2016.04.29

槙野智章 × AK-69 #闘い続ける男

Photo by Shin-ichiro KANEKO

浦和レッズの選手と異業種の多様なプロフェッショナルが熱いトークを展開する連載対談企画『RS(アールズ)』。
第1弾は槙野智章とヒップホップ・アーティストのAK-69が『#闘い続ける男』をテーマに語り尽くす。

槙野智章(まきの・ともあき)
1987年5月11日生まれ、広島県出身。06年にサンフレッチェ広島でプロデビューし、10年にケルンへ移籍。ドイツ・ブンデスリーガでのプレーを経て、12年から浦和レッズに加入する。日本代表では各年代別代表を経験して10年にA代表デビューを飾った。攻守に渡り、気持ちを全面に出したプレーを発揮。その明るい性格から、ピッチ内外でムードメーカーとなっている。
AK-69(エーケーシックスティーナイン)
愛知県出身のヒップホップ・アーティスト。04年のソロ活動開始からインディペンデントな活動にこだわり、12年にはNYで楽曲制作を兼ねた武者修行を敢行。14年に日本武道館を含むアリーナツアーを成功させた。16年自らが代表を務める『株式会社Flying B Entertainment』を立ち上げる。ストレートな歌詞は多くの共感を呼び、プロアスリートから強い支持を受ける。

自分を魅せるとは何か。
そして、これからの自分とは。

普段からプライベートで交流があるとお聞きしましたが、きっかけは何だったんですか?

槙野 僕がAKさん(AK-69)の大ファンだったんです。ずっとCDを聴いていたし、ライブDVDも見ていたんです。浦和レッズでは僕が“音楽係”なので、移動中のバスではいつもAKさんの曲を流していました。2014年の武道館ライブ(『Road to The Independent King 〜THE FUTURE〜』)に行ったのが最初ですよね?

AK-69 それが最初の出会いだったね。

槙野 ライブが終わった後に、チームメイトとレッズのユニフォームに背番号「69」を入れて渡しに行ったんですけど、関係者の人に「入れません」って言われて。スタッフさんに止められながらも、「AKさん! 浦和レッズの槙野です! 大ファンなんです。これだけ受け取ってください!!」って必死に渡して(笑)。その3秒くらいですよね。

AK-69 うん。僕はすでに交流があったボクシングの井岡(一翔)から、「友達の槙野がすごく会いたがっているから紹介したい」と聞いていて。「ああ、槙野くん」っていうリアクションだったと思う(笑)。本当に来てくれて、すごく驚いたけど。

槙野 僕はAKさんが書く歌詞が好きなんですけど、何よりもMCが大好き。メッセージがドンと伝わってくるんです。AKさんは男が憧れるアーティストですよ。

AK-69 全部嘘だけどね(笑)。

槙野 またまた(爆笑)。自分と重なることが多くて、歌詞のメッセージにすごく共感するんです。本当にファンだから「俺に言われている!」って勝手に思っちゃって。登場曲に使っているプロ野球選手もたくさんいるし、最近は日本代表選手の間でもすごい人気なんですよ。
(編集部注:プロ野球選手の入場曲使用数は、2014年度から2年連続で1位を記録。2014年度は25選手、29曲使用。2015年度も20選手が使用)

AK-69 ホントに? 光栄です!

槙野 実は日本代表でも“音楽係”なんですけど、海外組の選手たちにも好評で、『Flying B』を聴いて「すごくいい!」と言っていましたよ。練習前や試合前にも聴いています。

Photo by Shin-ichiro KANEKO

AK-69さんは、槙野選手の試合を実際に観戦されたんですよね?

AK-69 実は、それが人生初のスタジアム観戦だったんです。俺は名古屋出身で、親父が中日ドラゴンズのファンだったんで、野球はすごく慣れ親しんでいたんですけど、Jリーグはあんまり見たことがなくて。槙野くんに招待してもらって、埼玉スタジアムで試合を見た時はすげー感動した。今まで行かなかったことを後悔したくらい、すごく楽しくて刺激的だった。槙野くんが実際に戦っているところを見るとこっちも熱くなるし、浦和戦の次に行った代表戦ではゴールを決めるもんだから、またもやすっげー感動したし。

槙野 そうだ、そうだ! イラク戦(2015年6月11日/キリンチャレンジカップ2015)でゴールを決めた時ですよね。

AK-69 試合が終わって、ユニフォームをスタンドまで持って来てくれて。

槙野 汗でびっちょびちょのやつね(笑)。

AK-69 すごくうれしかったよ。「こんなことしてもらえて、俺はサッカーファンからしたらすごく幸運なやつなんじゃないか」と思っていたら、周りにいたお客さんが寄って来たんだよ。俺も一応こういう仕事しているからさ、反射的にサインや写真を求められている体勢になったんだけど、「ユニフォームの匂いを嗅がせてください!」って言われて(笑)。

