2013.08.15

バルサ退団の理由を明かすビージャ「チームの主役だと感じられなくなった」

[ワールドサッカーキング0905号掲載]

バルセロナという「偉大なクラブ」に別れを告げ、ダビド・ビージャはロヒブランコを選んだ。彼は言う。「不可欠な選手であると感じていたかった」と。バルサで味わった不遇の時。自らの“価値”を証明すべく、彼は歩み出す。譲れぬストライカーの矜持。ビージャがその胸中を明かす。
Atletico Madrid Training Session
インタビュー・文=ホセ・フェリックス・ディアス Interview and text by Jose Felix Diaz
翻訳=高山 港 Translation by Minato TAKAYAMA
写真=ゲッティ イメージズ Photo by Getty IMAGES

「愛されたい」

 シーンを恋愛に置き換えれば、“決別の訳”は、自らの存在意義に求められる。クラブの偉大さよりも重要なこと。それが彼を新たなチャレンジへと突き動かした。

 ブラジルの“新星”獲得に沸くバルセロナを離れ、たどり着いたのはエースを失ったマドリッドの名門クラブ。

 使命も目標もシンプルだ。エースの穴を埋め、自らの存在意義を証明すること。

 ダビド・ビージャが新たな挑戦への決意を語る。

決断を下さなければならない時がある

――改めて移籍の話を聞こう。バルセロナを離れるという決断は簡単な決断ではなかったのではないかな?

ビージャ もちろん簡単ではなかったよ。ただ、人生には決断を下さなければならない時がある。僕にとって、今回がその時だったと思うんだ。バルサは偉大なクラブだ。この数年間、世界で最も多くのタイトルを手にしたクラブだし、世界のトップにいるチームだ。でも、自分の将来を決める上では、クラブの偉大さよりも重要なことがあると僕は思っている。僕はサッカー選手として常にプレーしたかった。レギュラーポジションを手にしたかった。チームの中で不可欠な選手であると感じていたかった。残念ながら、バルサでは自分が不可欠な選手だと感じることはなかった。

――バルサでプレーした3年間を振り返ってもらえるかい?

ビージャ 誰もが知っているように、僕はバレンシアでの実績を手にバルサに入団した。バルサに比べると、バレンシアは、すべてにおいて小さなクラブだった。いきなりの“本物のビッグクラブ”でのプレーに面食らったことは確かさ。ただ、バルサのサッカーにも、バルセロナの街にも、すぐに順応できたと思っている。1年目は最高の年になった。チャンピオンズリーグ(CL)で優勝できたことは大きな喜びだった。チームが優勝したということだけでなく、自分が優勝に貢献できたことが重要だった。1年目のシーズン、僕はチームの主役の一人になっていた。もちろん、試合に出られない時もあったけど、監督が僕を必要としてくれていると信じていた。自分がチームに不可欠な存在だと思っていたのさ。でも、2年目のシーズンを前にした夏のキャンプで何かが変わり始めていた。自分がチームの主役だと感じられなくなったんだ。実際はどうだったか分からないけど、少なくとも、そういった疑いを感じていたことは本当だ。バルサが僕を放出するのではないかといううわさが流れ始めていた。僕はバルサでずっとプレーしたいと思っていた。当然、移籍のうわさは気になったよ。そして、その年の12月に、僕にとって最悪の事態が生じたんだ。クラブ・ワールドカップでケガをしたことさ。横浜でのケガですべてが終わった。そんな感じだった。何とかユーロ(2012)に間に合わせようとしたけど、リハビリは思ったようには進まなかった。そして、迎えたバルサでの3シーズン目、僕の出番は著しく減少した。ケガの影響があったことは認める。でも、何かが確実に変わってしまっていた。特に重要な試合では、ベンチを温めることが多くなった。次のシーズンは更に状況が悪化するだろうと思った。だから、バルサを出て行くという決断を下したのさ。

――バルサでの3年間で最も幸せに感じた瞬間は?

ビージャ CL優勝を体験できたことだよ。CLはどの選手にとっても特別な大会なんだ。ウェンブリーで行われたマンチェスター・ユナイテッドとの決勝で、チームの3点目のゴールを決めてバルサの優勝に貢献できたことは最高の思い出になった。

――では、逆に最悪の瞬間は?

