2018.01.08

頂点届かずも…死闘の中に見えた“流経らしさ” 勇猛果敢な戦いぶりは脳裏に焼き付く

宮本優太
勝敗が決した直後、腰に手をやり、肩を落とした流経大柏の主将・宮本 [写真]=兼子愼一郎
2013年までサッカー専門新聞『エル・ゴラッソ』で編集、記者を担当。現在はフリーランスとして活動中。

 第96回全国高校サッカー選手権決勝。流通経済大学付属柏と前橋育英による現代高校サッカーを代表する2校によるファイナルは、まさに死闘となった。最後の最後まで両校の執念がぶつかり合う名勝負で、普段サッカーの話なんてほぼしない親戚から試合後に「面白かった!凄い試合だった!マンガかよ!って突っ込んだわ」というメッセージが届いたほど。最終的に栄冠を勝ち取ったのは前橋育英だったが、アディショナルタイムの攻防で明暗を分けた差は紙一重だった。

「負けに不思議の負けなし。負けるべくして負けた」

 流経大柏・本田裕一郎監督は試合をそんな言葉で総括した。何も知らない人が聞けば冷酷な言葉に聞こえるかもしれないが、同時に「生徒たちの、ここまで来ることができた過程を褒めてあげたい」とも語ったところに指揮官の本音が見え隠れする。

 夏の高校総体では優勝を飾っているものの、実際のところそこまで順風満帆のシーズンではなかった。「夏前までは本当に酷いものだったと思う。最初のうちはファウルだらけでメチャクチャで、攻撃になったらミスだらけ」と本田監督が率直に振り返ったように、チーム作りとしてはむしろ遅れ気味。守備を強調して入ったシーズンだけに、特に攻撃面は未整備の部分があり、そもそも前線の軸となるようなストライカーが今季は不在だった。本来はMFタイプの選手や、競り合いに長じる選手を配置転換するなどやりくりしつつ、選手権本大会でもFW陣はローテーションさせつつの運用で乗り切った。

 その中で際立ったのは、やはり守備だ。決勝の後半アディショナルタイムまで無失点ロードを継続していたのは伊達ではない。「ザ・流経という試合を見せられたと思う」とGK薄井覇斗が胸を張って振り返ったように、「みんな絶対に体を張ってくれる」徹底して仕込まれていたゴール前でのシュートブロック意識の高さ、ルーズボールに食らい付いていく姿勢は天下一品。五分五分のボールの競り合いでも、しばしば競り勝ってみせた。前橋育英MF田部井涼は決勝前日に「流経は球際日本一のチーム」と評していたが、その畏敬を込めた言葉にふさわしい敢闘ぶりを見せ付け、最後の最後まで前橋育英の強力攻撃陣に食い下がった。

 もちろん、「敗因」を探すことはできるし、結局は力不足だったという総括も間違っているとは思わない。ただ、彼らが連戦に次ぐ連戦で迎えた決勝のピッチでも存分に体現した“流経らしさ”があってこその名勝負だったのも間違いない。本田監督が試合前にかけた言葉は「負けても悔いのないように暴れ回ってこい!」といったものだったそうだが、それは確かに見せてくれた。

 この日の流経がやったようなマンツーマンマークを付ける守備はスペースができやすいというデメリットもある。前橋育英側も「かえってやりやすいのでは」(山田監督)という想定もあったのだが、マークが引っ張られてできる危険地帯も誰かが察して必ず埋めにいき、最後の局面では必ず「誰かが」シュートブロックに入ってくるような、鋼鉄の戦術的規律を最後まで維持し続けたのも驚異的だった。

 よく「準優勝チームなんて誰も覚えていない」なんて言われ方をするのだが、この日の流経イレブンが見せた勇猛果敢な戦いぶりは、簡単に忘れられるようなものではあるまい。前橋育英の初戴冠という栄光とともに、きっと語り継がれていくことになる。流経はそれだけタフで逞しく、そして何より強固な団結力を持った好チームだった。

取材・文=川端暁彦

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