槙野 (爆笑)。

AK-69 槙野くんがスタンドに投げたユニフォームを取った“ただの幸運な男”に見えたんだと思う(笑)。その後、ある親子に「写真撮ってもらっていいですか?」って声をかけられたから、「今度こそ俺か!」と思ったんだけど、「すみません。(ユニフォームを指差しながら)それ、持っておいてもらっていいですか?」って言われてしまって(苦笑)。

槙野 え、AKさんは写ってないんですか?(笑)

AK-69 いや、写っているけど、ただユニフォームを持っている人やね(笑)。でも、そのユニフォームは俺の宝物。そのまま洗わずに、槙野くんの汗ごと干して……。

槙野 それ絶対に臭いでしょ?(笑)

AK-69 クローゼットの中にスポーツ系ウエアをまとめた一角があるんだけど、一番先頭にかけているから。大事なユニフォームだよ。

槙野 うれしいなあ。ありがとうございます! 僕の片思いが実りましたね(笑)。

Photo by Shin-ichiro KANEKO

槙野選手はピッチ上で熱いプレーを見せてくれますし、AK-69さんも想いが込もった楽曲を提供されています。その熱い想いや感情は、何に掻き立てられているのでしょう?

槙野 僕は、決してうまいプレーヤーじゃないんです。サッカー選手は足の速さ、身体の強さ、テクニック、シュート……それぞれ輝くものを持っているけど、僕はどちらかというと魂でプレーするスタイル。うまさでは勝てないから、メンタルで勝つしかないって分かっている。その気持ちの部分を取ったら、『自分』は輝けない。ボールを蹴るのが下手でも、ここまでできるってことを伝えたいんです。

AK-69 なるほど。

槙野 自分の発言にも責任を持つし、嘘はつかない。だからこそ、AKさんの言葉が俺にはすごく響くんですよ。

AK-69 今、やっぱり俺は槙野くんと同じタイプなんだなって思った。似たようなものが共鳴し合うことを再確認させてもらったよ。アーティストにもいろいろなタイプがいるんだけど、俺は大きく二つに分かれると思っている。音楽性が突出していて、何も語らずとも音楽だけで勝負するタイプと、音楽性の高さではなく人間味を出して、「なんかいい」と思わせるタイプ。自分も音楽の才能があるとは思っていなくて、ラップを始めた時から同じ世代のアーティストや地元の目立っていたMCたちと比較して、正直、スキル面では勝てないと心の中で思っていたからね。

槙野 そうだったんですね。

AK-69 しかも、ヒップホップの中でも『ギャングスタ・ラップ』という世界的にはあまり認知されていないジャンルだから、日本の音楽シーンでは別に必要とされないんだよ。だから、大きな契約もできない。だったら、自分の実力と結果で勝負するしかないって思いながらずっと戦ってきた。これが俺の“生き様”。槙野くんみたいに自分と戦い続けるアスリートや、極限まで自分と戦っている人たちに俺のアティテュード(姿勢)が響いていると思うと、同じ気持ちなんだなって。ジャンルは違っても、戦っている人がいることを再確認できる。

槙野 本当に多くのアスリートから支持されていますもんね。

AK-69 俺は競技をしているわけでもないし、得意なスポーツもないんだけどね。音楽の素晴らしいところは、人にメッセージを伝えられたり、力や勇気を与えられること。俺は自分が戦っている中で、そういうメッセージを紡ぎながら、聴いている人に想いを届けたいと思っている。俺は器用な人間じゃないから、人付き合いで躓いたりすることもあるんだけど。ウサギとカメじゃないけど、たとえカメだろうと自分の力を信じて続けていれば、絶対に壁は突破できると思っている。

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お二人の熱い気持ちが、どうやってかたちになり、表現されているのかが分かりました。では、ご自身の見られ方はどう意識されていますか?

