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城福浩氏が育成年代に対する指導のあり方に提言「与えられた環境を生かしていくことが大事」

2015.08.12

TOKYO, JAPAN - MAY 06: (EDITORIAL USE ONLY) Hiroshi Jofuku,coach of Ventforet Kofu looks on during the J.League match between Ventforet Kofu and Urawa Red Diamonds at the National Stadium on May 6, 2014 in Tokyo, Japan. (Photo by Masashi Hara/Getty Images)

 小学生年代でサッカーをする子供を持つお父さん(お母さん)向けに、子供のサッカーの成長、育成に関する各分野のスペシャリストを招き、ジュニアサッカーに必要な知識や考え方を共有するセミナー型のイベント「お父さんのためのジュニアサッカー育成講座」。6月12日に行われた同イベントのゲストとして、サッカー解説者の城福浩氏が登場。育成年代のプレーヤーに対する指導のあり方について語った。


 最初に自分の中ですごく大事にしていることをお話します。それは、選手の個人の成長、チームの成長をいかに促していけるかどうかということです。チームや監督によってトレーニングの内容は異なりますが、私は「頭から湯気が出るようなトレーニング」をすごく大事にしています。これはプロでも、小学生の子どもたちでも同じだと思っています。「ボールを追いかける」、「勝負に夢中になる」、「気が付いたら時間が経っている」。こういう時間をいかに過ごさせるかということが大事だと思っていますし、選手にとってはそういう毎日を過ごせるかどうかが重要です。もちろん、試合に出る選手がいれば、試合に出れない選手もいます。ただ、頭から湯気が出るような日々を過ごしていれば、試合に出る喜びや出れない悔しさを強く感じることができる。悔しさは本気度に比例すると思うので、いかに本気にさせるかというところが、指導者として一番大事にしている部分です。11人しか試合に出られないのは、プロだけではなく、小学生も中学生も同じですよね。そこで、選手がどんな思いでボールを蹴っているかを意識することも重要なんです。サッカーと本気で向き合っていればいるほど、試合に負けたり、試合に出られなかったりすることでの悔しさが大きいわけですから、大人はそういう部分を見逃さないようにしなければいけません。

 U-17W杯の際、代表監督として最終的に22人を選びましたが、当然メンバー外となる選手もいました。柏レイソルの工藤壮人やドイツでプレーしている大迫勇也といった選手が選外になりましたが、彼らはその悔しさをバネに頑張ってきた。本気でやってきたからこそ、その時に大きな悔しさを感じたはずです。ですから、彼らの成長を見ると指導者として嬉しいですし、彼らにはこれからも成長していってほしいと強く思いますね。

 次に私が大事にしているのは環境です。私はヴァンフォーレ甲府というクラブを率いましたが、このクラブは一度潰れかかったクラブでして、そこからなんとか這い上がってきました。大きなクラブと違って、なかなかお金が集まらず、人件費を削減しなければならない。スタッフも少ないですし、日によって練習場所も違いました。ただ、その環境を嘆いても何も変わらない。与えられた環境の中でやるしかないんですよ。役職なんて関係なく、とにかくチーム一丸となってやるしかない。そういう環境を経験したことで、大きく成長できたと思いますね。

 子供の進路について、保護者の方から「Jリーグのユースチームに行かせたほうが良いでしょうか」という質問をよくされましたが、正直それはわかりません。街クラブ出身だからといってプロになれないわけではないですし、ユースチーム出身だからといってプロになれるわけではない。環境の捉え方次第なんですよ。「自分がやらなければ勝てない」と思って全力でプレーする選手と、そうでない選手の成長度合いは大きく違うはずですから。

 また、環境というのは与えられるものというか、ある程度仕方のないものであると思います。その中で、どのようにメリットを見出していくかが重要です。子供の環境に関して苦労されることがあると思いますが、だからこそ培えるもの、養えるものがあるんじゃないかなと。指導者もデメリットを見るのではなく、メリットをどのように生かせるかを工夫していく必要がありますし、それが我々に課せられた義務なんじゃないかなと思います。

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