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大宮加入内定の明治大DF山越康平「神川監督に本気で怒られて、泣いて帰った。そこから生まれ変わった」

2015.10.30

インタビュー・写真=平柳麻衣

 矢板中央高校卒業時には見えなかったプロの世界。その後、明治大学に入学しても自信が持てず、「4年生になって試合に出られればいい」とまで考えた。そこからDF山越康平が“大学屈指のセンターバック”と評されるまでに成長した大学4年間での歩み、そして来シーズンからの加入を決意した大宮アルディージャへの思いとは。

国際大会を経験して、「こういう世界に行きたい」と強く感じた

――まず、高校時代の話をお聞きしたいのですが、矢板中央高校に進学した理由を教えてください。
山越 中学3年生の時、高校3年生の代にいた富山(貴光/現大宮)先輩や湯澤(洋介/現栃木SC)先輩に憧れて、自分もここでサッカーをやりたいなと思って、矢板中央に進学することにしました。

――矢板中央では全国大会にも出場しましたが、特に記憶に残っている大会はありますか?
山越 自分は試合に出てないんですけど、1年生の時に全国高校サッカー選手権でベスト4までいったことと、自分が3年生の時に出た選手権(ベスト8進出)も思い出に残っています。

――特に印象に残っている対戦相手はいますか?
山越 高校2年生の時に、清水慎太郎選手(現大宮)がいる西武台高校とインターハイで対戦したんですけど、ものすごく強くて、何もできなかった印象があります。試合も1-3で負けてしまいました。

――高校時代はどんな練習をしていたのですか?
山越 走るメニューが多くて、練習はすごくキツかったですね。家に帰ってもクタクタですぐに寝ちゃって、本当にサッカー漬けの毎日でした。

――自主練はよくやっていたのですか?
山越 チームの練習が終わった後にみんな結構やっていましたね。僕もヘディングの練習は常にやっていました。誰かにボールを蹴ってもらって、ひたすら跳ね返すというのを何度も。

――高校卒業後、明治大学に進学した理由は?
山越 高校の一学年上の先輩が明治大に行ったことと、自分も明治大のような強豪でやりたいなと思って入学を決めました。

――入学する前のイメージと実際の大学生活で、違ったところはありますか?
山越 同学年には市立船橋高校の和泉(竜司)や青森山田高校の差波(優人)を始め、うまい選手ばかりだったので、入学前は「やっていけるのかな」と不安はありました。最初は「4年生になって試合に出られればいいな」とも思っていましたし。

――初めて試合に出たのは?
山越 1年生の前期リーグの早稲田大学戦で途中から出ました。

――出場機会を得られたきっかけは?
山越 入学したての頃は、栃木から東京に出てきたばかりで、楽しいことも多くて、サッカーに集中できてなかったんです。ある時、神川(明彦)監督(現総監督)に練習中、「何しに明治大学に来てるんだ。親の気持ちも考えろ」と本気で怒られて、そのまま泣きながら帰りました。そこから自分もいろいろ考え直して、生まれ変わったというか。あと、最初は周りのみんながうまくてなかなか自信が持てなかったんですけど、神川さんに「自分に自信を持て」と言われて、徐々に自信が深まっていって、リーグ戦に出ても「やれる」と手応えをつかめました。

――その後、2013年には東アジア競技大会のU-20代表にも選ばれました。
山越 同年代のプロの選手たちと一緒にプレーしたことや、国際大会を初めて経験できたことは、刺激になりました。特に北朝鮮戦は今までの試合の中で一番キツかったんですけど、キツい中でも「楽しいな」とか、「もっとこういう試合がしたい」と感じたんです。その大会を経て、プロになりたいと本気で思うようになりました。

――それまでは、あまりプロは意識していなかったのですか?
山越 やはり現実的ではなかったですし、自分の決意や覚悟もありませんでした。でも、その大会を経て「自分もこういう世界に行きたい」と強く感じて、覚悟を決めました。

――同年代のプロと大学生との違いは、どんなところに感じましたか?
山越 技術的には変わらないんですけど、プロの選手はサッカーで生活しているので、やっぱり意識や覚悟、気持ちの面が大学生とは違うという印象は受けました。

「待ってたぞ」と声を掛けてくれた

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――明治大の練習の特徴的な部分は?
山越 一対一や二対二など、対人の練習が多いです。大学を決める前に明治大のセカンドチームの練習に参加したんですけど、誰一人、手を抜くことなく練習していて、やっぱり明治大ってすごいなと感じたんです。今も誰一人として手を抜くことなく、みんな一生懸命やっていて、それも明治大の一つの強みだと思っています。

――まだシーズンの途中ですが、ここまでの大学4年間を振り返っていかがですか?
山越 1、2年生の頃から大きな大会では準優勝など、あと一歩のところでタイトルを逃しているので、もう準優勝はうれしくないですし、最後は何としても優勝したいという思いはあります。

――タイトルを獲得するために、足りないものは?
山越 精神的な強さや、タイトルへの強い気持ちが足りなかったのかなと考えています。

――山越選手自身はこの4年間で、どこが一番成長したと感じていますか?
山越 一番は精神面で自信を持てるようになったこと。あとは、明治大に来てビルドアップの部分は身についたと思います。高校時代はそういうスタイルではなかったので、大学でしっかりつなぐことを学び、成長したのかなと思います。また、練習中から頭を使う機会が非常に多いので、常に考えてプレーするようになりました。

