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香川はマンチェスター・Uの希望になれるのか? 2年目に求められる明確な答え

2013.08.12

現地記者が香川の2年目を展望

[ワールドサッカーキング名鑑・開幕版掲載]

魔法のようなプレーで、一瞬でゲームの流れを変えられる――。それが、現地記者の目に映る香川真司という選手のポテンシャルだ。プレミア2年目の今シーズン、香川はその能力を発揮できるか。
香川真司
文=デイヴィッド・マクドネル Text by David MCDONNELL
翻訳=栗原正夫 Translation by Masao KURIHARA
写真=アフロ Photo by AFLO

不本意な結果に終わったデビューイヤー

 2012年夏、ドルトムントから1700万ポンド(約25億5000万円)で加入した香川真司は、マンチェスター・ユナイテッドでのデビューイヤーを何とか乗り越えた。ただ、ドルトムントでブンデスリーガ連覇を果たし、鳴り物入りでマンチェスターへやってきた香川の実力を持ってしても、初挑戦となったプレミアリーグでは期待に見合う活躍ができなかった。

 ひざの故障で10月末から12月末までの2カ月間も戦列を離れたことが、足かせとなったのは間違いない。復帰後も彼本来のキレのある動きを取り戻すまでに時間を要した。結果的には20試合に出場し、6得点4アシストを記録したが、それは本人にとってもファンにとっても決して納得できる成績ではなかった。

 香川はユナイテッドの新たな希望となり得るのか――。2年目の今シーズンは、その問いに対する明確な答えが求められる。しかし、凱旋帰国という名目で参戦した日本ツアーはマーケティングの観点から不可欠な“戦力”として貢献したものの、そのパフォーマンスは決して満足できる内容ではなかった。

 横浜F・マリノス戦とセレッソ大阪戦を見る限り、彼のコンディションは新シーズンに向けて万全と言えるものではなかった。横浜では途中出場を果たしたものの見せ場を作れず、大阪でもゴール以外に“らしさ”を見せるシーンはなかった。この試合では後半途中にライアン・ギグスと交代したが、自国のスタープレーヤーを見るためだけにスタジアムに足を運んでいた日本のファンたちはこの交代に肩を落としたに違いない。香川の凱旋ツアーは、本人にとっても、日本のファンにとっても消化不良に終わった。

 この2試合を終えた後、新指揮官のデイヴィッド・モイーズは続く香港ツアーに香川を帯同させないことを発表し、疲労感漂う日本のエースに1週間の休暇を与えている。ちなみにこの休暇は香川だけが特別に与えられたわけではなく、チームが全選手に保証している4週間の休暇を利用したものである。シーズン終了後すぐに日本代表に合流し、ブラジルで行われたコンフェデレーションズカップに参戦した香川には十分な休息が必要だった。ただし、この1週間の“出遅れ”を取り戻すのは恐らく簡単ではない。プレミアリーグ連覇を懸けたユナイテッドの新シーズンは8月17日、スウォンジーとのアウェーゲームで幕を開けるが、香川がこのゲームでスタメンに顔を並べる可能性は限りなく低い。

 来る2013-14シーズンが香川にとって勝負の年になることは間違いない。8月に入ってもウェイン・ルーニーの残留は不透明なままで、ロビン・ファン・ペルシーの背後に位置するトップ下のポジションは依然として空位。周知のとおり、香川自身が強く望み、昨シーズンは何度か印象的なパフォーマンスを示しているポジションである。だからなおさら、開幕からどれくらいの期間を経てベストコンディションに到達させられるかどうかが2年目のシーズンの明暗を分けるはずだ。

ユナイテッドの中盤に創造性をもたらす仕事

 アレックス・ファーガソン前監督の下、昨シーズンの香川はサイドで起用されるケースが多く、攻撃面で相手の脅威になるという意味ではややもの足りなかった。個人的には、モイーズ体制下で彼自身が最も得意とするトップ下のポジションが与えられれば、ユナイテッドの主力として本来の躍動感を取り戻す可能性があると考えている。彼のスピードとしなやかなボールタッチ、視野の広さ、相手を欺く駆け引きのうまさといったポテンシャルに疑いの余地はない。モイーズも「シンジと一緒に仕事ができてうれしい」と話しており、日本人アタッカーに大きな期待を寄せている。

「シンジがどんなプレーヤーなのか、多少は知っているつもりだ。彼がどれほどいい選手なのか、サー・アレックスが熱弁を振るってくれたからね」

 懸案は香川のコミュニケーション能力である。カタコトの英語しか話せないのは彼の人となりを深く知ることができないという意味で、イングランドのメディアだけでなくサポーターにとっても大きな悩みの種になっている。彼がインタビューを受けることは極めて稀で、たまに受けても通訳を介するため要領を得ないまま時間だけが過ぎる。ただし、そうしたコミュニケーションの問題について、モイーズはそれが大きな問題になると考えていないようだ。「私も日本語を学ぼうとしているし、シンジも私のスコットランドなまりの英語を理解しようと頑張ってくれているよ」とジョーク交じりに説明しており、こう言葉を続けた。

「昨シーズンは彼にとってプレミアリーグへの初挑戦の1年だった。まだ若い選手だし、さらに成長を続けてくれるとうれしい。一緒に仕事ができるのを楽しみにしているし、新シーズンでの飛躍を期待しているよ」

 チアーゴ・アルカンタラの獲得に失敗したユナイテッドは現在、セスク・ファブレガスの獲得交渉を続けている。モイーズの意図するところは攻撃オプションの増加だが、そうした補強方針が香川の出場機会に影響するとは考えにくい。

 セスクに求められるのはマイケル・キャリックと組んで中盤の低い位置から攻撃を組み立てることで、相手ゴールに近いエリアでのプレーを期待されている香川の役割と重なる部分は少ない。モイーズはイングランドの伝統的スタイルである4-4-2ではなく、最前線にファン・ペルシーを配置した4-2-3-1のフォーメーションを基本スタイルと考えているようで、香川は2列目のポジション争いに加わることになるだろう。

プレミアリーグでの2年目に挑む香川。ユナイテッドが香川に求める役割とは? 続きは、ワールドサッカーキング名鑑・開幕版でチェック!

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