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【前園真聖の日本サッカー強化論】Jリーグで活躍している選手に代表でのチャンスを与えるべき

2013.05.30

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世界への扉を開いた前園真聖氏が自身の経験と取材を基に日本サッカーがさらに強くなるための方策をちょっと辛口で提言。連載初回の今回は、約1カ月の中断期間に突入したJ1、そして、ワールドカップ出場を懸けて戦う日本代表の選手選考について自身の見解を語った。

ノヴァコヴィッチとズラタンはJリーグ史上屈指の献身的な助っ人

 Jリーグ前半戦を終えて、一番のサプライズはなんといっても大宮アルディージャだ。2005年にJ1に昇格してからの成績は最高でも12位、昨シーズンも13位、毎シーズン残留争いの順位が定位置のチームが、今シーズン前半戦を終えてリーグ首位。それは間違いなく”驚き”でしょ!そんな大宮の何が変わったのか?まずは2人の外国人FWノヴァコヴィッチとズラタンの存在だと思う。ノヴァコヴィッチは190cmという高さはもちろん足元も起用だ。長い手と長い足で相手との間合いを測りながら、ボールが来たらポストプレーができ、しなやかに反転してフィニッシュまでいける。またミドルレンジからのシュートも上手い。ズラタンはフィジカルに強く、こぼれ球には体を張って競り合い、守備では激しく相手にプレスをかけ、チャンスの時はゴール前に顔をだし得点を奪える。この2人以上に技術の高い外国人FWは今までもたくさんJリーグにいたと思う。ただし、多くの外国人プレーヤー(特にFW)の選手は自分の仕事、つまり点を取ることを重視し、それ以外のプレーはおろそかにしがちである。もちろんそれで結果を出せば何も言うことはないのだが、Jリーグ約20年の歴史の中で、これほど献身的な助っ人ストライカーは存在しなかったと思う。

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写真=Getty Images、野口岳彦

 しかも同じチームに2人も。そしてもう1人忘れてはならない存在は、監督のベルデニックだろうね。俺がプロ1年目のチーム、横浜フリューゲルスのサテライトリーグでプレーしていた当時の監督がベルデニックだった。基本プレーを大事にし、組織的な規律を重視するサッカーをする、そういうイメージがある。まさに今の大宮のサッカーはそんなサッカーじゃないかな。サッカーがおもしろいかおもしろくないかと言えば、正直、決しておもしろいとはいえなかったが・・。誰1人さぼらず全員が何をすべきか理解していて、コンパクトで守備が改善され、簡単に失点しないで、少ないチャンスで勝てるサッカー、それが大宮アルディージャというチームだ。
 とはいっても、毎シーズン残留争いをしていたチームが、急に首位になるような状況で、本物の力がつくだろうか……。俺の答えは“NO”だね。着実に力をつけてきた広島なんかとは間違いなく違うだろう。メデイアも、現状だけを見て飛びつき、ここぞとばかりに露出する。埼玉ダービーを取材に行った時、メディアはこぞって負けなしの大宮の選手たちに試合後のインタビューに行っていた。俺たちだけは、負けた浦和の選手にインタビューしたのを覚えている。浦和や広島をはじめとした他のチームも含めて、“これでJリーグはいいの!?”と言いたい気持ちもある。

 もちろん、大宮の戦力を考えると、本当に素晴らしい成績だと思うよ。ただ他のチームの戦力を考えれば、これじゃダメでしょ!!戦力をみて、圧倒的に勝るチームは、順位も内容もそれなりに魅せてほしいな!

 特に浦和はペトロヴィッチ監督2年目で攻撃的なポゼッションサッカーが確立されて、興梠や森脇、那須などの新加入選手がチームにフィットして魅力的なサッカーを展開している。鹿島はダヴィや戻ってきた野沢、チームの心臓になりつつある柴崎の成長に加え、鹿島の黄金期を知るトニーニョ セレーゾ監督が戻ってきたことで、チームに安定感が出て来た。広島は出足こそ良くなかったが、徐々に広島らしい攻撃の形が形成され、チームのストライカーである佐藤寿人も9得点で得点ランク首位タイまであがってきた。選手層の薄さが 気になっていたが、浦和同様にACLも敗退が決まり、よりリーグ戦に専念できるはず。リーグ再開に向けて中断期間のチーム作りやコンデション調整、モチベーション維持などは非常に難しいものだ。このあたりも含めて、後半戦はどういうスタートをきるのか、楽しみに待とう。

もう少しJリーグで活躍している選手に代表でのチャンスを与えてもいいと思う!

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写真=浦 正弘

 最後に日本代表選考メンバーについてちょっと言いたい。今回のメンバー選考は正直ビックリした。新しく選ばれたメンバーがどうだ、というより、俺がおそらく選ばれるであろうと予想していた佐藤寿人や豊田陽平などが誰1人選ばれなかったこと。これは予想外だった……。ザッケローニ監督はとても慎重だし、メンバーもほぼ固定している。それが悪いとは言わないが、ブラジル代表などの選考など見ても、いま結果を出している選手、その時に調子のいい選手を代表に呼んでいる。

 これは当然のことだと思うし、選手の立場からすればこれ以上のモチベーションはないと思う。W杯最終予選に呼べとは言わないが、もう少しJリーグで活躍している選手に代表でのチャンスを与えてもいいと思う!チャンスを与えるというのは呼ぶだけじゃなく試合に使うという意味。代表でのイスが確約されている選手とは違い、新しく選ばれた選手は少ない期間でも代表のサッカーを理解し、レギュラー組と融合しなければならない。それは当然のことだと思う。それには、プレーするチャンスを与えてほしい。せめて30分ぐらいは……。それで結果出せなければしょうがないし、本人も納得するんじゃないかな。

 とにかく今選ばれてない選手も2014年のブラジルW杯にはチャンスがあるんだという気持ちになってほしい。その気持ちがないと選手のレベルもあがらないし、Jリーグのレベルもあがらない。その為にも日本代表に新しく選ばれた選手にはチャンスを与えてほしいし、与えられたら自分のものにしてほしいと心から思う。

前園真聖

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