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チーム作りを語るモウリーニョ「ぬるま湯では競争心を養えない」

2013.04.18

[ワールドサッカーキング0502号掲載]
モウリーニョ

報じられる主力選手との確執をあっさりと否定し、去就問題を語るのは「今ここではない」と即答する。クライマックスを迎える2012-13シーズン。ジョゼ・モウリーニョはその先に、いかなる決断を下すのか。

インタビュー・文=ピーター・スジネーター Interview and text by Peter SZINETAR
翻訳=阿部 浩 アレクサンダー Translation by Alexander Hiroshi ABE
写真=ゲッティ イメージズ Photo by Getty Images

「ドローは自分にとって、さほど大きな意味を持たない。どこと当たってもビッグゲームであり、全力で挑むべき試合だ。そして、楽しむべき試合となる」

 チャンピオンズリーグ(以下CL)準決勝の組み合わせ抽選会を前に、ジョゼ・モウリーニョはそう語っていた。ドローの結果、対戦相手はドルトムントに決定。グループリーグで1分け1敗と後れを取った相手との“再戦”は、見る側にとっても「楽しむべき試合」になる。

 このドローの6日前、“スペシャル・ワン”と呼ばれる男は、また一つ、“特別な足跡”を残した。5-1というレバンテ戦の大勝で、モウリーニョはR・マドリーでの公式戦121勝を達成。レオ・ベーンハッカーと並ぶクラブ歴代3位タイの勝利数に、この男は166試合、期間にして2シーズン半足らず、勝率78・2パーセントという驚異的なペースで到達した。彼の上にいるのは、ミゲル・ムニョス(357勝)とビセンテ・デル・ボスケ(133勝)、“伝説のチーム”を率いた2人の指揮官だけだ。

 シーズン後の去就が取り沙汰される中、その歩みはどこまで続くのか?

 ビッグイヤーに「左右されることはない」というモウリーニョの“スペシャルな決断”が、サッカー界の「改革」を左右する。

優勝予想はファンに任せよう

まずはCLの歩みを振り返っていただきます。ベスト16では、かつての“宿敵”でもあるマンチェスター・ユナイテッドと対戦し、見事に勝ち上がりました。

モウリーニョ(以下M)――2戦目が大きかった。勝ったことで最大の目標、すなわち優勝へと一歩近づいたわけだが、本音を言えば、あの試合はユナイテッドのほうが優れていた。ナーニの退場がなければ、うちの勝利はなかったかもしれない。残念ながら、マドリーのパフォーマンスは私の期待を大きく下回るものだった。選手にも、はっきりそう告げてある。運良く勝てたからといって、舞い上がってもらっては困るのでね。

今大会はイングランド勢がベスト16の段階で全滅となりました。

M――シーズンによってチームのパフォーマンスが異なるのは当然のことだし、そもそも、そうしたくくり方自体が意味を持たない。もっとも、チェルシー(グループリーグ敗退)とアーセナル(決勝トーナメント1回戦敗退)は敗れて当然のパフォーマンスだった。そこに驚きはない。一方、(マンチェスター)シティーの敗退は予想外だった。あれだけ優秀な選手をそろえていながら2年連続で、それもグループリーグで敗退する理由が私には分からない。厳しい言い方をすれば、敗退を冷静に受け止めていること自体、シティーがまだ“本物のビッグクラブ”になっていない証拠と言えるだろう。想像してほしい。もしマドリーがグループリーグで敗退しようものなら、全員が“処刑”されている。だが、シティーはそうなっていない。それが「本物」と「そうでないもの」の違いだ。

マンチェスター・Uについてはいかがですか?

M――ユナイテッドはヨーロッパのベストチームの一つだ。我々が勝者となったが、彼らの敗北は不運だったとしか言いようがない。同時に、それがフットボールの“不条理な醍醐味”でもある。

イングランド勢に比べ、スペイン勢とドイツ勢は好調ですね。

M――そのくくりに意味はないと言ったはずだ。ただし、バイエルンとドルトムントは素晴らしいパフォーマンスを見せている。準決勝にはヨーロッパの最強チームが集結した。

準々決勝のガラタサライ戦、ファーストレグは3-0の快勝でした。チームのパフォーマンスもマンチェスター・U戦よりも良かったのではないですか?