槙野 この前、本田圭佑選手にまさにその質問をされたんですよ。サッカー選手はカテゴリ分けするとものすごい数がいて、ピラミッド型にすると日本だったらJ1、J2、J3があり、さらにその下にJFL、地域リーグと続く。大勢の選手がいて、しかも10数年のプロキャリアの中で、本田選手に「引退した後も『あいつはこういう選手だったよね』と言われるような選手になれ」と言われたんです。確かに、ただボールを蹴って勝った負けただけでは面白くない。だったら、エンターテイナーとして他の選手との違いを見せたいんです。僕は「サッカー選手っぽくないよね」って言われるのが好きなんですよ。僕にとっての褒め言葉。だからサッカーはもちろん一生懸命やるんだけど、いろいろな人と出会って、いろいろな仕事をして、発信手段をたくさん作っている。それを見てもらいたいし、知ってもらいたいんです。以前、野球ファンの方から「槙野さんが出ているバラエティ番組を見て、サッカーを好きになりました」という声をいただいてうれしかったです。サッカー選手がやっていないことをやる。それが僕の“生き様”です。

AK-69 なるほどなあ。

槙野 その反面、ピッチ上における結果も厳しい目で見られます。だからこそ、自分に対してもプレッシャーをかけているし、やりがいがあるんです。表現が合っているかは分からないんですけど、僕は“アンチ”を作ることも大事だと思っています。「あの番組で、こういう発言をしていたな」と記憶に残るくらいインパクトがあることを言ったり、行動することを心掛けている。それが自分の見せ方だと思っています。

あの髭はインパクトありましたよ(笑)。

AK-69 うん。オシャレだった。先を尖らせていたよね?

槙野 ジェルをつけて、先を尖らせていたんですけど、あまりに不評で。似合わないという声が多かったんで、さすがに剃りました(苦笑)。

AK-69 ファッション的にはすごく良かったけどね。ハットスタイルとか。

槙野 ただ試合中はハットかぶれないから(笑)。ユニフォームにはちょっと合わなかったですね(笑)。

AK-69さんは、楽曲だけではなくライブも表現の場です。

AK-69 そのとおり。アーティストにとって大事なのは“かっこいい音源”と“かっこいいライブ”だと思っているんだけど、唯一、お客さんと生のやり取りをできる場所がライブ。同じ空間で音を共有できるのはライブだけで、俺は一番大事にしている。曲間のMCをCDに入れることはできないし、同じ歌でも観客のパワーを受けて発する言葉には魂が宿るんだよね。それが言霊なんだと思う。

Photo by cherry chill will

槙野 実際ライブに行ったら、AKさんのことがより好きになりますからね。AKさんの場合はMCと曲がセットで一つの曲になっているんですよ。レッズのチームメイトでカラオケに行くことがあるんですけど、みんなAKさんのMCを記憶しているんで、まず曲間のMCを言ってから歌に入るんです。で、歌の部分を忘れていたりとか(笑)。レッズのカラオケにAKさんは欠かせない。

AK-69 マジで?(笑)うれしいなあ。今度、呼んでよ。

槙野 マジっすか?(笑)

AK-69 MCはやってもらって、歌になったら俺が出て行くから。

槙野 サプライズゲストですぐ呼びますよ!(笑)

お話を聞いていると、お互いの試合やライブから刺激を受け合っているように感じます。

AK-69 そうですね。サッカーの試合でもミスはあるだろうけど、それも全部含めて自分を“魅せる”瞬間だと思うんです。俺もそうで、満足したライブは1回もないかもしれんなあ。みんなから「良かったよ」って言ってもらえても、自分の中では反省点だらけで。特に武道館のような大きな会場でのライブは、終わった直後に達成感があるんだけど、控室に戻った瞬間に「しまったなあ」って(苦笑)。その「しまったなあ」が多い時は、頭を抱えて洗面所で泣いている時もあるからね。

槙野 それは何でですか?

AK-69 全国13都市を回るホール・ツアー(『FOR THE THRONE』)をやった時は、途中で声帯を痛めて声が出なくなった。俺からしたら13公演の中の1日かもしれないけど、お客さんからしたら楽しみにしてくれた1日だと思うから、絶対にセットリストを削ることができなくて。声が枯れても歌っていた俺を見て「感動した」って言ってくれた人もいたけど、それってプロとして失格じゃない? めっちゃ悔しいけど、自分の鍛錬が足りなかっただけだから。

槙野 それは悔しいですね。

AK-69 槙野くんだって、めっちゃ悔しい時あるでしょ?

槙野 たくさんありますよ。負けた時はもちろん、引き分けた時もロッカールームからなかなか出られないです。

AK-69 あそこに俺が行っていれば、とか?

