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スペイン代表MFセスク「すべてを勝ち取って歴史に名を刻みたい」

2013.07.08

[ワールドサッカーキング0718号掲載]

ともに“最強”の誉れ高いチームで“大きな背番号”を担う。その一方で、ピッチ上での“居場所”は固定されていない。万能のMF、セスク・ファブレガスが考える“最愛の場所”でプレーすることの意味とは――。
セスク
インタビュー・文=ホセ・フェリックス・ディアス Interview and text by Jose Felix Diaz
翻訳=高山 港 Translation by Minato TAKAYAMA
写真=ゲッティ イメージズ Photo by Getty Images

 万能であるがゆえの“悩み”かもしれない。バルセロナで伝統の「4」番を、スペイン代表でエースナンバーの「10」番を背負う彼の居場所は、“定位置”ではない。

 本人も認めるとおり、セントラルMFへのこだわりは強い。一方で、「チームの勝利につながるプレーができればそれでいい」とさらりと言ってのける。もちろん、その「チーム」には“愛する”という条件がつく。

 セスク・ファブレガスが“最愛の場所”への思いを語る。

今の代表チームには常に野心がある

――バルセロナでもスペイン代表でも、君のポジションは流動的だ。君自身はどのポジションでプレーしたいのかな?

ファブレガス 僕としてはどのポジションでも対応できるつもりだよ。前回のユーロ(2012)では、センターフォワードを体験させてもらった。貴重な経験になったと思っている。ただ、僕の本職はMF。アーセナルでパトリック・ヴィエラやジウベルト・シウヴァと一緒にプレーして、MFとしてプレーする“ノウハウ”を身につけたつもりだ。最近はバルセロナでもFWの位置でプレーすることがあるけど、自分が一番生きるのはセントラルMFだと思っている。もちろん、どのポジションにも対応する自信はあるし、監督からオーダーされたポジションでプレーすることに不満もない。チームの勝利につながるプレーができればそれでいい。僕はそう思っている。

――スペイン代表はこの数年、国際大会の優勝を独占している。「タイトルに飽きる」なんてことはないのかな?

ファブレガス 僕らは常に挑戦者の気持ちでいる。今の代表チームには常に野心があるのさ。ワールドカップでも優勝したし、ユーロでも2連覇を達成した。でも、それで僕らの野心が萎えることはない。それに、そう考えているのは僕ら選手だけじゃないんだ。スペイン国民も常に「次のタイトル」を渇望している。「すべてを勝ち取ったチーム」として、スペインサッカーの歴史に名を刻みたいね。

――今の代表チームの居心地はどうだい?

ファブレガス 最高だよ。代表でプレーできることを心から幸運に感じている。僕はまだ26歳だけど、既に代表で80試合以上に出場させてもらっている。この数年間、代表の試合には必ず招集されているし、これ以上何を望めと言うんだい? 最高にハッピーだよ。

――スペインでは常にバルセロナとレアル・マドリーのライバル関係が話題になるけど、代表チーム内でも、そうしたライバル意識は存在するの?

ファブレガス 代表でマドリーの選手と話をする時、相手がマドリーの選手であるとか、自分がバルサの選手であるとか、そんな意識は全くない。僕らはチームメートであり、共通の目的でプレーしている。スペインの勝利のために全力でプレーするという同じ志を持った仲間だ。そこに「クラブ間のライバル意識」なんて存在するはずがない。

――次にバルセロナの話を聞かせてもらえるかな。まずは、バルサの昨シーズンを総括してほしい。

ファブレガス シーズンをもう一つ振り返ろう。2011-12シーズン、僕らはマドリーにリーガ王座を奪われた。あの時点で、「バルサの時代は終わった」と思った人も少なくなかったに違いない。でも、僕らは圧倒的な強さでリーガのタイトルを奪回した。勝ち点100という数字もそうだけど、それ以上に、マドリーに15ポイント差をつけたことは評価されるべきだと思う。僕が知っている限り、マドリーにそこまで大差をつけるのは、クラブの歴史を振り返っても初めてのことだ。僕らはリーガで圧倒的な強さを見せつけた。2012-13シーズンはすごくポジティブなものだったと思う。ただ、本来なら「最高のシーズン」と評価されるべきなのに、チャンピオンズリーグ(CL)のバイエルン戦での完敗(準決勝で対戦し、2試合合計0-7で敗北)ですべてが台無しになったという感じさ。あの敗戦は本当にショックだったよ。チーム全体のコンディションがあまり良くなかったこと、どこかで歯車が狂ってしまったこと、敗因はいろいろあると思うけど、負けは負けさ。僕らにできるのは、敗北を受け入れることだけだ。

――今、ヨーロッパのサッカー界を支配しているのはバイエルン、そういうことなのかな?

