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沈黙を余儀なくされた攻撃陣…ユニバ男子、「想定内」の展開もPK敗戦

2015.07.11

文=川端暁彦

 すべて「想定内」(神川明彦監督)の試合展開ではあった。7月11日、第28回ユニバーシアード・光州大会男子サッカー競技の準決勝。イタリアと対峙した日本は、ほぼゲームプランに沿った形で試合を進めていた。

 イタリアはU-21イタリア代表MFヤコポ・デーツィ(クロトーネ→ナポリ)、U-20イタリア代表MFモロジーニ(ブレシア)、元U-19イタリア代表GKマンフレディーニ(モデナ)など、セリエBクラスのプロ選手を多数擁する陣容だったが、連戦の疲労もあったのか全体に動きのキレに乏しく、活動量も少ない。瞬間的な怖さが出るシーンもあったものの、全体としては「脅威という感じではなかった」(GK前川黛也)。

「前半はボールを動かして相手を走らせる」(DF高橋諒)プランに沿ってゲームを進めた日本は、リスクを過度に冒すことなく相手のカウンターをケアしながら時間を進める。「まず無失点で折り返す」(高橋)ことに重きを置きつつも、隙あらばと攻め入ったが、「本当に堅かった。穴がなかった」と神川監督が振り返るイタリア守備陣は伝統通りの鉄壁ぶり。「中盤はそんなでもないけれど、ゴール前は本当に違う」(MF澤上竜二)、「最後のところで人数をかけて体を張って守ってくる」(DF新井一耀)と選手たちが口々に語ったように、ペナルティーエリア内ではまるで自由を与えてくれない。ならばと、MF端山豪がミドルシュートとFKでその壁を外側から撃ち抜きにいったが、これもGKマンフレディーニに阻まれた。

 後半に入ると、ギアを上げた日本攻撃陣が相手陣内へ激しく攻め入ったが、ここでもイタリア守備陣はなかなか隙を見せてくれない。59分にMF和泉竜司を投入してさらに攻勢に出たものの、「相手の守備の執念は確かにすごかった」と自ら語ったように、ボールは支配しているものの、最後のところでシュートまでいけない。72分に重広卓也がCKの流れから放ったボレーシュートはパーフェクトな弾道に見えたが、GKマンフレディーニが信じがたい反応速度でこれを阻止。「あれをワンハンドで止めるなんて」と日本のGK前川も驚愕したビッグセーブだった。

 悪い意味で日本らしい試合展開になってしまう中、「このチームで最も点を取ってきた選手」(神川監督)であるFW呉屋大翔の投入も実らず。神川監督は残り5分で「PK戦を覚悟した」と最後の交代カードをロスタイムまで切らずに、最後の最後にPKで抜群の成功率を誇るDF田上大地を投入。PK戦に備えた。

「0-0でのPK戦は十分にあると想定していた」と指揮官は言い、選手たちもそれは同様だったが、ただ現実は非情だった。試合中も日本の前に立ちふさがったマンフレディーニがここでも好反応を見せて、日本の選手たちを威圧。自信を持っていたはずのPKで4人中3人が失敗するという異常な流れのまま、トータル1-3のスコアで5番手のキッカーを待たずに日本の敗退が決まった。

 イタリアに堅く守られることも含め、すべては「想定内」の試合展開。逆に言えば、想定以上の力を出す「個」がいなかったとも言える。和泉の漏らした「力の足りなさを痛感した」という言葉は、攻撃陣それぞれが感じたことでもあるだろう。全体に攻撃が単調で、変化をつける選手がいなかったのも崩し切れなかった理由の一つ。恐らく「想定内」だったのはイタリアも同じ。狙いどおりにスコアレスのPK戦に持ち込み、決勝への切符をもぎ取った。彼らの想定を超えるものを出せなかった。そんな現実を突き付けられる準決勝となった。

 ただ、もう1試合、彼らには残された機会がある。ブロンズメダルマッチとなる3位決定戦。沈黙を余儀なくされた日本の攻撃陣が、この最後の舞台で盛大に火を噴くことを強く期待している。

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