WAYNE ROONEY
[ワールドサッカーキング0801号掲載]
その瞳には、誇りと自信が宿っている。いかなる強敵を前にしても「恐怖心を抱く必要はない」と言う。ウェイン・ルーニーの見据える未来には、輝かしい“栄光の道”が待ち構えている。
インタビュー・文=アンドリュー・マレイ Interview and text by Andrew MURRAY
翻訳=高山 港 Translation by Minato TAKAYAMA
写真=ゲッティ イメージズ Photo by Getty Images
このインタビューは、一つの“約束”の下で実施された。それは、「質問は代表に限ったもの」であること。監督が代わり、彼自身の去就も話題になっている微妙な時期であり、「クラブの未来を語るにはふさわしくないタイミング」という判断からだ。
純白のユニフォームに身を包み「どこが相手でも勝利を収める自信がある」と高らかに宣言するエース。ウェイン・ルーニーの言葉は、身にまとう色を“他の色”に置き換えても、栄光への決意に聞こえてくる。
俺はゴールを追い求めたい
――ロイ・ホジソンの下でプレーするのはどんな気分?
ルーニー 代表監督がイギリス人になって良かったと思っているよ。ホジソンを含め、スタッフ全員が英国人。彼らの間には母国イングランドのために、いい仕事をやり遂げようという強い意欲がみなぎっている。もちろん、その意欲は選手にも伝わってくる。俺たち選手は、監督やコーチの期待に応えたいと思っているし、ハードワークをして良い結果を出したいと強く願っているんだ。
――ホジソンはイングランド代表に何をもたらしたのかな?
ルーニー 経験値だ。彼はこれまでにいくつかの国の代表監督を務めている。クラブレベルでも多くの国で指導に当たっている。俺たちは豊富な経験を持つ彼の話を聞きたいのさ。そして、彼の考えをゲームに反映させたいと思っている。ホジソンはこの数年、プレミアリーグでチームの指揮を執っていたから、イングランドのフィジカル主体のサッカーの特質をよく理解している。その知識を、代表チームでの練習に活用しているんだ。彼は俺たちの長所を最大限に引き出してくれるだろう。それは選手にとって最も重要なことでもある。
――ホジソンは戦術面やプレースタイルに変化を求めた?
ルーニー この数試合、俺たちは1トップのシステムでプレーしている。みんなも知っているとおり、イングランド代表は基本的に4-4-2を採用してきた。でもホジソンは、前線を一枚にして、中盤の人数を増やしたんだ。これは特にアウェー戦で意味を持つ。多くのチームが4-5-1を採用して中盤をコントロールしようとしてくるからだ。中盤で数的に不利にならないように、俺たちも対応しなくてはならないのさ。
――君はホジソン体制になってから1試合平均1ゴールを記録している。自分の成績には満足しているかい?
ルーニー 大満足だよ(笑)。1トップは(マンチェスター)ユナイテッドでも何度か経験しているし、個人的にはとてもプレーしやすいと感じている。ターゲットマンとしてプレーする場合、前線でボールをキープする必要がある。ボールをキープしながら味方の攻め上がりを待たなくてはいけないからね。俺はそういったプレーに自信がある。俺にとって1トップははまり役なのかもしれないね。できれば、今後もずっと、このシステムでプレーしたいと思っているよ。
――ただし、君が最前線でプレーすることには疑問の声も出ているよね。
ルーニー 人にはそれぞれの意見がある。「ウェイン・ルーニーはいろいろなポジションでプレーできる。もちろん、最前線でもね」。それが俺の意見だ。あとはホジソンが、俺をどこでプレーさせることがイングランド代表にとってベストなのか、その判断をするだけのことさ。彼がどんな決断を下そうと、俺はどのポジションだって喜んでプレーするつもりだよ。
――場合によっては、ユナイテッドでやっている中盤の底でも喜んでプレーすると?
ルーニー いや、それは微妙かな(苦笑)。数年後にどのポジションでプレーしているかは現時点で何とも言えないけど、今言えるのは、俺はセンターフォワードだってことさ。前言を少しだけ撤回させてもらうけど、俺はゴールを追い求めたい。
――ガリー・ネヴィルが代表スタッフに加わった。彼はどんな役割を担っているの?
ルーニー ガリーの存在は大きい。彼のゲーム分析能力は素晴らしいものだからね。チームにとって彼の分析は大きなプラスになっている。ガリーは長い間、クラブや代表で多くの勝利を手にし、同時にたくさんの経験を積んだ。彼の戦術的な知識の豊富さについては、『Monday NightFootball』を見れば分かるだろう?
――君はあの番組を見ているの?
ルーニー もちろんさ。ソファでくつろぎながら、彼の分析に耳を傾けるのは最高のひとときだ。もっとも、自分が出ているゲームの分析はあまり聞きたくないけどね(笑)。ガリーとエド・チェンバレンは実にいいコンビだと思うな。
――君はガリーと一緒にプレーしていた頃から彼の戦術センスの高さを感じていたの?
ルーニー ああ、ガリーのゲーム把握力は抜群だった。彼の現役終盤、俺がベンチに下がった時は、よくゲームの展開について話したものさ。たいていは彼の言うとおりの展開になったよ。
――かつてのチームメートの下でプレーするのはどんな感じなのかな?
