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【サッカーに生きる人たち】夢を描くために、夢を見せる|鈴木良介(SOLTILO FAMILIA SOCCER SCHOOLゼネラルマネージャー)

2017.01.23

「夢を描きやすい環境作りが重要だと思うんですよ」

 その熱いまなざしは、まさに本田圭佑さながらだ。

 しかし、「普通の人間の視点を持つこと」が、本田選手にはない自らの武器だとも語る。本田選手と鈴木良介さん。二人はどのような思いでSOLTILO FAMILIA SOCCER SCHOOL(以下SOLTILO)を立ち上げたのか。けがによるプロ入りの断念、FAライセンスの取得、そして、一般企業で執行役員を務めたという異色の経歴。現在、SOLTILOでゼネラルマネージャーを務める鈴木さんに、「夢を描きやすい環境作り」について存分に語ってもらった。

「チームプレーより個人技を重視していいものか」

 鈴木さんは高校サッカーの名門、静岡学園高校の出身。選手個々のテクニックに定評がある、言わずと知れた強豪校だ。だが、その「静学=テクニック」という固定観念に、若干の違和感を覚えたという。

「静学はテクニックや個人技が評価されています。ですが、サッカーは個人技だけではないチームスポーツです。チームプレーより個人技を重視していいものなのか。この点については、今の自分の指導にも跳ね返るものがあります」

 名門・静学で指導を受け、その経験からたどり着いた指導のあり方について、鈴木さんはこのように語っている。

「僕も本田選手も、育成をメインとし、トップチームにつなげていく組織作りをしています。その中で重要なのは、サッカーだからこそできる『人間性を育てるアプローチ』をしていくことです」

 自らの指導のあり方について語る鈴木さんだが、SOLTILOでゼネラルマネージャーの職に就いたことも影響し、ここ3年間は指導の現場から離れている。現在はイベントなどでの指導やコーチ陣に対する指導をしているが、その活動にはより多くの子どもたちを同じ思いで指導できるという魅力があり、本田選手とともに掲げた「全世界に300校のスクールを開校する」という目標にもつながるようだ。

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「2年間は熱いオファーを断り続けていた」

 鈴木さんと本田選手の出会いは2010年に遡る。まさに、本田選手が南アフリカ・ワールドカップで大ブレイクした年だ。

 W杯後、日本に戻ってきた本田選手は日本代表のキャンプに合流する前、ウォーミングアップのために試合をしたいと所属事務所に依頼し、参加者を集めた。そこにたまたま鈴木さんが居合わせ、その際に本田選手から「今、何をやっているんですか?」と質問を投げかけられた。

 当時、あるサッカークリニックを統括する仕事をしていた鈴木さんがその旨を伝えると、「実は日本で子どもたち対象のサッカークリニックをやりたいんです」と、その場で本田選手から共同運営のオファーを受けたという。

 2010年には鈴木さん指揮の下、宮崎県と石川県で初のサッカークリニックを開催した。そしてこの頃から、鈴木さんと本田選手はお互いに抱いていたサッカースクールのビジョンを熱く語り合っていたという。

「鈴木さんが一緒にやってくれるのであれば、俺はこの事業にチャレンジしたい」

 本田選手からの熱いオファーを受けた鈴木さんだったが、2年間は断っていたという。鈴木さんは当時の葛藤を語ってくれた。

「本田選手は全世界に300校のスクールを作るという目標を掲げていたのですが、そんなことはできないと思いました。もちろん実現できれば理想ですけど、本人もまだ現役だし、広げれば広げるほど、最初に掲げたビジョンや理念が薄れてしまうんじゃないかな、という懸念がありました」

 しかし2011年、上海と大阪でサッカークリニックを行った際に「本当に来年からスタートさせたい。なんとしてでもやりたいんだ」と熱い思いをぶつけられ、鈴木さんはついに決断を下した。「ヨドバシカメラ梅田店の駐車場で話したんですよね(笑)」。鈴木さんは良き思い出のように当時を振り返ってくれた。

