2016.09.16

中村憲剛×又吉直樹『僕たち、ちゃんと考えてます。』第9回:“小説を書いている芸人”の生かし方。

中村憲剛×又吉直樹『僕たち、ちゃんと考えてます。』

二人の頭の中は、一体どうなっているのか?
二人が醸し出す独特の雰囲気、その化学反応を見てみたい。
そんな発想がきっかけで、
中村憲剛選手(川崎フロンターレ)と
又吉直樹さん(ピース)との対談が実現しました。

今回は『マエストロ×作家の“創造力”』というテーマをぶつけてみましたが、
会話が弾みすぎて、自由気ままな展開に。
ゆるい話から、深い話まで。
中村選手と又吉さん、二人のトークをお楽しみください。
全10回の連載です。

“小説を書いている芸人”の生かし方。

新作は書いてるんですか?

今、また書いてます。書いてる最中です。

すごいよ。お笑い芸人が本を書くって。

憲剛さんもサッカー小説を書いたらいいじゃないですか。

いやいやいや(笑)。リアルすぎて全然面白くないと思う。もう本当に尊敬に値するんですよね。いつ書いているんですか?

夜中ですね。芸人の仕事が終わった後に書いたりしてます。

寝てます?

まあ、最近はバランスよくやるようにはしてるんです。『火花』の時は結構集中して、朝までずっと書いてたんですけど。

すげえ。又吉さんのこれからのプランニングってあるんですか? すごく気になります。

そうですね。いろいろ考えてるのはありますけど、芥川賞をいただいたことによって、周りがちょっと僕に合わせすぎてくれているから……それって、僕のプレースタイルに合わないんですよ(苦笑)。

ああ(笑)。

なんか、大きな輪の中からちょっと外れたところで、「あかんかったらこっちに振ってくださいね。こっちはほぼプラン見えてますから」っていう立ち位置でやっていたのが、真ん中に置かれると……。

今は、思いっきりスポットライトが当たってますもんね。

やっぱり真ん中のポジションの人ってすごいんやなってことがすごく分かるというか。これだけ自分の話題が中心になるとやりにくい。今までは中心の選手が「すごいな、すごいな、すごいな。で、又吉どうや?」と進めてくれて、「いや、僕なんか」と言って全く真逆のことを言って、「お前、あかんな!」ってスタイルでやってきたんですよ。それが、いざ真ん中でゲームを作っていくとなった時に「向いてないなあ」って思いますよね(笑)。

やっぱりサイドプレーヤーだったなって(笑)。

そうです(笑)。

僕はバラエティ番組が大好きなのでいろいろ見るんですけど、刺されていく又吉さんのリアクションを見ると「しんどそうだな」って思う時が結構あるんですよ。「そんなに俺に来るなよ」みたいな(笑)。真ん中にいると黙ってしまうところがあって、振る人も困るみたいな。

そうなんですよね。今は、自分のやり方どおりにできるとは限らへんから、そこをホンマにゼロから作っていっている感じですね。もちろん、そういう話題は一過性のものやから。新しいチームに入って10番を着けさせてもらったけど、「あ、こいつやっぱりサイドの選手やねんな」ってなって、一度補欠に回って、またトレーニングを積んで試合に出ていかなあかんっていう状況なんですけど(笑)。それでもね、一つ特徴が加わったわけじゃないですか。

うん。分かる、分かる。

“小説を書いている芸人”っていうところが。それをどう生かせばいいのかは、今、結構考えていますけどね。

今も?

はい。

綾部さんとの立ち位置にも変化が出てきましたもんね。

そうなんですよ。そこは完全にチームプレーやから。

コンビでね。

僕らって、テレビに出る前の若手の頃から、それぞれ別のライブに出ることが多かったんですよ。僕は大喜利やギャグ系で、相方はトーク系に出ていて、芸人になってからも割と個々の仕事が多かったんですけど、受賞した直後はマネージャーに「ちょっと今だけプレースタイルが定まってないから、綾部を横に置いといてくれ」と言いましたね。

あ、そうだったんですね。

僕は「芥川賞なんて~」とは言われへんし、そこはきちんとやらなあかん。でも、そうなった時に、笑いがないままホンマに帰りたくなくて。一人で行くとそこだけで終わっちゃうから、隣にいると全部綾部で落とせるっていう。でも、あいつがおいしくしすぎたんじゃないかって(笑)。

確かに(笑)。「先生、先生」言ってますからね。

そう。今までは「綾部がモテてる」とか「綾部が人気ある」でやってきて、ずっと「綾部は人気あるけど、僕は……」って立ち位置ですごくやりやすかったんですよ。まあ、今はそれが逆になったんですけど、綾部がおってくれたほうが助かるんです。30代半ばになって、チームプレーを覚えてきたというか。

個人プレー大好きな選手がチームプレーを覚えた(笑)。

 

つづきます(最終回は17日7時公開)

 

取材・構成=高尾太恵子/写真=岩本良介

 

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中村憲剛(なかむら・けんご)
1980年10月31日生まれ、東京都出身。東京都立久留米高から中央大を経て、2003年に川崎フロンターレへ加入。初年度から出場機会を得ると、2年目からはボランチへとコンバートされて主力に定着。2006年から2010年まで5年連続でJリーグベストイレブンに選出された。また、2012年から川崎の主将に就任してチームをけん引。視野の広さとパスセンスはリーグ屈指で、35歳となった今もなお強烈な存在感を放つ。
又吉直樹(またよし・なおき)
1980年6月2日生まれ、大阪府出身。お笑い芸人、脚本家、小説家、俳人といった様々な顔を持つ。2003年に綾部祐二と「ピース」を結成し、ボケを担当。キングオブコント2010で準優勝、同年のM-1グランプリで4位に入り、一躍脚光を浴びる。趣味の読書が高じて書評やコラムなどの執筆活動を行うと、2015年に自身が書いた純文学小説『火花』で第153回芥川龍之介賞を受賞。個性的なファッションからオシャレ芸人との呼び声も高い。

プレゼント

中村憲剛選手と又吉直樹さんの直筆サイン入り色紙を3名様にプレゼント!
応募期間
:2016年9月8日(木)〜2016年9月18日(日)23:59まで

たくさんのご応募ありがとうございました!

 

INFORMATION
スポーツニュース番組『追跡 LIVE! Sports ウォッチャー』(テレビ東京系)
(月~金 23:58~24:12/土 23:00~23:55/日 22:54~23:30)
MC:ピース
コメンテーター:中畑清、セルジオ越後、緒方耕一(日曜のみ)、秋田豊

 

今回の撮影で利用したお店
BLUE BOOKS café
〒152-0035 東京都目黒区自由が丘2-9-15 ユレカビル B1F

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