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中村憲剛が分析する「それでもバルセロナが最強である理由」

2013.05.22

サムライサッカーキング6月号 掲載]

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インタビュー・文 = 岩本義弘 Interview by Yoshihiro IWAMOTO
写真 = 新井賢一 Photo by Kenichi ARAI

■同じテンポで《やり続ける》すごさ
──バルセロナは試合前のボール回しでも選手同士の距離が近いですよね。狭くても綺麗にパスが回っていて感心します。

中村 選手たちの頭の中の距離感の許容範囲が狭いと言うか、狭くてもできる感覚と技術がある。それがバルサなんでしょうね。だから、どれだけ狭くても自分たちが動きを変えていけば打開できる。普通なら「こんなに近いのにいらないよ」となるけど、バルサは全然問題ない。

──普通は1メートル程度の距離でパスは出しませんもんね。

中村 カットされるし、普通は危ないんですよ。でも、相手からしたらその距離でパスを回されたら、「こいつらこの距離でもびびらないんだ」と思って取りにいけないんですよ。本気でガッと寄せないと取れないはずで、チャンピオンズリーグのミランはそのへんができていたと思います。ただ、第2戦では最初のほうはバルサも引っかけられていたけど、途中からミランが引っかけられなくなった。バルサのすごいところって、続けるところなんです。無理だからと言って蹴ったりせずに、同じテンポで続けていく。90分もやられたら、それは相手も根負けしますよ。

──今シーズンのチャンピオンズリーグのベスト8のデータを見ると、バルサは平均のボール支配率が69パーセントでトップです。ただ、枠内シュートは73本で3位で、これは枠内シュート数最多のレアルの104本に比べたら3分の2ぐらいです。つまり、バルサはたくさんのシュートは必要ないという考え方なんですよね。

中村 そう、「むやみに打ってもいけない」ということを実践している。サイドにボールが展開されてチャンスなんだけど、中に人がいなければ平気でもう一回やり直すし、結構大きく下げたりもします。相手からしたら上げてくれたほうが楽なんだけど、「またやり直し?」みたいな(笑)。忍耐力と言うか、成功確率が高いところをどんどん選んでいく狡猾さと言うか、賢さみたいなのはすごいと思います。

──一方で、1点を取って、相手が前がかりに来たら、すごくシンプルなカウンターも仕掛けられます。

中村 結構お手上げですよ。本当に最初は守るしかないと思う。前からプレスするのも90分は続かないし、彼らはずっと同じことをやり続けて来るわけだから。運良く引っかけてポンポンってカウンターで点を取るぐらいしかチャンスはないと思います。

──僕自身はこの前のミランとの第2戦を見た時に「バルサが本気になったら勝てるチームはないんじゃないか」と思ってしまいました。

中村 僕も思いました。本当に良い準備をして、全員がフルコンディションで、多少の運がないと、本気のバルサにはどこも勝てないと思います。第2戦ではミランの(エムベイェ)ニアンがポストに当てたシーンあったじゃないですか? あれが入っていたら、全然別の結果になっていたと思う。バルサはそういう場面もあるチームなんです。でも、運も味方したって言うのかもしれないですけど、運を味方にすると言ったって、これだけ勝ち続けているのはやっぱりすごいと思います。

日本代表の中村憲剛らがバルセロナを再考する最新のバルサ論が登場

『バルセロナを極める11の視点 サッカー史上最強のクラブを再考するアンソロジー』

著者:羽中田昌/中村憲剛/西部謙司/岩本義弘/小川光生/河治良幸/小澤一郎/是永大輔/細江克弥/清水英斗/工藤 拓/北健一郎
2013年5月21日発売/定価:1,575円(税込)/264ページ/ISBN:978ー4ー02ー190232ー1
発行:株式会社フロムワン/発売:株式会社 朝日新聞出版

トレンドを作るバルセロナを知らずして、現代サッカーは語れない。

現代サッカーをリードするFCバルセロナを読み解く書籍が登場。日本代表の中村憲剛を筆頭に、ミランのマッシミリアーノ・アッレグリ、羽中田昌氏、西部謙司氏、小澤一郎氏、清水英斗氏、北健一郎氏といった11人のスペシャリストたちが、戦術・選手・歴史・環境の観点から、史上最強と称されるクラブの独自性を語っていく。2012-13シーズンのチャンピオンズリーグでミランやバイエルンに敗北を喫した理由も分析。

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目次

第1の視点
ドリームチームという原点から史上最強までの歩み/文=西部謙司

第2の視点
ペップ・グアルディオラは何をもたらしたのか?/解説=羽中田昌

第3の視点
わずかな停滞から見えてくるもの/文=小澤一郎

第4の視点
ポゼッション解剖論--プレーヤー視線から美しい攻撃を読み解く/解説=中村憲剛(日本代表/川崎フロンターレ)/聞き手=岩本義弘

第5の視点
ゴールで辿るリオネル・メッシの軌跡/文=細江克弥

第6の視点
トレンドを象徴する名脇役たち/文=北健一郎

第7の視点
ラ・マシア再訪/文=工藤 拓

第8の視点
スペイン代表との共通点と相違点を探る/文=清水英斗

第9の視点/私はいかにしてバルサに勝利し、また、敗れ去ったのか?--マッシミリアーノ・アッレグリが味わった天国と地獄/文=小川光生

第10の視点
対策から見るさらなる進化への道/文=河治良幸

第11の視点
クラブとファンの幸福な関係/文=是永大輔

巻末付録
フォーメーションで振り返る21世紀のバルセロナ/文=池田敏明
 

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