2018.01.06

連続無失点の守備を支える前橋育英DF角田涼太朗、油断なき埼スタへの“帰還”

前橋育英の守備を支える角田(左) [写真]=瀬藤尚美
京都サンガF.C.を中心に取材するサッカーライター

 前橋育英が主導権を握って攻撃を仕掛けるも、なかなかスコアが動かない。そんな試合展開を切り開く先制点はセットプレーから生まれた。21分、田部井悠の蹴った右CKのこぼれ球を角田涼太朗が左足でシュート。「蹴った瞬間は入らないと思った」そうだが、ボールは相手GKの手をかすめてネットを揺らした。このゴールが呼び水となり、27分には渡邊泰基が左サイドを打開した折り返しを榎本樹が押しこんで追加点。68分にも交代出場の宮崎鴻がダメ押し弾を決めて快勝している。

 3ゴールのうち、とりわけ先制点が大きかった。2日前の3回戦・富山第一戦は、攻め続けながら得点が生まれたのは試合終了間際。この日も米子北の守備を前に「少し手詰まり感はあった」と山田耕介監督は振り返っており、角田も「点が入らないと相手ペースに持っていかれる。前半のうちに1点取りたかった」と感じていた中で、セットプレーからスコアを動かした。

 ゴールという最も目に見える形で攻撃に貢献した角田だが、左足のキックも魅力だ。この日は相手の最終ラインが低かったので背後を突く場面は少なかったが、味方と相手の状況を見て中盤へつなぐショートパスやサイドへの大きな展開で起点となっている。もし相手の最終ラインが低くなければ、相手DFと駆け引きを繰り返してスペースへ動き出す飯島陸へ、または飯島に引っ張られて空いたスペースを狙う他の攻撃陣へ、角田の左足から正確なフィードが供給されることだろう。

 もちろん守備でも頼れる存在だ。前半途中から自陣に押し込まれた米子北はボール奪取後の攻撃のスタート地点が深い位置となり、そこに前橋育英の素早い攻守の切り替えからのプレッシングが襲い掛かる。仕方なく前線へロングボールを蹴っても、角田やCBでコンビを組む松田陸が高さや強さを発揮してはじき返す場面が何度も見られた。彼らと左SBの渡邊と右SBの後藤田亘輝で形成される4バックは、昨年の大会から不動のカルテット。この日、2列目で効果的なプレーを繰り返した田部井悠が「後ろからの声って、すごく大事。しっかり指示を出してくれるし、DFの4人が揃っているから僕たちアタッカーも安心して前からプレッシャーにいける」と話せば、ボランチの塩澤も「誰かが行けば、誰かがカバーする。チャレンジ&カバーが徹底できている。4人は息があっていますね」とチームメイトに安定感を与える存在だ。逆に角田も「前線のプレッシングや中盤のプレスバックがあるから、限定したところで自分たち最終ラインが抑えられる。セカンドボールも拾ってくれる。本当にありがたい」と感謝を口にしている。角田いわく、昨年はGKの月田啓(現日本体育大学)や相手のミスに助けられた展開が多かったそうだ。そうした経験を踏まえて、今年は相手にシュートまで持ち込ませないことを目指している。「選手権はなにが起こるか本当にわからない。狙っていないシュートが入っちゃうこともある」。その確率を減らすことを徹底してきたことが、県大会から全国大会準々決勝まで7試合連続無失点という結果につながっているのだ。

 来春からは筑波大学へ進学予定で、大学サッカーへ活躍の場を移す。ともに最終ラインを支える渡邊(アルビレックス新潟内定)や松田(ガンバ大阪内定)がプロ加入を決意した中、角田は「悩んだんですが、自分はあと4年間しっかりやってから即戦力でプロに入りたい。いろんな相手と戦える大学4年間は貴重な時間だと思う」と将来を見据える。前述の二人とは違うルートをたどることになるが、最終的に目指すところは同じだ。「それに代表もありますからね」と少し表情を緩めながら、年代別日本代表で再会する可能性にも触れている。

 これでチームはベスト4へ進出。まず“埼スタへ戻る”ことは達成したが、もちろんそれが最終目標ではない。「5失点ってなかなか経験しない。しかも全国の舞台、屈辱的だった」という昨年の青森山田との決勝戦は、今なお苦い記憶として、そして強くなるための動機として心の中にある。12月中旬にはプレミアリーグ参入戦でPK戦の末に敗退。「自分たちにはもう選手権しかない」という覚悟も決まった。「身体的な疲労は少しあるけれど、前橋育英は日本一というものに対して、どこよりも強い気持ちでやっている自信があります」。そう力強く語った言葉を現実のものとするまで、あと二つだ。

取材・文=雨堤俊祐

Jリーグ順位表

川崎F
72pt
鹿島アントラーズ
72pt
C大阪
63pt
Jリーグ順位をもっと見る
湘南
83pt
長崎
80pt
名古屋
75pt
Jリーグ順位をもっと見る
秋田
61pt
栃木
60pt
沼津
59pt
Jリーグ順位をもっと見る