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明治大FW木戸皓貴、9カ月ぶりの公式戦…芽生えたエースの自覚「感謝を忘れずに。背中でチームを引っ張っていく」

2016.05.16

約9カ月ぶりに公式戦に出場した木戸 [写真]=鈴木拓也(明大スポーツ)

文=鈴木拓也(明大スポーツ)

 紫紺のエースナンバー「10」を背負い、木戸皓貴は約9カ月ぶりに公式戦のピッチに戻ってきた。昨年8月10日、第39回総理大臣杯全日本大学サッカートーナメント2回戦の北海道教育大岩見沢校戦で先発出場した木戸だったが、55分を過ぎたところで負傷交代。ディフェンスラインの裏に出たボールを追っていったところで、右膝に激痛が走った。木戸はこの後、準優勝を果たすチームから一人先に離脱。診断結果は右膝前十字靭帯損傷で術後全治8カ月の大けが。長期離脱を余儀なくされ、パフォーマンスが完全に戻るまでは1年かかると告げられた。木戸の大学2年目のシーズン、公式戦出場はこの試合が最後となった。サッカー人生初の半年以上の離脱に動揺を隠せるはずはなかった。

「最初は本当にしんどくて、トレーニングルームでリハビリをするんですけど本当にツラくて、すぐ外に出て練習を見たり少しボールを触ったりしていました。本当はダメなんですけど(笑)。長かったんですけど、思い返すとあっという間でした。今の自分があるのはその9カ月間があるからじゃないかなと思います。3カ月くらい休んだことはありますが、半年以上休んだのは初めてですね。いい経験と言ったらあれですけど、自分と向き合うという意味ではいい期間だったと思います。いろいろな人に支えてもらいましたし、感謝を忘れずにやっていきます。自分の体のことも知ることができましたし、この先絶対にけがをしたくないと思います。そういうところは変わったんじゃないかと思います」

 そして今季、JR東日本カップ2016第90回関東大学サッカーリーグ戦第6節の駒澤大学戦。長期に渡るリハビリを経て初のベンチメンバー入り。木戸は時おりピッチに目をやりながらも黙々とウォーミングアップをこなしていく。そして3点をリードして迎えた64分。待ち続けていたその時が訪れる。「おかえり、皓貴」。スタンドにこだまする声援を一身に受け、FW丹羽詩温に代わってピッチへ――。今季初めての出場となった明治大の背番号10は、30分弱のプレーとサッカーができる喜びをかみしめるように走り続けた。

「監督からもけがをしないでやってこいと言われていたので、それを考えながらもちょっとでもいいからリーグ戦の雰囲気を思い出せればという感じでした。本当にリーグ戦は久しぶりだったので、やっぱり楽しさがありました。あとは点を取れればもっと楽しいと思うので、練習から詰めていければと思いますが、今はサッカーができることを楽しむ気持ちが強いですね。復帰して下のカテゴリーからやってきたので、応援してくれている選手の気持ちも分かりました。みんなの気持ちを背負う責任感は昨年よりも強く感じています」

 赤い彗星、東福岡高校のエースストライカーの称号を引っさげ明治大サッカー部へ入部し、ルーキーイヤーからの活躍も十分に期待されていた木戸。日本高校選抜での海外遠征やけがでチームへの合流が遅れたものの、第7節でリーグデビューを飾り、第11節ではリーグ初ゴールを奪ってみせた。東京都トーナメントでは全試合に先発出場し、明治大の5年ぶり天皇杯出場にも貢献。本戦でもヴァンフォーレ甲府との2回戦に先発フル出場し、ゲームには敗れたもののプロチームとの戦いで大きな手応えを手にした。順風満帆にも見えた大学サッカーでの船出だった。しかし、その後の後期リーグ戦11戦無敗の快進撃を見せたチームの中で、出場機会はなかなか訪れず。固定化されていくメンバーに割って入っていくことができなかった。木戸の「挑戦」のシーズン1年目は周囲の期待に結果で応え切ることはできなかった。
 
「勝負」の2年目。木戸は圧倒的な存在感を放ってピッチで躍動し続ける。「得点という結果を残さないと使ってもらえないんです」。危機感は抱くのは当然だった。昨年の明治大には和泉竜司(現名古屋グランパス)、藤本佳希(現ファジアーノ岡山)の大学屈指の強力ツートップが君臨。下級生から出場を続ける絶対的な2人からポジションを奪うのは至難の技だった。それでも途中出場となったリーグ第1節、第2節では勝負どころで2試合連続ゴールをマークすると、アミノバイタルカップでも2得点。「木戸が出れば何かが起きる」。常に前線でアグレッシブな姿勢を見せ、レギュラー奪取へ結果を残し続けた。

 典型的なストライカー気質はそのすごみを増していた。不完全燃焼に終わったルーキーイヤーは、大学レベルのパワーとスピードに順応し切ることができなかった。オフザボールの動きと天性の得点センス。自身の強みを最大限に生かすため、1年目のシーズンは大きな糧となった。「大学サッカーにようやく慣れてきました」。そう語ったのは、7月に行われた関東大学選抜候補トレーニングマッチの後だ。ハイレベルな選抜候補の中でもDFとの駆け引きを制し、ゴールを脅かすプレーを連発。明らかにスケールアップして大学2年目の夏を迎えようとしていた。だからこそ痛すぎる、悔しすぎる黄色信号だった。

「けがも実力の内だと思っています。昨年はポジション争いも激しくて、自分もどこかで無理をしていたんじゃないかと思います。思い出すと1、2年はどちらもシーズンを通してやれていなくて本当に悔しい思いをしました。試合に出られない時期があって、好調を維持していた時に大きなけがをして、後期戦はほとんどチームに貢献することができませんでした。この悔しい思いは自分自身しかわからないので、今までの悔しさを結果で晴らしてやろうという強い気持ちがあります」

 悔しさは結果で晴らす。「覚悟」の3年目、木戸は人生初の背番号「10」を背負う。今季与えられたエースナンバーは昨年まで2年間和泉が背負っていた番号。和泉は木戸が明治大への進学を決めた理由の一つでもあり、その背中を追い続けた憧れでもある。奇しくも和泉と同様に3年からエースの称号を背負うことになった。「自分も竜司君の背中を見ていろいろ真似する部分もあったので、下の後輩に目指されるような存在になっていければと思います」。期待に応える“覚悟”はできている。

 第7節専修大学戦でも2-2で迎えた83分から途中出場。ディフェンスラインの裏に抜けてシュートを放つなど、短い出場時間の中でも存在感を見せた。まだまだ万全なコンディションとは言えないが、ピッチに入ったら果たすべく義務がある。「学年は関係ありません。背中でチームを引っ張っていきます」。一番に考えるのはチームの勝利。支えてくれた人、復帰を待っていてくれた人、期待をしてくれる人。サッカーから離れる期間があったから、自分だけではなく視野を広げて周りを見ることができた。木戸は感謝の気持ちを忘れずに、明治大のエースの系譜を紡いでいく。

FW木戸皓貴(きど・こうき)
▼生年月日/1995年6月28日 ▼身長・体重/176cm・75kg
U‐18日本代表候補、日本高校選抜。東福岡高時代には13年度全国高校選手権優秀選手、13年プレミアリーグWEST得点ランキング2位タイ。今季から明治大のエースナンバー「10」を背負う。

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