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『10番は「司令塔」ではない』の著者が分析…イタリア戦で垣間見えた本田と香川の新たな関係性

2013.06.22

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ザックジャパンにおける最重要テーマといえる本田と香川の2大エースの起用法。コンフェデレーションズカップでの2人のプレーについて、『10番は「司令塔」ではない』の著者・北健一郎が各試合ごとに詳細に分析していく。

使う側と使われる側、その役割の変化

 イタリア戦のキックオフ前、日本代表の4番と10番は円陣を組む前にタッチをかわした。オレたちの力でアズーリの壁をこじ開けてやろうぜ——。そんな決意を示すように。そして実際に日本代表の2大エース、本田圭佑と香川真司は世界の舞台で輝きを放った。

 立ち上がりから日本はイタリアに対してプレッシャーをかけていった。イタリアはほとんどの攻撃をボランチのピルロを経由して行ってくる。「ピルロ封じ」において重要な役割を担ったのが本田だった。

 本田は1トップの前田遼一と共に、攻撃の起点であるピルロの監視役となった。ボールを持った選手とピルロの間のコースに立つことで、パスコースを消しながらボールに寄せていった。そのため、イタリアの攻撃は機能不全に陥った。

 目立たない部分ではあるが、本田はこのような「相手の選択肢をなくすディフェンス」に長けている。本田の頭脳的なディフェンスもあってペースをつかんだ日本は、左サイドの香川を起点に攻撃を仕掛けていった。

 ブラジル戦ではチャンスに絡むことが少なかった香川だったが、イタリア戦ではハイプレスでチーム全体のラインが押し上げられたこともあって、彼の良さを出せる高い位置でのプレーが増えた。このことが香川の持ち味を引き出すことにつながった。

 また、この試合の本田と香川の関係性には変化が見られた。

 前半8分のプレーが象徴的だ。左サイドのペナルティーエリア手前で香川がボールを持ったとき、中央の本田が香川の前をナナメに横切りながら左サイドの深い位置に走り込む。香川は本田に縦パスを出すと、そのまま中に走り込んで本田からのリターンパスを受けてペナルティーエリア内に侵入した。

 これまで本田と香川は基本的に本田が「使う側」で香川が「使われる側」だった。本田がボールをキープして相手を引きつけている間に、香川がゴール前に入ってきてパスを受けるという具合に。しかし、この試合では香川が左サイドで攻撃の起点となって、本田を「使う」プレーが何度も見られた。

 常に同じような関係性では相手にも読まれてしまう。本田と香川がお互いに使い、使われることによって日本の破壊力は何倍にもなる。変幻自在にポジションチェンジをしながら、ワンタッチ、ツータッチでパスをつないでいく日本は「カテナチオ」と呼ばれる世界随一の守備力を誇るイタリアであっても止めるのが難しかった。

 イタリア戦では本田、香川が1ゴールずつを挙げたものの、結果的には3−4で敗れた。試合後の本田と香川のコメントに強豪相手に良い試合をしたという満足感よりも、自分がチームを勝利に導けなかったことに対する反省の弁が並んだ。

 しかし、ブラジルのスタンドを埋め尽くした観客は忘れないはずだ。日本の2人のエースが起こした化学反応と、それによって生まれた美しいプレーの数々を。

文●北 健一郎 写真●Getty Images

10番は「司令塔」ではない-トップ下の役割に見る現代のサッカー戦術-

サッカーの戦術が変化する中で「トップ下」と呼ばれるポジションの役割も変わってきた。かつての考え方では「トップ下」とは呼べない「トップ下」の選手たちも生まれている。サッカーを観る上で重要な視点を紐解く。

◆目次
第1章 トップ下を見るための10の視点
第2章 FC東京・高橋秀人が語る「戦術的トップ下論」
第3章 浦和レッズ・柏木陽介が語る「「技術的トップ下論」
第4章 現代サッカーを面白くする10人のトップ下
第5章 本田と香川の使い方を探る

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