2013.08.08

ブンデス4年目を迎える内田篤人、“淡々としたサムライ”の大きなチャレンジ

[ワールドサッカーキング名鑑・開幕版掲載]

内田篤人の存在がブンデスリーガで“ブーム”を作った。現地記者が分析する「ディフェンス版の香川真司」の4年目。最大のチャレンジに、淡々とした“サムライ”が挑む。
内田篤人
文=キム・デンプフリング Text by Kim DAEMPFLING
翻訳・構成=EIS Translation and Organisation by EIS
写真=アフロ Photo by AFLO

ドイツでの内田は「ディフェンス版の香川」

 内田篤人のシャルケでの安定感のあるプレーは、近年のブンデスリーガにおける“日本人サイドバックブーム”に大きく貢献した。彼の存在がなければ、その後にドイツ移籍を果たした酒井高徳(シュトゥットガルト)や酒井宏樹(ハノーファー)らも、実力とは別の次元で声が掛からなかったかもしれない。そういう意味で、内田は「ディフェンス版の香川真司」と呼べる存在だ。香川は乾貴士(フランクフルト)や清武弘嗣(ニュルンベルク)ら、彼の後に続くことになる日本人の攻撃的MFにブンデスリーガへの扉を開いた。内田の場合も同様、彼が2010年に渡独するまで、ドイツサッカー界で日本人選手がサイドバックとして活躍できると考えた者は、片手で数えられるほどもいなかったはずだ。

 もっとも、昨シーズンの内田は負傷欠場が続き、今シーズンはスタメンの座を確保できるかが危ぶまれている。パフォーマンスの波がほとんどないとはいえ、負傷の影響もあり、パフォーマンスのレベルが少し落ちてきていることは否めず、それに対してクラブが不安を抱いているのは確かだ。その証拠に、これまでずっと右サイドバックに定着していた内田のレベルを再度上げる狙いもあり、シャルケはライバルとなる新たな選手の獲得によって内田にプレッシャーをかけるプランを持っていた。その第一候補がフルアムに所属するサーシャ・リーターだ。しかし、リーターの獲得は移籍金がネックとなり合意には至らなかった。

 これは内田にとって朗報だったとはいえ、油断はできない。ブンデスリーガでの豊富な経験を持つ30歳のサイドバックが相手でなくなっただけであり、内田にとっては他にもポジションを争うライバルがいる。レンタル先から復帰したティム・ホークラントと、こちらは昨シーズン同様だが、マルコ・ヘーガーも内田の強力なライバルだ。

 コンフェデレーションズカップに参加した内田には、プレシーズン前半に特別休暇が与えられたが、その間に行われたプレシーズンマッチでは、内田の代わりにホークラントが右サイドバックを務め、安定したプレーを披露。イェンス・ケラー監督もプレーを絶賛した。

大切なシーズンに“淡々”と挑む

 と、ここまでは日本の読者の皆さんを不安にさせる言葉を連ねてきたが、リーター獲得が実現しなかったことで、最終的には内田が右サイドバックのスタメンに定着する可能性は高いと思う。理由は簡単だ。今のシャルケには内田以外に本格的な右サイドバックがホークラントしかおらず、そのホークラントにしてもプレシーズンでは好調を維持していたが、2010-11シーズン以降は故障が多く、長いリーグ戦で持続的に力を発揮できるかは未知数。もちろん、ヘーガー起用の可能性もあるが、サイドバックとしての適性を考えれば、内田に一日の長があることは間違いない。

 シャルケでの4シーズン目を迎える内田。今シーズンは彼にとって「最大のチャレンジの1年」になるかもしれない。昨シーズンは右サイドを実に効果的に駆け上がり、多くの決定機を演出した。第25節のルール・ダービーでは2つのアシストを記録し、勝利に貢献したことも記憶に新しい。ただ、攻撃に貢献する分、守備が“緩く”なってしまい、それが失点につながることも少なくなかった。今後はポジショニングやディフェンス面をもう一度改善する必要があるし、そうしなければチームのレベルも上がらない。シャルケはブンデスリーガのトップ3を目指しているクラブ。当然、首脳陣は「すべてのポジションのクオリティーを更に上げなければならない」と考えている。もちろん、勤勉な日本人サイドバックには、その心構えがあるはずだ。

 一方で、ポジション争いに関する内田の発言は実に彼らしいものだった。

「僕は自分のプレーをするだけ」

 いつものように淡々とシーズンへの思いを表現した内田にとって、今シーズンはブンデスリーガでも、チャンピオンズリーグでも、本人の望むとおり「プレーでアピールする」ことが重要になる。

 もっとも、彼のトレーニング姿を見ていると、内田は『最大のチャレンジ』も淡々とクリアしてしまうように思えてくる。ドイツで迎える4シーズン目、内田がどんな“サムライ魂”を見せてくれるかが実に楽しみだ。

最大のチャレンジを控える内田の、ブンデス4シーズン目に注目が集まる。海外日本人選手の新シーズン展望は、ワールドサッカーキング名鑑・開幕版でチェック!