプリント数92本、走行距離約11.2キロ、最高速度約30.1キロ。つまりミュラーは、この試合で数値上では普段よりも優れたパフォーマンスを見せているのだ。
(目安として、時速16キロは50メートルを約11秒、時速30キロは約6秒で走る計算になる)

 もう一つバイエルンには特筆すべきデータがある。昨シーズンのリーグ戦では、チーム合計走行距離は18チーム中16位、チームの平均走行速度も15位と、必ずしも長い距離を、速いスピードで走っていたチームではない。ところが、走行距離に対するスプリント数(時速32キロ以上のダッシュ)の割合、高強度のダッシュ(時速26キロ以上のダッシュ)のうちスプリント数が占める割合は、18チーム中1位を記録している。

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※データはCLIMB Factory 株式会社調べ

 つまりバイエルンは、短く効率的なダッシュを繰り返し、かつそのダッシュのスピードが速い。こうしたデータと実際の試合内容を踏まえると、この試合を「組織的な守備、速攻を主とした攻撃、それらを選手たちのフィジカルフィットネスによってもたらした勝利」と分析することができるのだ。

『フィジラボ powered by miCoach』の持つ可能性

 現在、海外の強豪チームはもちろんのこと、国内でもトップチームである横浜F・マリノス、横浜F・マリノスユースや夏の全国高校サッカー大会で決勝にも進んだ流通経済大学付属柏高校など、多くの強豪校でもすでに『miCoach SPEED_CELL™』を通してデータの活用を進めている。そして、そのデータをトレーニングにも活用すべく開発されたのが『フィジラボ powered by miCoach』。このウェブサイトでは以下のような活用方法が示されている。

 まず、用意された設問に答えることで、自分がどんなプレーヤーなのかをフィールドプレーヤー(GK除く)の12タイプに分類されたプレータイプから示し、トッププレーヤーではどの選手に当てはまるのかを診断してくれる。さらに、『miCoach SPEED_CELL™』で収集した数値を入力することで『miCoach SPEED_CELL™』のデータを偏差値化しトッププレーヤーとの数値の比較もできるのだ。

 そして、この『フィジラボ powered by miCoach』を使いプレーヤーに目指してほしいのは、それぞれが自分に応じたトレーニングを実践することでフィジカルフィットネスを改善し、その能力を引き上げていくことだ。

 『miCoach SPEED_CELL™』で示されたデータが何を意味するのか――例えばそれが良いデータなのか、悪いデータなのか――は、単純なデータの多寡では分からない。自分のプレータイプや所属チームの戦術などによってもその数値の意味が異なってくるからだ。例えば走行距離が短いからといって、持久力を鍛えて走る距離を増やせばいいということにはならない。数値を参考にしながら、自分自身、もしくは指導者と一緒に考えてトレーニングを行なうことが必要になる。

 フットボールのデータ活用は、『フィジラボ powered by miCoach』の登場によって、それを用いて自身のことを理解し、そこからトレーニングへと発展させるところまで進化してきている。これはトッププレーヤーのみならず、一般のプレーヤーでも活用できるツールだ。よりトップに近いカテゴリーのプレーヤーにとっては、データの活用でトレーニングの幅が広がり、自身のフィジカルフィットネスを効率的に強化していける。

 そして、冒頭の「データとは何なのか?」という問いに対して馬渕氏は次のように語っている。「データとは、起きた現象を説明するコミュニケーションツール、ヒント。実際に起きた現象の説明にデータが加わることでより理解が深まることがある。例えば、『あの選手は速い』とか、自分が『速く走れている』という感覚にデータが加わると新たなコミュニケーションが生まれる。指導者、もしくはフットボールをやる人、やらない人を問わずにツールとしてデータが使われるようになることを望んでいる」。馬渕氏は、より多くの人にフットボールを身近に感じてもらえることを期待し、そのために不可欠な要素としてデータとその活用例を挙げてくれた。

 現代フットボールの潮流を考えても、この先データの重要度が増すことは間違いないだろう。その意味でも、簡単にデータを取り入れられる『miCoach SPEED_CELL™』と、この『フィジラボ powered by miCoach』は今後のフットボールの可能性を広げる革新的なシステムだと言える。
 近い将来、いち早くデータをモノにできたチーム、選手が飛躍的な躍進を遂げることは間違いない。

miCoach SPEED_CELL™のデータを活用した次世代フットボールサイト「フィジラボ powered by miCoach」がスタート! キミのプレータイプを診断・分析し、フィジラボがオススメするトレーニングで効果的にフィジカルを鍛えよう! 

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