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【サッカーに生きる人たち】「9時-18時」の生活で故郷から世界を見据える|堀之内聖(浦和レッドダイヤモンズ株式会社 パートナー営業部)

2016.12.27

 かつて浦和レッズの堅守を支えた男は今、「9時-18時」の生活を送っている。

 堀之内聖(ほりのうち・さとし)さんがサッカー選手からクラブスタッフへ転身したのは2014年。選手時代は、戦況を敏感に察知し、攻守のバランスを取りながら献身的なプレーに徹するDFやMFとして絶大な安心感を発していた。現在は浦和レッドダイヤモンズ株式会社 パートナー営業部で汗を流す。

 様々な企業から単に協賛してもらうだけではない。浦和レッズでは、ともに歩み、お互いがwin-winの関係で成長していく企業のことをパートナーと呼ぶ。パートナー営業部は、手を取り合ってくれる企業を発掘し、浦和レッズの存在を通じて、仲間となった企業の事業や認知度の発展をフォローしていく。

 サッカーが根付いた街、浦和で生まれ育った堀之内さんは今もサッカーの世界に生きている。スーツ姿に身を変えてもなお「ホリ」の愛称で浦和レッズサポーターに愛され続ける男が、自身の近況と未来について語ってくれた。

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34歳の新入社員はパソコン操作もおぼつかず

 僕がセカンドキャリアを考え始めたのは、30歳を過ぎた頃です。指導者の道も考えていましたが、ビジネスという未知の世界で自分の可能性を試してみたいという思いがありました。ですから、13シーズンを最後にモンテディオ山形を退団する時に浦和レッズからもらった事業部の打診は、僕自身の希望に合致したものでした。

 14年に入社して、パートナー営業部に配属となり、3年目を迎えています。基本的な一日の流れとしては、朝9時に出社してメールをチェックし、その後アポがあればパートナー企業様を訪問し、アポがない時には社内で提案書などを作成しています。定時は18時ですが、場合によってはその後も仕事が入ることもあります。

 34歳の新入社員当時は、わからないことが多すぎて、いろいろな研修に参加しました。新卒の若手社員に交ざって参加した外部の新人研修、パートナー企業様である文化シヤッター株式会社さんへのインターン研修などで、基本的なことから営業のノウハウまでたくさんのことを教えていただき、社会人としての基礎づくりをしました。

 実を言うと、パソコン操作に関してはキーボードを見ながらの文字入力ぐらいしかできず、一つひとつ覚えるところからのスタートでした。プレゼンに必要なパワーポイントは一度も使ったことがなく、上司や先輩が以前作成した資料を見よう見まねで覚えていきました。

 入社当時の忘れられないエピソードもあります。今思い出しても冷や汗が出てしまいますね(苦笑)。新規で提案に行った際に、営業部で使用している40ページもの分厚い提案書をすべて事細かに説明してしまったのです。お客様の貴重な時間を2時間半も使ってしまいました……。最後は僕も相手も汗びっしょりでした。今なら先方のニーズを聞いた上でポイントを絞って提案をしますが、あの時は無知でしたね。

 営業部員として最初に成果を出せたのは入社2年目、15年のことです。リズム時計工業株式会社さんにパートナーになっていただけました。ただ、その時は、うれしさ以上に浦和レッズのパートナーとして、いかにリズム時計さんのお力になれるかという使命感が強まったことを覚えています。

 成長という意味では、15年に参加したJリーグが立命館大学と共同で開講した「Jリーグヒューマンキャピタル(JHC)」も大きかったと思います。このJHCでは、多くの仲間もでき、さらに講義内容のすべてがビジネスマンとしての僕にとってプラスになりました。

 JHCでは、フットゴルフにも出合えました。JHCで知り合った仲間に誘われてプレーした後、SNSで「楽しかった」とつづったら、日本フットゴルフ協会の松浦新平会長から直々に連絡があったんですよ。そこからとんとん拍子に話が進み、16年1月にアルゼンチンで行われたワールドカップに選手として出場することになったんです。

 フットゴルフでは実は選手に戻れるんですよ。W杯の時も、大会前夜は緊張で眠れず、大会当日1打目のティーショットでは、ただまっすぐ蹴れば良いだけなのに体が震えてしまって(苦笑)。サッカー選手を引退してから忘れていた感覚がよみがえってきました。選手としての緊張感やプレッシャーがまた心地いいんですよね。一方で、選手でありながら運営面にも目が行ってしまいました。「職業病」みたいなものですかね。