ビージャ やっぱり、ケガだろうね。横浜でのケガで僕のサッカー人生が大きく狂ってしまった。バルサでの出場機会を失っただけじゃない。結果的にユーロも欠場することになってしまった。これまでのキャリアで最もつらい出来事だったよ。

――バルサを出たことに後悔はないのかな?

ビージャ 繰り返すけど、バルサは素晴らしいチームだ。「最高の選手が集う最高のクラブ」だと今でも思っているし、あのチームで常に出場機会を得るのはとても難しいということも理解している。ただ、昨シーズンはもう少し出番を与えられてもよかったのではないかと考える自分もいる。自分はもっとできたはずだ。今でもそう思っているよ。

タイトル争いに加わりたい

――アトレティコ・マドリーにはどんな印象を持っていた?

ビージャ アトレティコは昔も今も、そしてこれから先も、スペインサッカー界のリーダーの一角だ。特に、この2、3年は、かつての輝きを完全に取り戻している。僕自身、常に「強いアトレティコ」というイメージを持っていた。現時点ではスペインで3番目に強いチームだろう。それから、カップ戦で圧倒的な強さを発揮するクラブという印象もある。ヨーロッパリーグで2回の優勝経験があり、昨シーズンはコパ・デル・レイを制した。この結果が、アトレティコのレベルの高さを物語っていると思う。それに、アトレティコのファンの情熱にはいつも感心していた。スペインでも最もクラブに忠実なファンだと思うよ。彼らのロヒブランコ(A・マドリーの愛称)への忠誠心には頭が下がる思いだ。長い間、チームがタイトルから遠ざかっても、ここのファンはいつもチームを支えている。本当に素晴らしいことだと思う。

――今シーズン、アトレティコはバルサやレアル・マドリーと優勝を争えるかな?

ビージャ アトレティコは、昨シーズン、バルサと一時期、首位争いを演じていたけど、最後の最後まで優勝争いを繰り広げるというところまでは行けなかった。今の段階で言えば、バルサとマドリーの2強と、シーズンを通じて対等に戦えるチームは残念ながら存在しない。アトレティコに限らず、他のチームにとっては、カップ戦での優勝を狙うほうが現実的な目標になるんじゃないかな。アトレティコにとっても、リーガで優勝するよりもCLを制覇するほうが“現実的な目標”になるということさ。

――バルサとマドリーの2強体制を崩すのは、やっぱり難しいということだね?

ビージャ 少なくとも、その2チームに対して、他の全チームが最高のプレーをする必要がある。ただ、全18チームでバルサとマドリーの包囲網を張ったとしても、2強体制を崩すのは難しいだろう。とはいえ、もちろん黙って白旗を上げるつもりはないよ。昨シーズンの戦いぶりを見れば、アトレティコが2強に迫っていることは間違いない。クラブの経済力には大きな差があるけど、選手のレベルやファンの情熱においては、ほとんど差がないと僕は見ている。アトレティコは偉大なクラブだ。今シーズン、それをピッチ上で証明してみせるよ。

――アトレティコは君が想像していたとおりのチームだった?

ビージャ 入団発表の時、ビセンテ・カルデロンには2万人以上のファンが詰め掛けてくれた。多くの選手が「アトレティコのファンは最高だ」と言っているけど、まさにそう感じたよ。クラブスタッフに聞いた話だと、入団発表にあれだけの人が集まったのは初めてのことらしい。アトレティコにとって重要な選手の一人だと認められていることを、すごくうれしく思った。

――今のチームについて、君の評価を教えてもらえるかな?

ビージャ 昨シーズンはバルサ、マドリーに次ぐ3位。そして、決勝でマドリーを下し、コパ・デル・レイを制したチームだ。毎年、着実に強くなっているという印象があるけど、そこに僕が加わったことでチームが更に成長することを願っているよ。そして、リーガでもカップ戦でもタイトル争いに加わりたいね。

バルセロナ退団を決意し、活躍の場をアトレティコに移したビージャ。新天地での復活に意気込むとともに、リーガの優勝争いにも言及。インタビューの続きは、ワールドサッカーキング0905号でチェック!