
国内で絶対的ストライカーとしての地位を得た岡崎慎司は、2011年、さらなる成長を求めてドイツに渡った。移籍当初、フォワードとして使われることも少なく、スタメンを外れることもあった。フォワードとして生きてきた男にとって、それは決して納得できるものではなかった。「俺には何かが足りない」。岡崎は悩んだ。岡崎の武器はオフ・ザ・ボールでの動きだ。決して俊足ではない。しかし、誰よりも速く一歩を踏み出し、一瞬でマークを外して、ディフェンスの裏でパスを受ける。だからこそゴールを量産できていたのだ。ドイツ移籍当初は、その強みを活かすことができなかった。プレーに迷いがあったと岡崎は言う。そして、2013年6月、フォワードとして勝負できる環境を求めて、さらに移籍。ここで岡崎は迷いを払拭した。一瞬の動きという武器を活かして、自分らしいプレーで勝負しようと決めた。その結果、岡崎はゴールを量産した。それだけではない。ボールを扱う技術も格段にアップした。鋭いターンや技ありのフェイントでディフェンス陣を翻弄し、シュートまで持っていくことも多い。今や誰もが認める絶対的ストライカーだ。それでも岡崎は言う。「俺にはまだ足りないものがある」。岡崎はこの夏、新しいスパイクを履くことを決めた。これまで愛用していたスパイクとは、見た目にも違いのある“バサラ”というスパイクだ。それは加速力のアップと素早いターンを可能にするスパイクである。そこにはいま以上に相手より速く動き出し、抜け出したいという岡崎の強い思いがある。足りないものを少しでも補おうとする取り組みのひとつなのだ。「スパイクを変えることはチャレンジだ。もう一段階、上のレベルに行くための…。今より少しでも前に出られれば、自分はもう一段、高いレベルに行ける」。岡崎にもう迷いは無い。岡崎は“バサラ”と共に、さらなるレベルアップを図り、この夏、世界を驚かせる闘いに挑む。