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一般企業の執行役員、FAライセンスの取得

 本田選手からの熱い思いを受けた鈴木さんがまず取り組んだのは、「自分に足りない能力を身につけること」だった。そのために一般企業で執行役員を務めてビジネススキルを身につけて、その経験をもとにマネジメントも1年間、学んだという。“武者修行”はそれだけにとどまらず、「世界の育成現場を見られていない」と感じた鈴木さんは、FAライセンスを取得するためロンドンにも渡っている。

「ロンドンで一番、感激したのは、指導者が子どもたちをリスペクトしていることでした」

 リスペクトとは「尊重」を意味する言葉だ。大人が子どもを尊重するとは、どういうことなのか。鈴木さんはFAライセンスの講義で学んだ「子どもへのリスペクト」の重要性を語ってくれた。

「子どもを大人の固定観念で縛りつけてしまっては、その大人以上の子どもには育たない。だからこそ、子どものアイデアをリスペクトする。そうすれば新しいものを生み出していけるんです」

 もう一つ、日本との違いを実感した部分があるという。「日本では指導者がお手本としてのプレーを子どもたちに見せますが、その方法についても否定的でした。まねをしてもその大人よりうまくならないから、というのがその理由でした。ただ、イギリスには文化として日常生活の中にサッカーがありますが、日本にはまだそのような文化がない。だからお手本を見せなければならないんですよね」

サッカーで「人間性」を育み、「文化」を変える

「海外の子どもたちは自己主張がすごいんですよ。日本の子は他人の顔色をうかがって、なかなか自分の意見を言えませんよね。その日本の文化、環境をサッカーの指導で変えていきたいと思っています」

 そう語る鈴木さんの指導は、子どもとの会話の中で、頻繁に質問を投げかけることに重きを置いているという。また、褒めるポイントも他の指導者とは異なり、大勢の前で自分の意見を発した子の勇気を称えるようにしている。

 その方法によって育てようとしている「自己主張できる選手」とは、まさに本田選手そのものだ。どんなにメディアで叩かれようが、思ったことは口に出し、なおかつ実行に移す。そんな本田選手の姿を見て、指導に反映させているそうだ。

 だが、鈴木さんはその本田選手に対して「普通の意見をぶつける」ことを重要視している。

「『普通』と言った瞬間に本田選手はキレるんですよ(笑)」と笑いながら語る鈴木さんだが、一方で「僕の普通の感覚と彼の飛び抜けた考え方がうまく融合するから、新しいものが生まれるんじゃないかと思っています」とも自負している。

「普通」の鈴木さんと「飛び抜けた」本田選手によるSOLTILOの未来はどのようなものになるのだろうか。今後の目標、展望を尋ねると、声を強めてこう語ってくれた。

「子供たちに『夢を持とう』と呼びかけ、じゃあどんな夢を持てばいいのか、となった時に、具体的に描けるかどうか。それを見せられる組織でなければ、夢を持たせることはできないと思っています」

 つまり、「夢を描きやすい環境づくり」こそがSOLTILOの未来像だ。それは、SOLTILOの選手たちがSVホルンの選手を目指すという組織の形そのものであり、実際、2016年10月にはSOLTILO FCの桂嶋瞭冴がSVホルンへ練習生として参加することが決まった。

「夢に向かって突き進み、挫折して、挫折したけど違う道でも成功できる。そういった人間を育成するサイクルを続けながら、サッカーに関わっていく。このルーティンを作ることができれば、日本のサッカー文化の発展、日本サッカーの発展にもつながると思っています」

 サッカーへの情熱をぶつけてくれた鈴木さんの目には、SOLTILOの明るい未来が映っていた。

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SOLTILO FAMILIA SOCCER SCHOOLの公式HPはこちら

インタビュー・文=志水麗鑑(サッカーキング・アカデミー/現フロムワン・スポーツ・アカデミー

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