ルーニー いいものだよ。そもそも、ピッチ上でだってチームメートから指示されることもあるし、その逆もある。チームメートは互いに助け合うものなのさ。例えばこれが学校なら、生徒は先生の言うことに従わなくてはならない。でも、ここは学校じゃない。場合によってはコーチの言うことに納得できないこともあるだろう。ただ、そんな時は話し合えばいいのさ。俺たちは監督やコーチを含めて、全員で正しい答えに到達しようとしている。そのために一緒に練習しているんだからね。
代表で学んだことを若い選手に伝えていく
――まだ20代半ばだというのに、ベテランのように扱われることに違和感を覚えることはあるかい?
ルーニー 全くないよ。実際、イングランド代表ではもう10年以上プレーしているしね。チームで最年長ではないけど、少なくともプレーした試合数では経験豊富な選手の仲間入りをしている。もちろん、できる限り若手にアドバイスを与えたいと思っているよ。
――君にとって「副キャプテン」はどういう意味を持つの?
ルーニー 「名誉」かな。キャプテンとしてプレーさせてもらった試合もいくつかあるけど、身に余る光栄だと感じている。そして同時に、俺やスティーヴン(ジェラード)、フランク(ランパード)は、若い選手がすぐに代表になじめるように考えてやらなくてはならないと思っているんだ。俺たちには、これまで代表で学んだことを若い選手に伝えていく責任がある。彼らが代表で快適にプレーできれば、きっと素晴らしいパフォーマンスを披露してくれるはずだからね。
――君とダニー・ウェルベック、セオ・ウォルコットの3人が前線で並んでいた時のイングランドが一番強かったと個人的には考えているんだけど、君はどう思う?
ルーニー ダニーとセオがサイドに開いて速いリズムでプレーしたら、相手DFは相当きついだろうね。彼らを止めるには、相手のセンターバックもサイドに寄せなくてはならなくなる。そうすると中央にフリーのスペースが生まれるから、それは俺にとって最高の状況になるんだ。何試合か4-3-3でプレーしたけど、確かに君の言うとおり、すごく機能していたと思う。
――ユナイテッドのチームメートであるウェルベックが代表でも一緒というのは、連係面でもプラスになるよね。
ルーニー もちろん、多少のメリットはあるかもしれないけど、インターナショナルなレベルになれば、一緒に練習をやっているとかいないとか、それはあまり関係がないんだ。トップレベルのプレーヤー同士であれば、初めて一緒にプレーする場合であっても意思の疎通に困ることはない。
――では、質問を変えよう。若手のジャック・ウィルシャーがイングランド代表にもたらしたものは?
ルーニー リズムとエネルギーだ。ピッチの中央でボールを持ち、自ら相手DFに勝負を仕掛けたり、ボールをつないだり、ジャックは自由自在に攻撃を組み立てている。彼のプレーは見る者を楽しませるんだ。それから俺にとっては、サポート役としても重要な存在になる。俺が最前線でプレーする時、中盤からのサポートは不可欠になるからだ。その意味でも、ジャックは本当にいい仕事をしてくれている。彼は実に賢いプレーヤーだ。その年齢を考えると信じられないくらいクレバーな選手だよ。ボールコントロールに優れているし、相手DFを効果的に引きつけることもできる。ジャックのおかげで生まれたフリースペースをいかに活用するか、それが俺の課題になるだろうね。
――新設の代表トレセン、セント・ジョージズ・パークが今後「新たなウィルシャー」を生み出すことになるのかな?
ルーニー あそこにはすべてがそろっている。一つの建物に、イングランドサッカーの歴史が詰まっているという感じさ。あらゆるトレーニング機材が完備され、体調をコントロールするための機材もすべてそろっている。あそこにいれば次の試合までに完璧な準備ができるし、あそこで練習を続ければ俺たちのサッカーがスペインのサッカーに追いつくのも時間の問題だと思う。特に若い選手にとっては理想的なトレセンだろうね。監督やコーチにとっても、自分が目指すサッカーを作り上げる上で理想的な環境だと言えるし、近い将来、イングランド代表がセント・ジョージズ・パークの恩恵にあやかることを心から願うよ。
――セント・ジョージズ・パークには選手が結束するための施設があるそうだね?
ルーニー そのとおり。普通、合宿所に入ると部屋に閉じこもってしまうことが多いんだけど、あのトレセンは選手間の交流をうまく促すように作られている。みんなで集まって遊ぶための施設がたくさんあるんだ。選手間の会話も増えた。こういう機会がなければ、他のクラブの選手とここまで打ち解けることはなかったかもしれない。
――プレステの人気が高いようだけど、サッカーゲームは誰が一番強いのかな?
ルーニー 俺はいつもアシュリー(コール)とペアを組んでいる。一番強いのは誰かな??まず、アンディ(キャロル)は下手だし、アレックス(チェンバレン)もうまいとは言えないな(笑)。一番強いのは……そうだな、ジョレオン(レスコット)とジェームズ(ミルナー)のコンビが最も厄介かな。ただ、俺とアシュリーのペアのほうが絶対強いと思うよ。
イングランド代表として戦うW杯欧州予選、1年後に控える本大会への意気込みを語るルーニー。インタビューの続きは、ワールドサッカーキング0801号でチェック!