2016.12.06

慶應大MF渡辺夏彦×MF松木駿之介…國學院久我山と青森山田で過ごした真逆の高校時代に見えた共通点

サッカーキング編集部

 都内有数の進学校である國學院久我山高校出身の渡辺夏彦。高いレベルで「文武両道」を貫き、高校3年時には主将を務めるなど中心選手として全国区に名を馳せた。一方、高校サッカー界の名門、青森山田高校出身の松木駿之介。日本各地から名選手が集まるチームで厳しい鍛錬を重ね、技術と心を磨いた。対照的な高校時代を過ごした二人は現在、慶應義塾大学の先輩、後輩関係にある。彼らの会話から見えた共通点は、形は違えど高校での3年間を「全力で過ごした」こと。そして「プロサッカー選手」という夢に向かって突き進む、“ブレない心”を持っているということ。

インタビュー・文=平柳麻衣、写真=岩井規征

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■「文武両道」の学校には負けたくなかった(松木)

――お二人とも高校サッカーの名門出身です。お互いの学校に対して、どんな印象を持っていましたか?
渡辺 山田(青森山田高校)は午前中で授業が終わって、普通なら5時間目の授業が始まる時間からサッカーをしていると聞いて、生きている世界が違うなと思っていました。
松木 久我山(國學院久我山高校)は「文武両道」というイメージが強いです。山田はスポーツをやっている時間が長いだけに、そういう学校には負けたくないという気持ちがすごくありました。

――全く異なる特色に憧れることはありましたか?
渡辺 練習時間は長かったの?
松木 めっちゃ長かったです。
渡辺 それはちょっと嫌だな。僕は自分で「文武両道」という道を選んだから。
松木 僕も山田で良かったなと思っています。久我山のような「文武両道」は大切なことだと思いますけど……。
渡辺 そんなに勉強したいと思っていないでしょ?(笑)。
松木 そんなことないですよ(笑)。でも、サッカーに打ち込めたのは山田の環境のおかげですし、感謝しています。

――お二人ともサッカーのためにそれぞれの学校を選んだのですか?
渡辺 僕は久我山のサッカーはもちろん好きですけど、もし久我山が全然勉強をしない学校だったら、たぶん選んでいなかったと思います。どちらかが優先ではなく、両方ともしっかりとできる久我山を選びました。
松木 山田に入る前は「スポーツ校」というイメージしかなくて、実際に入学してみたらやはりすごい「スポーツ校」でした。サッカーだけでなく、他の部活をやっている人たちからも刺激をたくさんもらいながら生活できました。

――お互いの学校のサッカーについての印象は?
渡辺 山田のスタイルって何だろうね? どの代も絶対に強いし、うまい選手がいっぱいいるから、強いて言えば「個」かな? 
松木 代によってスタイルが全然違います。(柴崎)岳(現鹿島アントラーズ)さんの代はパスサッカーだったけど、僕たちの代はショートカウンターが軸でした。久我山は完全にパスサッカーですよね。
渡辺 そうだね。「ザ・パスサッカー」。
松木 バルセロナにたとえて書かれている記事もよく見ますし、面白いチームだなと思います。
渡辺 久我山はスタイルがはっきりしている分、パスサッカーをやりたい選手が入ってくるし、監督もそれに合った選手を使うという確固たるものがある。だから、誰が出ても代が替わってもサッカーは変わらないんだと思います。

――渡辺選手のほうが一学年上ですが、高校時代にお互いのことを知っていましたか?
松木 僕はナツくんのことを知っていたけど、ナツくんは僕のことを絶対に知らない。
渡辺 知らなかったです(苦笑)。
松木 ナツくんは高校1年の時から久我山の「1年生トリオ」(※)として有名だったので、その印象がすごく強かったです。
※編集部注:渡辺、富樫佑太(現FC琉球)、平野佑一(現国士舘大学)の3人を軸に國學院久我山は第90回全国高校選手権でベスト16進出。

