文●田中 滋 写真●兼子愼一郎、LatinContent/Getty Images
日本に居ながらにして南米の強豪チームと対戦できるスルガ銀行チャンピオンシップは、Jリーグの選手にとっては貴重な経験が出来る場だ。しかも、今年の来日チームはサンパウロFC。そのルーツをブラジルに持つ鹿島アントラーズにとって、ジーコがいたフラメンゴほどではないが、関わることが多いビッグクラブだ。なにより両チームの監督同士が因縁を持つ。現在鹿島を率いているトニーニョ・セレーゾが現役時代に活躍したのがサンパウロであり、そのサンパウロを現在率いているのは、06年に鹿島の監督を務めていたパウロ・アウトゥオリなのだ。
パウロ・アウトゥオリは、当時高卒ルーキーだった内田篤人を開幕戦から大抜擢し、彼の飛躍を後押しした指揮官として知られる。そして、彼の教えを受けた選手もまだまだ多い。いまの主力で言えば曽ヶ端準、岩政大樹、青木剛、野沢拓也らが、その薫陶を受けた。
そのとき、まだ6年目と若かった青木は、「厳しい感じで、身振り手振りでアクションを起こす監督でした」と振り返る。まだ、自分のプレーに自信がもてなかったこともあり、プレーの切れ間にベンチを見てしまうと、激高している監督の姿が目に入り、さらに萎縮してしまったそうだ。
その厳格さを買われてか、全国選手権で18位(7月28日現在)と低迷する名門サンパウロを復活させるべく、シーズン途中に白羽の矢が立った。若手を大抜擢する以外にも、誰も予想しない方法でチームを立て直してくるかもしれない。攻撃的なサッカーを好む監督なだけに、その手腕と戦術には注目だ。
迎え撃つ鹿島も、現在、チームの質を高める作業の真っ最中だ。センターバックに足下の技術に優れた山村和也を据え、高い位置でバックラインを保ちながらビルドアップすることで全体をコンパクトに保とうと試行錯誤しているところだ。ラインを高くするとボールの失い方が悪いと、どうしてもCBが1対1を強いられることとなり、堅守を誇ってきた鹿島にしては珍しく失点の多いシーズンとなっている。しかし、セレーゾ監督は、ビルドアップの精度を高める作業を日々の練習でも強調し、小笠原や柴崎には「ひとつ前の位置で仕事をしてくれ」と注文を付けている。確かに、彼らの特長が最大限に発揮されるのは攻撃の場面、それもゴールの端緒となるパスだ。ゴールに近ければ近いほど回数は増えるため、彼らがどの位置でプレーしているかが鹿島の攻撃のバロメーターとなるだろう。
大会に先駆け、セレーゾ監督は次のように述べた。
「サンパウロFCにはガンソがいますけど、うちには柴崎がいますし、あちらにはファビアーノがいますが、うちには大迫がいます」
残念ながらファビアーノは来日しないが、両チームに花のある選手が揃った。互いに勝つ術を知り尽くした両チームなだけに、駆け引きがピッチのあちこちで見られることだろう。
「鹿島VSウニベルシダ・デ・チリ」観戦コラム
2013年8月7日(水)19:00キックオフ(予定)|茨城/県立カシマサッカースタジアム
鹿島アントラーズ(日本/2012Jリーグヤマザキナビスコカップ 優勝)
vs.
サンパウロ(ブラジル/コパ・ブリヂストン・スダメリカーナ2012 優勝)