2012.07.10

【第5回】名良橋晃&南結衣のクラブハウス潜入記

文=池田敏明
写真=市川陽介、ウニベルシダ・デ・チリ

 ガードマンが常駐し、厳重に警備された門を抜けると、右側には天然芝や人工芝のコートが何面も並び、その先には巨大なクラブハウスの建物が横たわる。突き当たりは選手たちの駐車スペースで、ヨーロッパ産の高級車がズラリ。そして建物と並んで天然芝のピッチが何面も広がり、我々が到着した時はちょうどスプリンクラーで水が捲かれているところだった。

 予想外の光景に、クラブハウス突撃取材を敢行した名良橋晃さんは「日本での知名度は低いですけど、これは紛れもなくビッグクラブですね」と威圧されていた。 


 
 我々を案内してくれた広報担当のマルセロ・ロペス氏によると、この施設は2010年に完成したという。ヨーロッパや南米のビッグクラブに調査員を派遣し、各クラブハウスの長所を融合させて作り上げたもので、ホセ・ユラセック会長曰く「建設費は1400万ドル(約11億2000万円)」。記者会見場、ジム、サロン、ロッカールーム、用具室と、すべての施設が衝撃的だった。 

 また、ユラセック会長は「これは若者を育成するための施設だ」とも教えてくれた。その言葉を象徴するように、クラブハウスの2回には学校も併設されている。特別に許可を得て教室に潜入すると、行われていたのは英語の授業。チリはスペイン語圏だが、将来世界中へ羽ばたくことを想定しての教育だという。下部組織に所属する若者たちが、真剣なまなざしで教師の声に耳を傾けていた。 


 
 明日のスターを夢見る若者たちの実力を試そうと、名良橋さんがユースチームの練習に参加することになった。当初はトップチームの練習への参加を打診したのだが、「ホルヘ・サンパオリ監督が許すはずがない」と難色を示され、代替案として実現したものだ。

「どれほどのものか試してやりますよ」と意気込んでピッチに足を踏み入れた名良橋さんだったが、時差ボケや長期移動による疲労の影響もあってなかなか本領発揮とはいかず、途中で無念のリタイヤ。それでも若者たちの実力は肌で感じたようで、「本当にレベルが高い。きっとこの中から、明日のスターが現れることでしょう」と感想を述べていた。 
 

 育成を重視するクラブの象徴となっているのが、今年トップチームに昇格した18歳のFWアンジェロ・エンリケス。ティーンエイジャーとは思えぬ落ち着きぶりで名良橋さんのインタビューに応じたエンリケスは、「自分の仕事は得点を奪うこと」ときっぱり。

「ウニベルシダ・デ・チリのスタープレーヤーの仲間入りすることが僕の夢。そのために普段から自分にハードワークを課し、試合で100パーセントの力を発揮し続けたい」と抱負を語ってくれた。 
 

 ウニベルシダ・デ・チリには女子チームもあり、今回はクラブ側のご厚意によって結衣ちゃんの練習参加も実現した。「U」のロゴが入ったトレーニングウェアに着替えた結衣ちゃん、「フットサルしかやったことなくて、フルコートのサッカーは初めてなんですけど……」と少し不安げな表情。

 練習開始当初は言葉が通じないこともあって戸惑いを見せていたが、徐々に順応し軽快な動きを披露。トレーニング後半に行われたゲームではFWに入り、ボールを持つと何故か相手DFが金縛りに遭うという“怪現象”のアシストもあって1ゴールを記録。全体練習後には監督からシュートの蹴り方について熱血指導を受け、チームメートたちからは「明日も来てね~」とお誘いを受けるなど、完全に打ち解けていた。

 ちなみに結衣ちゃん、クラブの男性スタッフから大人気で施設内を歩くたびに声を掛けられていたため、「チリでデビューしようかな」と、本気とも冗談とも取れぬつぶやきを発していた。

【動画編】名良橋晃&南結衣のクラブハウス潜入記