M――そのとおりだ。選手は真剣にプレーしてくれた。特にディフェンス面を評価している。攻撃面はいま一つだったが、(カリム)ベンゼマと(ゴンサロ)イグアインにゴールが生まれたことは素直に喜んでいる。FWにとって、ゴールは何よりの自信になるからだ。

ガラタサライというチームをどう評価しますか?

M――ファティフ・テリムという偉大な監督に導かれたグッドチームだ。それぞれの選手の持ち味を生かせるシステムを採用している。セカンドレグ(3-2でガラタサライが勝利)を含めた結果からも明らかだが、マドリーは準決勝進出にふさわしいチームだったし、ガラタサライは勝者にふさわしかった。素晴らしい選手、優秀な監督、そして信じられないほど偉大なサポーターとともに、ガラタサライはビッグクラブの名にふさわしいパフォーマンスを披露した。

R・マドリーは有力な優勝候補だと思いますか?

M―― 君はどこだと思う? まあ、優勝予想はファンに任せよう。それにしても、準決勝にこれほど強いチームが集結したのは初めてじゃないかな。我々はもちろん、バルセロナ、バイエルン、ドルトムント、どのチームも優勝候補だ。

信頼となれ合いは全くの別もの

チームの話を聞かせてください。イケル・カシージャスやセルヒオ・ラモスとの不仲がささやかれています。真相はいかがですか?

M――真相もなにも、私はアクティブかつ正直な態度で選手と接しているだけだ。もちろん、ポジティブな意味でね。カシージャスやラモスには、もっと真剣に試合に臨むようアドバイスしている。彼らも自覚して、メンタル的な鍛錬に力を注いでいる。

しかし、カシージャスはまだスタメンに復帰させてもらっていません。

M――ディエゴ・ロペスのほうがベターな状態にある。それだけのことだ。私の仕事は、チームにとってベストな人材をピッチに送り出すこと。そこに個人的な理由が入り込む余地はない。

しかし、今シーズンはアントニオ・アダンを起用したケースもあります。それほどまでにカシージャスを拒否する理由は何ですか?

M――繰り返すが、テクニカルな問題だ。アダンを選んだ時は、アダンのほうがカシージャスよりもコンディションがベターだった。

ファンはカシージャスが出ないことに腹を立てているようですね。

M――私へのブーイングは甘んじて受け入れる。だが、試合中はチームをサポートしてほしい。アダンやロペスには「ファンの怒りの矛先は私だ」と伝えてあるが、少なからず不快な思いをさせてしまっていることは本当に申し訳なく思う。もちろん、主張は自由だ。しかし、選手の気持ちを考えずに、やたらと非難するのは愚かなことだ。スペインのメディアがファンをたきつけている部分もある。正直、腹が立つところもあるが、たまには悪役も悪くない、そう考えているよ。

S・ラモスとの関係についてはいかがですか?

M――ノープロブレムだ。互いにリスペクトしているし、ラモスは偉大なプロのアスリートだ。コンディションさえ良ければ、彼は“DFの鏡”のようなプレーをする。安定感のある守備、優れたインターセプトに加えて、セットプレーの才能もある。更に、リーダーシップも非凡だ。好調さをできるだけ保ってほしいと心から願っている。改めて誤解のないように言っておくが、私はメンバー全員の才能を信じている。監督と選手の関係において、それが最も重要だということは、ここで改めて説明するまでもないだろう。ただし、これだけは強調しておくが、信頼となれ合いは全くの別ものだ。常に“ぬるま湯”につかっているような環境では、競争心を養うことはできない。

高いプロ意識をもってこの仕事に臨んでいる

バルセロナに水をあけられているレアル・マドリー。モウリーニョが考える、その理由とは?彼の去就は?そして、バイエルンの指揮官に就任するジョゼップ・グアルディオラへ送った言葉とは?

続きは『ワールドサッカーキング0502号』にて!

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