ファブレガス バイエルンはこの数年、タイトルに恵まれていなかった。CLでは決勝に2回進出し、インテルとチェルシーに敗れ、優勝を逃している。でも、バイエルンは“決勝で2回敗れた選手たち”を軸にチーム力アップを図った。彼らはCLで悔しい思いをした選手たちが中心となってヨーロッパの頂上に立った。実際、素晴らしいサッカーを展開していたと思う。今のバイエルンがヨーロッパのサッカーを支配している、それは認めざるを得ないだろうね。

スタートから全力を尽くす

――昨シーズンの君自身のプレーを振り返ってくれるかな? 少なからず批判を浴びることもあったようだけど、君にとって率直にどんなシーズンだった?

ファブレガス 確かに批判は多かったし、批判を受けるからにはそれなりの理由があると思う。ただ、本音としては、批判に納得できない部分があることも事実だ。少なくとも、前半戦はいいパフォーマンスを披露できたと思っている。問題はCLのミラン戦だったのかな……あの時、僕はコンディションを崩していたんだ。でも、僕はプレーすることを選択した。結果は知ってのとおりさ。批判をダイレクトに受けることになった。あの日、僕はプレーすべきではなかった。プレーできるコンディションではなかったのだからね。ピッチに上がったことを今でも後悔しているよ。あの日を境に僕の出場機会は減少した。それでも、昨シーズン、僕は公式戦59試合に出場し、15のゴールと15のアシストを記録した。この2年間で見れば、30ゴール32アシストを記録したことになる。もっと良い数字が残せたかもしれないけど、この成績にはそれなりに満足しているよ。ただ、僕のパフォーマンスに満足できなかったサポーターがいることはしっかり受け止めなければならないし、彼らの信頼を取り戻すためにも、新シーズンはスタートから全力を尽くすつもりでいる。

――ところで、ジョゼップ・グアルディオラがバイエルンの監督に就任したけど、このことについてはどう思う?

ファブレガス ペップ(グアルディオラの愛称)は強いメンタルの持ち主で、常に前進することしか考えていない人だ。監督として必要な資質をすべて持ち合わせている。状況判断も的確だし、個々の選手の能力を最大限に引き出す力を持っている。ただ、昨シーズンのバイエルンはすべてのタイトルを手にした。だからいきなり、それ以上の成績を求めるのは酷だとも思うな。まあ、いずれにしてもペップが監督を務めることで、バイエルンのサッカーのレベルがまた一つ上がることは間違いないだろう。

――バルサの話に戻ろう。現チームの課題として、「リオネル・メッシ依存型のチーム」であることが度々指摘されているけど、この点について君の意見はどう?

ファブレガス この数シーズン、メッシはほぼすべてのゲームでプレーし、ゴールを量産してきた。近年のバルサがメッシに依存してきたというのは確かだと思う。実際、僕もボールをもらった時点で、まずメッシを探すからね。それは他の選手も同じだ。極端な言い方をすれば、全員がメッシの動きを見ながらプレーしている。でも考えてみてほしい。ゴールを確実に決める選手がいるという状況で、その選手にボールを預けるのは極めて自然なことだ。繰り返すけど、この数シーズン、メッシは常にピッチ上にいた。つまりは、おのずとメッシ不在時の攻撃のバリエーションについて考える必要性が低かったということだ。少なくとも、昨シーズンのCL準々決勝のパリ・サンジェルマン戦まではね。でも、パリでのファーストレグでメッシはケガを負ってしまった。その試合は何とか引き分けに持ち込んだけど、カンプ・ノウで迎えたセカンドレグでもチームは思うように機能しなかった。アウェーゴールによって辛うじて準決勝進出を果たしたけど、メッシがフル稼働できない時にどうなるか、チーム全員が不安に感じたよ。それでも、リーガのラスト3試合は、メッシ抜きで僕らはすべてに勝利した(バジャドリー戦に2-1、エスパニョール戦に2-0、マラガ戦に4-1で勝利)。特に最終節のマラガ戦では僕や(アンドレス)イニエスタがゴールを決めたことで、メッシ抜きでも十分に勝てるチームであることを証明できたと思う。

移籍の可能性が報じられるセスクだが、自身はバルセロナへの残留を強調。インタビューの続きは、ワールドサッカーキング0718号でチェック!

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