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現地記者が指摘する「ネイマールがバルセロナで学ぶべきこと」

2013.08.06

スペイン人記者のヘラルド・ロハス氏が、ネイマールの課題を指摘

[ワールドサッカーキング0815号掲載]

新たに“コンフェデ杯王者”という肩書きを加え、鳴り物入りでバルセロナのメンバーに加わるネイマール。だが、現地記者は「新天地で学ぶべき」課題を指摘する。“ネイマール問題”の解決策とは、果たして――。
ネイマール
文=ヘラルド・ロハス Text by Geraldo ROJAS
翻訳=影山 佑 Translation by Yu KAGEYAMA
写真=ゲッティ イメージズ Photo by Getty Images

C・ロナウド問題とネイマール問題

 いわゆる“クリスチアーノ・ロナウド問題”は、そのままネイマールの問題に置き換えることができる。ともに素晴らしい選手であることに異論はない。飛び抜けたテクニックを有し、相手にとって危険極まりない加速力を備え、試合を一瞬で決定づける力を持っている。だが、ともにディフェンスへの意識は低く、対峙する相手のサイドバックを自由にさせてしまうことも少なくない。

 もちろん、C・ロナウドとネイマールには「勝者」というフレーズがよく似合う。しかし、彼らの存在が“正解のない戦術的な課題”を生み出していることも事実だ。両者とも――前者はレアル・マドリーで、後者はブラジル代表で――攻撃的サイドバックのマルセロから充分なサポートを得られていないことも付け加えておこう。

 2012年10月、ポーランドで行われた日本戦で、当時のブラジル代表監督マノ・メネゼスは画期的なアイデアを披露した。4-2-3-1のシステムでネイマールを最前線の“偽の9番”として起用したのだ。「3」の右サイドに配置されたフッキがネイマールよりも「守備的」とは言えないが、カカーとオスカルとともに構成された攻撃的な中盤には活気と規律が共存していた。結果は4-0の快勝。コンフェデレーションズカップでの3-0の勝利よりも見事な勝利だった。もっとも、ご存知のとおり、その後、メネゼスは解任。残念ながら、この“実験”も過去のものとなってしまった。

 オスカルの献身的な動きに加え、より守備的なサイドバックや、あるいはレアル・マドリーで逆サイドに位置するアンヘル・ディ・マリアの勤勉さに少なからず恩恵を受けているC・ロナウドのように、逆サイドにもっと守備的な選手が配置されれば、ブラジルはネイマールとともに更に輝くだろう。今のブラジルは、両サイドのスペースへの鋭いパスに対してあまりにも無防備であり、優秀なサイドアタッカーを擁するチームにカウンターアタックでサイドを切り裂かれるケースもそれほど珍しくはないからだ。

 もちろん、ダニエウ・アウヴェスやマルセロは悪い選手ではない。互いに所属するクラブがサイドバックに求める資質を完璧に満たしているし、D・アウヴェスは、過去数シーズン、バルセロナで極めて重要な役割を担ってきた。対戦相手がおのずと守備に人数を割くことが多いため、バルセロナのサイドバックにはスピードとテクニック、更にはスタミナが求められる。

 D・アウヴェスの後方のスペースについても、バルセロナのポゼッションがあれば大きな問題とはならない。仮にそのスペースを突かれたとしても、ジェラール・ピケが背後をカバーし、セルヒオ・ブスケがセンターバックのポジションに入ることで対応する形が“整備”されているからだ。そして当然ながら、この“整備”の点で、ブラジル代表と比較してバルセロナには一日の長がある。

W杯を制するのは守備的なブラジル

 スコラーリは、コンフェデレーションズカップに出場した2人の守備的MF、パウリーニョとルイス・グスターヴォに両サイドのカバーを任せている。そしてこの方法こそが、長きにわたりブラジル代表が基本としてきた4-2-2-2が最も機能する方法でもある。2人のアンカーと2人のゲームメーカーが必要に応じてサイドに開くことでピッチを広げたり、あるいは相手のサイドへの進出を食い止める形だ。

 一般的に「攻撃的」と表されるブラジル代表だが、実は過去30年間において、それは必ずしも真実ではない。ワールドカップ(W杯)を制するブラジルは、常にディフェンス面に長けていた。1994年、そして2002年にスコラーリの指揮下で優勝を果たした時も、ブラジルの本当の強みは守備的な中盤のコンビだった。94年のアメリカ大会ではドゥンガとマウロ・シウヴァが、02年の日韓大会ではジウベルト・シウヴァとクレベルソン(02年は3バックの貢献もあった)が該当する。94年にはジョルジーニョとブランコ(レオナルドの肘打ち後)、02年にはカフーとロベルト・カルロスらが両サイドを駆け上がる中で、中盤のペアがディフェンスに下がる、あるいはサイドバックが空けたスペースをカバーし、ブラジルに安定をもたらしていた。

 今のブラジル代表も中盤の人材自体は豊富だ。ジャンとフェルナンドはコンフェデレーションズカップで控えを務めたが、ラミレスやルーカス・レイヴァといった選手らは選ばれてすらいない。もっとも、今の中盤のペアがサイドのカバーにおいて十分なレベルに達しているかといえば、まだ物足りなさを残す。パウリーニョが頻繁に前線へと顔を出すことで、マンツーマンを採用する守備陣はその影響を少なからず受け、同時に最終ラインへの影響からオフサイドトラップに支障を来すケースも見られる。

ブラジル代表が抱える弱点は、国民の不安のみならず、ネイマールの将来に関する疑問にもなり得る。王国の未来を担うネイマールがバルセロナで学ぶべきこととは……。続きは、ワールドサッカーキング0815号でチェック!

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