槙野 そうですね。

AK-69 そういう思いが多ければ多いほど、落ち度もハンパないよね。

槙野 やっぱり失点に絡むポジションなので、「あの時のあれが」とか考えてしまう。たらればですけど。

AK-69 でも、それがないとね。

槙野 そこからやっぱり学ぶことも多いですし。

AK-69 うん。それを感じられないってことは、やっぱり全力じゃないってことだからさ。全力で挑んでいれば挑んでいるほど、悔しいことや反省点は絶対に出てくるから。

槙野 そうですよね。うちのチームは、そういう時にヘラヘラしていたり、落ち込んでいない選手はいないですよ。ミスについてお互いが腹を割ってしゃべっている選手は、一緒にいいプレーができる。

AK-69 間違いない。それはアーティストも一緒だよ。「楽しかったからいいじゃん。もう終わったから、次々!」と言っているうちは成長できない。

悔しさが人を成長させますよね。

AK-69 常に悔しいですけどね。俺は「もっとこうなりたい!」という気持ちが燃料になる。人に「いい」と言ってもらうことは気持ちいいんだけど、素直に「だろ?」って思えないんだよなあ。むしろ「全然まだまだ」って思っちゃう。

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槙野 AKさんが言った通り、僕も満足できない。チームでは試合に出ているけど、今回の代表戦(3月に開催されたロシアW杯アジア2次予選の2試合)では出場機会がなかった。でも、不思議なことにサッカーがもっと好きになったんですよね。自分が不利な時ほどやらないといけないことがたくさん見えたし、他の選手のサッカーに対する考えを聞いた時に、「俺はまだ甘いな」って素直に思ったんです。「もっと情熱を注ぎ込める!」と思えた代表期間だった。もっとうまくなれるし、もっと強くなれる。そう思ったら、この歳になってさらにサッカーが好きになったんですよ。僕は、自分にとってマイナスなことが起きても落ち込んだりしない。むしろ、何だか楽しみで仕方ないんですよ。

AK-69 なるほどね。俺はデビュー当時から歌とラップの両刀でやっていて、シンガーから刺激を受けることは多いけど、同じジャンルで刺激を感じることはほとんどないかな。歌一本で勝負している人のレコーディングを見て、本気で歌を辞めたくなるくらい(笑)。でも、音楽を作ることに関して「かっこいいな。俺も真似したい」っていう憧れを抱いてしまうと、オリジナリティがどんどんなくなってしまう。もちろん、かっこいいMCに感動したり、「こういうところいいな」と思ったりもするけど、それは自分が“人とは違う”ことを確認している意識のほうが大きいかな。俺は、オリジナリティを削ぐような刺激を入れないようにしているのかもしれない。矢沢(永吉)さんやドリカム(DREAMS COME TRUE)さんのライブを見た時は、すっ飛ばされるけど(笑)。

槙野選手のプレーや言葉を見聞きした時のほうがインスパイアされるのでは?

AK-69 そうですね。そのほうが刺激は大きい。天才的な人もいるけど、泥臭さを持って一流を貫いている人を見た時の刺激はハンパないから。

具体的な選手をイメージして書いた曲はありますか? 浦和レッズが2015明治安田生命J1リーグ・ファーストステージを無敗優勝した時には、非公式応援ソングを作られたとか。

AK-69 勝手に『THE RED MAGIC -Red Diamonds Remix-』を作りました(笑)。

槙野 これは歌詞がめっちゃかっこいい。レッズバージョンを聴きすぎて、原曲の歌詞を忘れちゃうくらい(笑)。カラオケでもよく歌いますよ。

AK-69 その他には、谷繁(元信)さんをイメージして作った『SWAG IN DA BAG』だったり、井岡にすごくインスパイアされて作った『ロッカールーム -Go Hard or Go Home-』という曲があるかな。やっぱり一流の人から受ける刺激は大きいよね。俺って、周囲からは新しいフェーズに向かって順風満帆に進んでいるように見えているのかもしれない。でも、今は新しい環境に自分の城を築き直しているところで、実はすごく不安なんだよ。ヒップホップの世界で頂点に立って、二番手がだいぶ遠くにいる状況で、初めて追われる不安を感じている。追うものがある時って、なりふり構わずいけるんだよね。追うものがなくなった瞬間に、突然不安が襲ってくる。ちょうどホールツアーが終わった頃、心にぽっかりと穴が空いたような。初めて明確な目標を失ってしまって。でも、また見つけたんだよなあ。音楽業界を見渡したら、化け物みたいな人がいっぱいいてさ。さっき槙野くんが言っていたみたいに、ワクワクしている自分がいるんだよね。それに、俺たちみたいにずっとストリートでやってきた人じゃないアーティストが業界を圧巻していたりするのを見て、「俺が違いを見せてやっからな」と思って。

槙野 いいですね。

AK-69 やっぱり俺にしかできないことがあるはずで、それがさらなるビッグバンを起こせるんじゃないかなって。その闘志に火がついて、俺にはやらなあかんことがいっぱいあると思ったんだよね。だから今はすっげーワクワクしてる。「またサッカーが好きになった」っていう槙野くんの気持ちがすごく分かる。

追われる立場という意味では、浦和レッズも同じなのでは?