――現在の久我山には、渡辺選手に憧れて入った選手が多いそうです。
松木 自分が高校に入ってみて分かったんですけど、1年生であれだけ活躍するのってやっぱり本当にすごいことなんですよね。僕が1年生の時は、3年生の中になんて絶対に入れなかったし、スピードや体つきの差がすごく大きかったですから。
渡辺 確かにスピードや体格では全然通用しなかったけど、久我山はチームにフィットすれば監督が使ってくれた。監督がそういうスタンスでなければ僕も出られなかったと思います。今年の3年生の澁谷(雅也)、名倉(巧)、知久(航介)も1年生の頃から出ていたし、スポーツ推薦で入る選手が9人しかいないので、山田に比べたら選手層が薄いと言えば薄いのかな。
松木 山田で1年生の時から試合に出るのは本当にスーパーな選手だけです。岳さんは中学3年生の時から高校の試合に出ていたらしいですけど。
渡辺 マジ?
松木 中3から飛び級で出て、高1で10番をつけていました。
渡辺 すごいな。

――高校時代で特に印象に残っている思い出を教えてください。
松木 僕はサッカーよりも3年間の寮生活のほうが印象が強いです。24時間365日、ずっとチームメートと一緒に暮らして、上下関係も厳しかったです。
渡辺 大学に入って自分で時間の使い方を決められるようになって、高校時代は日々の生活がすごくシステマチックだったなと思うようになりました。朝起きて、学校に行って午後3時、4時頃まで勉強して、練習して、家に帰ってご飯を食べて、次の日に小テストがある時は勉強して、もう寝る時間になって、という生活を3年間ひたすら繰り返していました。大変だったけど、みんなで乗り越えたことが思い出に残っています。

――勉強はどれくらいしていたのですか?
渡辺 テスト前は2週間くらい全然寝ていなかったです。1年生の時はテスト期間中に練習ができなくて、選手権(全国高校サッカー選手権)の直前さえも禁止でした。2年生の時に校長先生が代わって、テストの1週間前は1時間だけ練習ができるようになって、今思えば当時は本当に頑張っていたと思います。
松木 すごいですよね。山田はテスト期間だから練習がないということは絶対になかったです。

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■来年の早慶戦は等々力が満員になります(渡辺)

――お二人とも高校サッカー出身ですが、クラブユースに対してはどんな印象を持っていますか?
渡辺 クラブユースのほうがレベルは高いですし、憧れはありました。中学から高校に上がる時、僕はそのレベルにないと思って高校サッカーを選んだので。
松木 僕は中学の時に横浜FCのジュニアユースにいて、ユースに上がれずに高校に行ったんですけど、高校サッカーを経験するとやっぱり心も体も強くなりますし、入学してからはクラブユースに対する憧れはなかったです。

――高校サッカーは冬の風物詩である選手権に注目が集まります。
渡辺 選手権は本当にすごい大会です。メディアの影響もあってたくさんの人に注目されますし、選手たちも盛り上がります。高校に入るまではそこまで意識していなかったんですけど、入学してから選手権に対する憧れが強くなりました。
松木 僕も高校に入ってからのほうが「選手権の舞台で活躍したい」という思いが強くなりました。あとはやっぱりクラブユースの人のほうが選手権への憧れは強いと思います。

――選手権に対するメディアの力の大きさを選手の立場でも感じていたのですね。
渡辺 甲子園もそうですけど、「どうしたらあれだけ注目の集まる大会を作れるのかな?」と思います。サッカーのレベルだけで言ったら高校より大学のほうが高いのに、あれだけ面白いものにできるのはやっぱりすごいです。

――メディアやファンに注目される分、プレッシャーも大きいと思います。
松木 山田は実力がありながら、なかなか全国では結果を残せていなかったので、「絶対に負けてはいけない」というプレッシャーがありました。
渡辺 久我山は山田ほどサッカーの歴史がないですし、僕が2年生の時のように東京都予選を勝ち抜けない年もあるので、予選のほうがプレッシャーが大きかったです。逆に全国では「どこまで行けるかな」と楽しんでプレーできました。