――逆に、改善が必要だと感じている部分はありますか?
山越 ポジショニングや一対一の対応はもっと高めていかないと、来年Jリーグに入ったらやられてしまうなと。体ももっと強くしないと、外国人選手などを相手にした時には通用しないと感じています。

――日頃から体を強くするトレーニングは何かやっているのですか?
山越 チームの練習以外にも、体幹トレーニングは積極的にやっています。やっぱり大学では学年が上がるごとに自由な時間が増えるので、自分次第でいくらでも取り組むことができます。

――今シーズンは前期のほとんどをけがで欠場し(右ひざ半月板を負傷)、ピッチの外から明治大の試合を見ていかがでしたか?
山越 開幕3連勝して、いいスタートを切れたのですが、その後はいつもの明治大のように前期の成績は全然良くなく、自分もけがをしてチームにすごく迷惑をかけてしまったので、申し訳ないという気持ちでリハビリや応援をしていました。それまでの3年間で試合に出させてもらった自分が、今年は守備面を引っ張る役割を担わなければいけないと思っていたので。

――7月のユニバーシアード大会もメンバーには選ばれましたが、辞退となりました。
山越 低学年の頃から、ユニバーシアードは自分の大学生活の集大成になる世界大会として目標にしていました。神川さんがユニバーシアード代表の監督になって、最後に神川さんと金メダルを取って終えたかったです。

――辞退することが決まって、そこからどのように気持ちを切り替えたのですか?
山越 神川さんや竜司に「お前の分までがんばるから」と言われたのと、自分にはまだ明治大の後期の試合があったので、今まで明治大にお世話になった分、後期は自分が復活して優勝という恩返しができるようにがんばろうという気持ちが芽生えて、切り替えることができました。

――これだけの長期離脱は初めての経験ですか?
山越 5カ月ぐらい実戦から離れたのは初めてです。順天堂大戦(JR東日本カップ2015第89回関東大学サッカーリーグ戦第14節)が復帰戦だったのですが、チームメートも喜んでくれて、「待ってたぞ」と声を掛けてくれたりして、いろんな方々に支えられてピッチに立てたので、感謝の思いでいっぱいになりました。

――プレー面で不安なところはありましたか?
山越 まだ試合勘が戻っていないので、不安はありましたけど、その分は仲間がいますし、気持ちで埋めようと思っていました。その後、試合をこなすごとに自分のコンディションが上がっているのを感じています。

大宮で「守備の要」と言われる存在になりたい

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――今までのサッカー人生で、影響を受けた人はいますか?
山越 小学校から中学校、高校、大学まで、監督やスタッフに恵まれたと思っています。特に高校時代の高橋健二先生は、高校1年までFWだった自分をセンターバックに替えてくれました。

――それはチーム事情ではなく、山越選手の特徴を見抜いて?
山越 チームにセンターバックはいたので、特徴を見抜いてくれたのだと思います。あのままFWをやっていても上には行けなかったと思いますし、コンバートしてくれて本当に感謝しています。

――目標の選手や、憧れの選手はいますか?
山越 参考にしているのは、吉田麻也選手(サウサンプトン)です。自分とタイプが似ているので、代表の試合などではポゼッションの仕方を意識しながら見ています。

――来シーズン加入する大宮のセンターバックに対しての印象はいかがですか?
山越 何回か試合を見たんですけど、自分が目指すプレースタイルと同じタイプだなと感じています。ヘディングの仕方やクリアのタイミング、相手FWへのマークの付き方などは参考になりました。

――大宮への加入を決めた理由は?
山越 他のチームの試合も見たんですけど、大宮対ジュビロ磐田戦(明治安田生命J2リーグ第14節)を見に行った時に「ここでやりたい」と一番強く感じたので、自分の気持ちを信じてみようと思い、大宮に決めました。あとは、大宮のスカウトの西脇(徹也)さんの影響が強いですね。自分のことを一番思ってくれていて、熱意も一番強く感じましたし、やはりそういう人がいるチームでやりたいなと思ったので。

――スカウトの方には何と言われたのですか?
山越 自分の特徴を見て、大宮が一番合っていると言ってくれたり、サッカー以外の面でも自分がけがをした時にすごく心配して面倒を見てくれたりして、自分を大事にしてくれるなと感じました。

――大宮以外にもオファーが来ていたのですか?
山越 Jリーグの3つのクラブからオファーをもらいました。どこのチームも自分を必要としてくれていたし、スタメンで考えていると言われていたのですが、自分の直感と、地元が近いという立地的な理由もあって決めました。

――今シーズンの大宮がパスサッカーを採用していることも要因の一つですか?
山越 それもありますし、自分は4-4-2のシステムが合っていると思ったので。

――最近では海外志向の強い選手が増えてきていますが、プロの世界に入った後の目標は考えていますか?
山越 正直、ポジション的に海外は厳しいなとは思っています。まずはレギュラーになって試合に出続けて、いずれは日本代表へというのが今の自分の目標です。そのためにも、大宮で「守備の要」と言われる存在になりたいと思っています。

――最後に、今シーズンの残りの試合への抱負をお願いします。
山越 何が何でもタイトル。まずはリーグ戦を一戦一戦しっかり戦って、今まであと一歩のところでタイトルに届かなかったので、何としても取りたいと思います。

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