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インハイ全国ベスト8の履正社高校、平野直樹監督「攻撃的ながら今年のチームは守備の意識がすごく高い」

2015.10.15

インタビュー、文、写真=安藤隆人

新たな歴史をつくるチャンス到来

――先のインターハイではベスト8という結果を残しました。大会を振り返ってみていかがでしたか?
平野直樹監督(以下、平野) そうですね、全国で戦えるという手応えは十分つかむことができました。今年のメンバーは1年生の時から試合に出ている選手が多いので、タイトルを獲れるチャンスがきているのかなと思っています。

――準々決勝では優勝した東福岡高校を相手に、あと一歩のところで敗戦(0-1)を喫しました。内容面では相手を上回っていて、実際に平野監督も試合後に「負けをすんなり受け入れられない」とコメントをされていました。
平野 勝負事なので決める時に決めないと勝てない。あの失点した場面はうちのチームの運動量が落ちてきた時間帯でした。試合をとおしてはプレーの質やチャンスの数を見ても決して悪くない内容だったので、敗戦という結果を素直に受け入れたくなかった。でも、それが現実です。勝ち続けている市立船橋や東福岡といったチームは、こういう苦しいