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法政大の監督就任1年目で全国2位…元Jリーガー、長山一也の指導法「香川真司選手などとの対戦経験を伝えている」

2016.01.13

インタビュー・写真=平柳麻衣

 現役時代は社会人クラブやカターレ富山でプレーし、J2の舞台も経験。その後、富山のアカデミーコーチを経て2014年、母校である法政大学の監督に就任すると、1年目で総理大臣杯準優勝と関東大学1部リーグ昇格を果たした。2年目の2015シーズンは1部で上位争いに加わるなど、確実に成果を残している長山一也監督。その指導には、自身の経験が活かされている。

法政大はとことん成長できる環境

――法政大の監督として2シーズンを終えて、いかがですか?
長山 2014年は関東大学2部リーグで優勝して、総理大臣杯も決勝まで行くことができましたが、1部に上がった2015年は、目標としていた全国大会優勝やインカレ出場を逃しました。来シーズンも1部でプレーできるので、最低限の結果は出せていると思いますが、もっと選手たちにいい思いをさせてあげたかったですし、悔しさは残っています。

――長山監督自身も法政大サッカー部出身ですが、当時と現在のレベルなどの違いは感じますか?
長山 全体的な技術は、やはり今の学生の方が小さい頃からいい指導をしてもらっているので、すごく上がっていると思いますけど、僕らが学生の時は、いい意味でも悪い意味でも個性が強い人が多かったです。ピッチの中で自分を出すということに関しては、今の学生はまだまだというか、昔に比べたら個の色が薄い印象はあります。

――監督としては、もっと選手たちにアピールしてほしいと?
長山 そうですね。僕らの時はガツガツしすぎてチームがうまくいかない状況もあったので、良し悪しはありますけど、どちらが魅力的かと考えたら、自分で責任を持っていろいろな行動ができた方がいいかなと思います。そういうことも伝えながら指導しているのですが、技術は格段にうまいのに、それをピッチで出せる強いメンタリティーを持っていない選手が多いと感じます。

――「せっかく技術があるのにもったいない」という感じでしょうか?
長山 技術があるのに欲がなかったり、向上心があっても強い気持ちを維持できなかったり。全員が全員そうではないのですが、勝つことやプロを目指す中で、少しうまくいかなかった時にすぐ違う選択、楽な選択をしてしまう選手もいます。学生は結果がどうであっても挑戦し続けることができるので、もっと強い気持ちを持ってやってほしいなと思います。

――法政大は、最終的にプロを目指しているわけではない選手も多いのですか?
長山 うちの大学は就職先も充実していますし、判断するのは選手それぞれなので、就職した先でリーダーシップを取って活躍してくれれば、僕はそれも素晴らしいことだと思います。ただ、ピッチに入ったら集中してやってほしいですし、サッカーを続けると決めた学生には最後まで強い気持ちを持ってやってほしいなと思います。

――法政大の魅力はどんなところですか?
長山 少人数なので、チームのために何ができるのかを見つけて行動に移しやすい、そして自分がやったことが反映されやすいことはメリットだと思います。あと、昔からあまり先輩、後輩の上下関係がないのでみんな仲良くやっていますし、グラウンドも学校も寮から近く、山の中にあるので、すごく集中してサッカーに取り組めて、とことん成長できる環境にあると思います。

――都心の大学は誘惑も多そうです。
長山 でも、逆に僕は遊ぶことも大事だと思っているので、オンとオフの切り替えさえできればオフの日は遊んでもらいたいです。リフレッシュして次の日からのトレーニングをがんばってくれればいいと思いますし、せっかく東京に来ているので、様々な経験を積むことも大事なので。誘惑に負けるところまでハマりすぎないようであれば、大いに遊んでもらえればと思っています。

――そういった人間形成の指導も意識していますか?
長山 すごく意識しています。2014年に監督に就任してから1年半ぐらい、選手と一緒に寮生活をしたのですが、最初に来た時は玄関がすごく汚くて、自分で飲んだ牛乳パックの片付けもできていないような状況でした。やはり自分のことがしっかりできないと、プレーにも反映されると思います。例えば、攻撃に行ったまま終わるのではなく、しっかり元のポジションに戻るとか。私生活がしっかりできない選手に信頼は生まれないですし、魅力を感じません。それは選手にも伝えていますし、常に自分のいる場所や立場でできることを見つけてほしいと思っています。

――寮に入ったのは元々、選手を指導するためだったのですか?
長山 家族が富山からすぐに上京できない状況だったことも理由の一つですが、法政に来る前、あまり寮のいいうわさを聞いてなかったので、実際に生活をともにしながら改善していこうと思いました。

――寮の中で選手とサッカーの話をする機会は多かったですか?
長山 食事も一緒なので、その日の試合や練習を振り返っていろいろな話ができましたし、映像を見ながら話をすることもありました。寝る時以外はほぼ一緒なので、部屋から一歩出たらこっちも気を張りつめていましたね。

「見ていて面白いサッカー+強いサッカー」を求めてやっていきたい

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――長山監督は現役時代、カターレ富山でJ2の舞台を経験していますが、それを踏まえて選手に伝えていることはありますか?
長山 プロはスポットライトを浴びるので、いい思いをすることもありますが、それは長く続かないということも経験しています。やはり、長く続けるためには周りの何倍も努力しなくてはいけませんし、運も絶対に必要です。それを引き寄せるためには、日頃の行いや取り組みが大事だと思うので、選手にも伝えるようにしています。また、僕は今指導者をやっていますが、引退した後もクラブに必要とされる人材になってほしいなと思っています。

――監督の場合は富山で引退して、その後は富山のアカデミーコーチとなりました。引退後もクラブに必要とされるために取り組んでいたことはありますか?
長山 当たり前のことですけど、一生懸命練習に取り組んで、チームのことを考えて行動していましたし、例えばフィジカルトレーニングや素走りといったキツい練習も、手を抜かなかった自負はあります。そういったところを評価していただいたのかなと。やはり「つらい時に何ができるか」でその人の価値が決まると思うので、僕は苦しい時ほど懸命に取り組むようにしていました。

――そういった現役時代の話を法政大の選手にも伝えているのですか?
長山 僕が現役の時にセレッソ大阪にいた香川真司選手(現ドルトムント)など、今も現役でプレーしている選手の話はしています。僕が対戦して感じたプレーの質の細かな部分を伝えたり、なぜいいプレーができるのか、なぜ活躍を続けられるのかといった要因を自分なりに考えて。

――当時の香川選手にはどんな印象を持っていますか?
長山 全然ボールが取れなかったです(苦笑)。速かったし、ボールの置きどころが良かったし、ディフェンスとのタイミングも外してくるし、フィニッシュにもしっかりとこだわりを持っている。当時は20歳くらいだったのですが、ただディフェンスをかわすだけでなく、パスを通す、ゴールを決めるところまで完結していたので、ちょっと他の選手とは違いましたね。

――ちなみに、現在の大学リーグの中でずば抜けてうまいと思う選手はいますか?
長山 関西学院大学の呉屋(大翔/ガンバ大阪加入内定)選手は、点を取るために一番大事なことである「いいポジションを取れる」選手だと思います。うちも総理大臣杯で1点取られたのですが、ポジショニングやマークを外す動きはうまかったですし、ゴール前での迫力はうちの選手にないところだと思ったので、ああいうプレーを見て盗んでほしいと話しました。あと、順天堂大学の長谷川(竜也/川崎フロンターレ加入内定)選手のプレーは見ていて面白いです。

――法政大からプロ入りする選手についてもうかがいたいのですが、田代雅也選手(FC岐阜加入内定)と西室隆規選手(富山加入内定)の特長を教えてください(取材は11月中旬に実施)。
長山 田代は抜群にヘディングが強いです。今シーズンのリーグ戦ではほとんど負けなかったと思います。身長が高い選手はステップワークがあまり良くないのですが、ここ2年間で少しずつ改善されていますし、ビルドアップもだいぶ良くなりました。今後が楽しみですし、J2でもまれて、さらにレベルが高いところに行ってほしいです。

――キャプテンを務めていましたし、メンタルが強い選手だという印象があります。
長山 リーダーシップもありますし、メンタルが強いことは本当に大事です。「上でやりたい」とただ思っているのではなく、「本気でやろう、活躍しよう」という気持ちを持っています。そういう負けん気は簡単に植えつけられるものではないので、これからまた伸びると思います。

――西室選手についてはいかがですか?
長山 西室はキックの技術が高いのですが、まだプレーの判断がいい時と悪い時があります。体のサイズやスピードがあまりないので、予測したり、頭の中を整理してプレーできるようになればもっと良くなると思っています。彼もメンタルがすごく強くて負けず嫌いなので、まだまだ伸びると思いますし、富山の中心として試合に出続けて、チームを上のカテゴリーに上げたり、自分で道を切り開いていってほしいと思います。

――これまでの2年間を踏まえ、今後はどんなチームを作っていきたいですか?
長山 今シーズンは最終節の早稲田大学戦で、ある程度のサッカーができました。それをベースに、点を取りきる、失点をゼロに抑えることを突き詰めていきたいです。今はまだ、後半への入り方やゲームコントロールに課題がありますし、「いいサッカーはできるけど勝てない」という状況です。もっと試合巧者になれれば上位に行けるので、「見ていて面白いサッカー+強いサッカー」を求めてやっていきたいと思います。

――来シーズンの目標は?
長山 最低でも上位に入ってインカレに出場したいです。総理大臣杯もチームとしては3年連続で出ていますが、2014年は決勝で負けたので、次こそは優勝したいですし、リーグ戦も優勝を狙える可能性はあると思っています。

――今シーズンは早稲田大のリーグ優勝を目の前で見るという経験もしています。
長山 「その悔しさがあったから今の喜びがある」と言える状況にしたいですし、その経験を活力にしていきたいです。

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