――メディアのインタビューにも抵抗はなかったですか?
松木 僕は高校の時、メディアとは全く無縁だったので、逆に「インタビューをされてみたいな」と思っていました。ナツくんはバンバン出ていたよね?
渡辺 「1年生トリオ」のおかげでね。中学まではもちろんそういうことは全くなかったので、高校生になっていきなり注目されて、高校サッカーってこういうものなんだなと思いました。

――高校と比べると大学サッカーは露出が少なく、ギャップを感じるのでは?
渡辺 選手権だけの注目度はものすごいけど、リーグ戦への注目度は大学のほうが高いと感じています。僕らは(高円宮杯U-18サッカーリーグ)プリンスリーグ関東2部だったので、山田とは違うかもしれないけど。
松木 山田は(高円宮杯U-18サッカーリーグ)プレミアリーグなので毎週注目される中で試合をしていましたけど、大学はプロのスカウトが毎試合見に来るので、そういう意味では僕もリーグ戦は大学サッカーのほうが注目度が高いと思います。

――スカウトの人がどれだけ見に来ているかという情報は結構気にしていますか?
渡辺 選手はみんなそうだと思います。
松木 高校の時はリーグ戦を戦う中で毎試合のようにプロを意識していたわけではなかったですが、大学では毎試合が勝負なんだと意識しています。
渡辺 あと注目度で言えば、慶應には幸いにも早慶戦があります。あれは本当に観客が多いですし、すごいよね。
松木 僕のサッカー人生の中で一番観客が多かったのは早慶戦ですし、幸せでしたね。

――早慶戦は学生たちの力で作り上げているところも魅力の一つですね。
松木 スタジアムを借りて、運営して、人を集めて。僕は去年裏方の仕事をしましたけど、本当にすごいと思います。
渡辺 来年は会場の等々力陸上競技場が満員になりますよ。

――何か作戦があるのですか?
渡辺 僕が企画などに携わっているのですが、作戦を考えています。
松木 ジャスティン・ビーバーを呼ぶ? 絶対満員になるよ。
渡辺 ジャスティン・ビーバーは呼ばない(笑)。だって、みんなジャスティン・ビーバーだけを見て帰っちゃったら意味がないからね。

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■お金を稼ぎたいなら就職。でも、僕はプロしか考えていない(渡辺)

――慶應大はレベルが高い選手でも、プロに行かずに就職する人が多い印象があります。
渡辺 お金を稼ぎたいなら就職したほうがいいし、安定して一生幸せに暮らせると思います。でも、プロを本当に最後まで目指す人はそれ以外に目標があるので。

――現在の慶應大には近藤貫太(元愛媛FC)選手や宮地元貴(名古屋グランパス加入内定)選手、溝渕雄志(ジェフユナイテッド千葉加入内定)選手がいます。彼らがいることによってチームのレベルや雰囲気に変化を感じますか?
松木 チームの中でプロ志望の人がすごく増えた気がします。
渡辺 一学年上の代はプロを目指す選手が多くて、すでに内定している人も含めたら7、8人くらいいます。でも、僕の代のプロ志望者は3人だけなので、学年によってバラつきがあるし、他の大学に比べたらものすごく少ないと思います。

――その中でお二人はプロを志望しています。
渡辺 僕は将来サッカーに関わる仕事がしたいと思っていますし、そのステップとしてサッカー選手がある。今はプロになることしか考えていないです。
松木 僕も小さい頃からずっとサッカーをやってきて、家族にたくさん支援してもらって、今はプロサッカー選手になることしか考えていないです。プロになりたくても届かない人は何千万人もいますし、大学サッカーからプロになれるのは毎年数十人程度で、たとえプロになれたとしても選手生活は人生の中で数年しかない。すごく夢のある職業だと思います。

