
Photo by LNFS/www.lnfs.es
星翔太はフットサルの最高峰、スペインリーグのサンタコロマに所属する日本代表選手だ。ポジションは“ピヴォ”。前線で攻撃の起点となるプレーや、得点を決めることが求められる。
9月に開幕した今季のリーグ戦では、ここまで10試合4ゴール。第4節のタラベラ戦では1試合2ゴール、そのうちの1点が、並み居る選手を抑えて第4節のベストゴールに選出された(動画は
こちら 1:00~)。「ショウタ・ホシ」は他のチームから“要注意人物”としてマークされるまでになった。
「スペインでは外国人の助っ人は2枠しかありません。この2枠はクラブが助っ人としてお金をかける枠。こっちは外国人選手は“点を取ってナンボ”という目で見られるので、結果を出さないと生き残っていけません」
サンタコロマで活躍する星がスペインに渡ったのは昨年7月のことだ。Fリーグのバルドラール浦安を退団して、1部リーグのグアダラハラに加入した。移籍のきっかけは、半年前に参加した日本代表のスペイン遠征で、本場のフットサルに衝撃を受けたことだった。
「日本で行われているフットサルとは、“違うスポーツ”だと感じましたね。僕らが知っているつもりでやっていたフットサルは、フットサルじゃなかったとさえ思った。スペインのフットサルは本当に事細かで、ゴールまでの道筋や、40分間を通してのゲームプランなどが計算されているんです」
フットサルのワールドカップで2000年、2004年に2大会連続で世界一に輝いたスペインは、ブラジルと並ぶ2強だ。リーグには世界中からトップクラスの選手が集まっており、そのレベルは世界最高峰の呼び声が高い。そんな国へ、フットサルの後進国である日本から飛び込んだ。
「日本にいるときから、浦安でも代表でもスペイン人監督に指導を受けていたので、行くのが当たり前というか、そういう感覚でしたね。スペインでプレーしていた高橋健介さんの影響も大きかったです。代表合宿では同部屋になって、話を聞くことも多かったですし。『行けば自分も変われる』というよりは、『行かなければ、このレベルには到達できない』という感じがしました」
思い立ったら、すぐに行動に移す。当時付き合っていた彼女にプロポーズし、入籍するやいなや、星はすぐに奥さんを日本に残してスペインへ飛び立った。しかし、星にとってスペイン1年目は過酷なまでの試練の日々となった。
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星が加入したグアダラハラは、財政難の影響で主力クラスを大量放出。ユース上がりの10代の選手がチームの大半を占めた。星は日本人の高橋健介と共にチームを引っ張ったが、他のクラブとの実力差は明らかで、毎試合のように10点差近くつけられて敗れる日々が続いた。最終成績は0勝3分け27敗。30試合を戦って一度も勝てなかった。
苦しめられたのはピッチの中だけではない。ピッチの外では、クラブから給料が最初の2カ月以外は支払われず、選手たちが抗議の意味を込めてリーグ戦をボイコットするまでの状況になった。
「僕自身としてはボイコットはしたくなかった。でも、『みんなで決めたことだから』ということになって。5人集まれば試合ができると思って、出たい人を募ったら、僕と健介さんしか手を挙げなかった」
アパートのガスは止められ、寒い日でも水のシャワーを浴びた。電気を止められたときは、チームメートの部屋で寝泊まりしたこともある。日本にいれば、決して多くはないがクラブからお金がもらえ、家族や友人に囲まれて暮らすことができる。それでも、星の中に「日本に帰る」という選択肢はなかった。
「苦しいとかではなかったですね。慣れてしまったというのもありますし(苦笑)。この環境でプレーすることは、自分のためでもあるし、日本のためでもありますから。それにチームは酷かったけど、試合をしながら学ぶことはたくさんあった」
スペインで星が学んだのが、「個人戦術」と呼ばれるものだった。個人戦術はスペインが個人技で適わないブラジルに勝つために“開発”した、フットサルで有利にプレーするための考え方だ。
「例えば、『トラップしてパスを出す』というプレー1つとっても違います。日本では、『止まった位置でボールが来るのを待って、それを止めてパスを出す』というのが、スペインでは『ボールに寄って行って、ボールを動かすトラップをしてパスを出す』になる。スペインのプレーがなぜ有効なのかは、実際に見て、体感しないと、気づけないと思います」
無給で、水のシャワーを浴びながら、ボロ負けした日々。それがムダではなかったと証明したのが、スペインに移籍してから初めての国内でのプレーとなった、今年5月の日本代表対チェコ戦だ。
星は第1戦で2ゴールを挙げただけでなく、ヨーロッパ4位のチェコに何度となく脅威を与え続けた。たった1年間で、星は明らかに“別格”の存在となっていた。2部に降格したグアダラハラからサンタコロマへ移籍した星は、今シーズン、スペイン1部で唯一の日本人選手として戦い続けている。
「後続の選手たちのためにも、スペイン1部リーグでプレーして、日本人でもできるということを誰かが証明しないといけないと思いますし、そのキッカケを作らなければいけないと思っています。そうやって、日本人がどんどんスペインリーグに移籍する事ができれば、日本全体のレベルアップにも繋がると思っています」
後編へつづく
取材・文/北健一郎、髙田宗太郎
取材協力/フットサルデジタルマガジンファイブ
フットサルデジタルマガジンファイブとは
フットサル界初の電子書籍型マガジンとして7月に創刊された「ファイブ」。11月25日にリリースされた第2号ではフットサルの「個人戦術」と「観戦術」をクローズアップ。ビギナーからコアなファンまで、フットサル観をレベルアップさせる、必見の内容となっている。定価500円。
http://www.five5.jp/
Vol.2 目次
「最新版・フットサル解体新書」
●Part.1
フットサル日本代表&スペインリーガー星翔太が教える
フットサル個人戦術
●Part.2
フットサル日本代表コーチ在原正明が教える
フットサル観戦術
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