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©Keita Haginiwa 2016 フットゴルフは文字どおり「足でプレーするゴルフ」。「選手としての緊張感やプレッシャーがまた心地いいんです」と話す

©Keita Haginiwa 2016
フットゴルフは文字どおり「足でプレーするゴルフ」。「選手としての緊張感やプレッシャーがまた心地いいんです」と話す

「いかに良い準備ができるかがとても重要」

 パートナー営業部は、パートナー企業様に対してチームとして向き合っていきます。僕は頭が「サッカー脳」なので、部署のメンバーをサッカーにたとえてしまいます(笑)。現在のメンバーは9名。監督やゲームメーカー、鉄壁のDFなどにたとえています。当然企業様のニーズによって、そのような提案をするかも変わります。その中で僕は「この企業と向き合うなら自分はどのポジション、どんなプレーが良いかな」ということを常に考えています。

 他部署との連携も重要です。パートナー企業様からの依頼により、選手起用のイベントを実施する場合は強化部や広報部、スタジアムイベントを行う場合は競技運営部、地域イベントであればホームタウン普及部など、様々な部署がかかわってきます。

 このような他部署との連携の中で、他部署の業務についても学んでいきたいと思っています。

 理想を言うと、自分自身がすべての部署で経験を積み、自分の経験値をもとに対応できるようになりたいと強く思っているんです。やはり、同じ「知っている」でも実体験か否かでは大きな差がありますからね。

 僕自身の座右の銘に「百聞は一見にしかず」というものがあります。実は、この後には続きがあるんですよ。「百聞は一見にしかず」の後に、「百見は一考にしかず」、「百考は一行にしかず」と続き、最後は「百行は一果にしかず」と締めます。

 後世に付け加えられた言葉のようですが、この言葉を知った時に僕の中に深く入り込んできました。見て、考えて、行動して、結果として成果まで結びつける。そうしなくては意味がないということです。

 実際、営業はどれだけ提案しても成約まで至らなくては評価されません。サッカーと同じで、結果を出すためには、いかに良い準備ができるかがとても重要です。サッカー選手としてプレーしていた時も、営業マンとして働いている今も準備の大切さやそこに至るマインドは共通するものだと感じています。良い準備をしてたくさんの選択肢を持っておけば、どんな状況でも対応できますからね。

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地域密着からアジア、そして世界へ

 5歳でサッカーを始めてから30年、そのうちプロ生活は12年。幸運なことに、僕は浦和レッズが多くのタイトルを獲得した時代に選手として携わることができました。試合数や実績以上に良いサッカー人生を送れたと思います。

 ただ、人生はまだまだこれからです。やはり浦和レッズをより一層大きくしていきたいですね。アジア、そして将来的には世界を舞台とする真のビッグクラブにしていくためにも、一番の基本となる地域密着をまずは大切にしたいと思います。僕は横浜FCやモンテディオ山形でもプレーをしていたので、その土地ごとのサッカーに対する考え方とファンやサポーターに触れることができました。この貴重な経験を、今後、浦和レッズで未来へとつなげていきたいですね。

 埼玉県、さいたま市の人口からすると浦和レッズのファン・サポーターになっていただく余地は非常に多く、また近隣でも遠方でも少しでも多くの方が浦和レッズを生活の一部にしてくれたら、これ以上に幸せなことはありません。僕が現役の頃のようにスタジアムに4万、5万人のファン・サポーターが入るのが当たり前になるように、今後もビジネスマンという立場からレッズのファン・サポーターを増やし続けたいですね。

 愛する浦和レッズを世界に名立たるビッグクラブにするというビジョンのために、今自分はどうあるべきかを考える。現役時代に見せていた堅実で誠実な生き方は今も健在だった。

「僕、欲張りなんで何でも経験したいんですよ!」と、いたずらそうにほほ笑んだかつての背番号20は、プレーヤーとは別の角度からサッカーにかかわる刺激的な日々を送っている。笑顔で明朗に語ってくれた堀之内さんの目は、温かくもまっすぐ前を見据えていた。

浦和レッズの最新情報はこちらから

インタビュー・文=横山優美(サッカーキング・アカデミー/現フロムワン・スポーツ・アカデミー
写真=萩庭桂太(フットゴルフ)、金子拓弥(人物/サッカーキング・アカデミー/現フロムワン・スポーツ・アカデミー

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