――慶應大からプロに進んだ先輩たちの姿をどのように見ていますか?
渡辺 (端山)豪(現アルビレックス新潟)くんは一緒にプレーしたし仲も良かったので、Jで出ている試合をチェックしたりしています。大学時代からすごい選手でしたけど、僕もあの舞台でプレーできるように追いついて、プロの舞台でまた一緒にプレーできたらなと思っています。
松木 慶應大の先輩に限らず、同じ大学サッカーの舞台でやっていた選手がJの舞台でたくさん活躍していることは刺激になります。僕も大学を卒業して若いうちからJの舞台で活躍できる選手になりたいです。

――お二人ともすでにJクラブの練習に参加しています。
渡辺 Jクラブの練習に参加して、プロで通用する部分ともっと伸ばさないといけない部分が明確になったので、貴重な体験になりました。
松木 僕は高校の時、「プロになれたらなりたい」くらいの気持ちで、目指していながらも「僕の実力ではなれない」と思っていたんです。でも、大学に入って選抜に選んでいただいたり、プロの練習にも参加させてもらって、「プロの舞台で活躍できる選手にならないといけない」と認識するようになりました。練習参加したチームには同世代の選手もたくさんいて、高卒で入った選手は僕と同じ年齢なのに「今年結果を出さないとチームを出なきゃいけない」と話しているのを聞いて、僕もプロになったらすぐにでも結果を出さないといけないんだなと考えるようになりました。

――残りの大学生活でどれだけ成長できるかが大事だと思います。来年にはユニバーシアード大会も開催されますが、意識していますか?
渡辺 僕はめちゃくちゃ意識しています。ただ、まだメンバーには入れていないので、食い込めるように日々のリーグ戦や練習から意識してやっていきたいです。そうすれば結果はついてくると思っています。
松木 僕もすごく意識しています。でも、僕個人に圧倒的な能力があるわけではなく、チームがあっての自分だと思っているので、慶應の勝利のためにプレーすることができれば自然と評価されると思っています。

――これからどんなふうに慶應大を引っ張っていこうと思っていますか?
松木 僕はチームの中で得点を取ることが第一の役割です。まだ2年生ですけど、試合に出させてもらっている数は多いので、自分が少しでもチームを引っ張っていく気持ちを持って日々やっていますし、それを続けていきたいです。去年は攻撃の部分で自分ができたことに満足してしまっていたんですけど、今年は守備も含め、チームへの貢献度に焦点を当てて取り組んでいます。
渡辺 大学には4学年それぞれ同じくらいの部員数がいて、だからこそ3、4年生だけがチームを引っ張っていくのではなく、1、2年生の底上げが大事です。1、2年生が元気よくプレーしたり、「試合に出てやる」という気持ちを全面に出せる環境を作り出すことが上の学年の仕事。だから3年生である今年は、1、2年生が4年生についていこうと思うような環境を作りたいと思っています。あとは個人的にプレーでもっと結果を出すこと。もっと得点やアシストにこだわることができれば僕個人も生きるし、チームにも貢献できると思います。

慶應義塾大学3年 MF渡辺夏彦(わたなべ・なつひこ)

生年月日/1995年6月26日 身長・体重/171cm・63kg
FCトリプレッタから國學院久我山高校に進学。1年時に同校の「1年生トリオ」として一躍注目を集め、同年の全国高校サッカー選手権大会でベスト16進出。技術の高いパスサッカーで観客を魅了した。1、2年時は年代別の日本代表に招集されており、3年時には日本高校選抜に選出。慶應義塾大学では高校時代までに培った攻撃センスを発揮し、FWや中盤でプレーしている。


慶應義塾大学2年 MF松木駿之介(まつき・しゅんのすけ)
生年月日/1996年10月24日 身長・体重/170cm・68kg
横浜FCジュニアユースを経て青森山田高校へ。1トップとして攻撃をけん引し、3年時にはインターハイでベスト4進出。大会優秀選手に選出された。慶應義塾大学では1年時から左サイドハーフで出場を重ね、関東大学リーグ新人賞を獲得。高い跳躍力を生かしたヘディングを武器とし、点取り屋としてチームに欠かせない存在となっている。2016年全日本大学選抜。



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