槙野 そうなんですよ。今、AKさんの言葉がすごく自分と重なっています。僕らも追われる立場として戦っていて、でも近年は失速の浦和と言われている。開幕から上位につけながらも、最後に追い抜かれてしまうのがここ数年の浦和なんで、今年こそは絶対に下からのプレッシャーを跳ね退けて、タイトルを取ります!

AK-69 いやあ、楽しみだな。

Photo by Shin-ichiro KANEKO

槙野選手はドイツ、AK-69さんはニューヨークで挑戦されていますが、お二人にとって海外に挑戦する意義とは?

AK-69 無限の可能性を感じることができるんですよ。俺にとっては“ニューヨーク=世界”だから、世界の広さを感じたし、何よりも己を知ることができた貴重な経験だった。日本人のオリジナリティを知るきっかけになって、「俺は俺でいいんだ」とも思えた。「俺はやっぱり、世界に俺しかいない」と気付かされるよ。

槙野 いいですね。僕も海外挑戦(編集部注:2010〜2011年にドイツのケルンでプレー)は得るものしかなかった。数字上の結果は残せなかったけど、あの経験は自分にとって財産ですから。欲を言えばもう一回行きたいし、まだまだ僕の野望と夢は海外に向いている。まだ日本人がプレーしていないチームにも興味があるんです。その国で日本人の象徴になりたいんですよ。今、日本人がイギリスに行ったら「オカザキ」って言われるだろうし、イタリアに行くと「ホンダ」、「ナガトモ」と言われる。その地で活躍して、その国の人から名前を呼ばれるような選手になりたい。

AK-69 それはヤバいね。

槙野 ヤバいですよね。

Photo by Shin-ichiro KANEKO

今も“闘い続けている”お二人にとってはすべてが通過点だと思うのですが、今挑戦したい「大きな野望」があれば教えてください。

槙野 僕は、やっぱり日本でサッカー文化を盛り上げたいんです。この前、久しぶりに日本代表戦のチケットが完売しなくて、選手間でも話に挙がったんです。週末の試合に向けてスタジアムに行くことが減ったり、メディアが取り上げるサッカー枠が少しずつ減ってきているのは事実なんですよね。だからこそ、どうにかしてサッカー熱を高めたい。情熱を注ぎ込んで、少しでも多くの人に興味を持ってもらいたいんです。何より素晴らしい質を見せないといけないと思っています。「もう一度見に行きたい」と思ってもらえるようなサッカーをして、「あの選手を見に行きたい」と思われる選手になるべく、サッカー界を盛り上げていきたいです。

AK-69 具体的に表現するのは難しいんだけど、この燃え滾っている自分のバイブスを曲にぶつけて、もう一段階上のステージに行きたい。オリコンチャートで1位も取りたいんだよね。DVDでは1位を取ったことがあるんだけど、オリジナルアルバムは2位までしかなくって。たかがチャートなんだけど、ガキの頃のライブでも「俺が一番を取ってやるから!」と宣言しているし、有言実行が俺の信条なんで。あとは、ドーム規模でライブができるくらいになりたい。同時に、自分の事務所を立ち上げたということもあって、この世にかっこいいアーティストを送り出したい。槙野くんが言っているからではないけど、俺も日本のヒップホップ・カルチャーをもっと大きなものにできる先導者になっていきたいね。

槙野選手をイメージにして、一曲どうですか?

AK-69 え? いいんですか?(笑)1曲作れるくらいの刺激は十分もらっているからなあ。

槙野 書けます?

AK-69 「槙野がどうの〜」とかじゃなくて、ちゃんとスタイリッシュな曲をね。

槙野 歌詞に「槙野」って入ってたらおかしいですよ!(笑) まあ、本人からすると相当うれしいですけどね。カラオケでずっと入れますよ(笑)。

AK-69 ループで?(笑)

槙野 浦和レッズのバスの中でも流しちゃおう。

Photo by Shin-ichiro KANEKO

ぜひ、実現させてほしいです。

AK-69 分かりました。ぜひ!

槙野 僕が頑張らないといけないなあ。歌詞に沿ったプレーを見せないと。

AK-69 いや、俺も歌うからには頑張るよ。

取材・文=高尾太恵子/取材協力=Sound City

次回予告(5月末日に公開予定)

Photo by Masashi ADACHI

Information

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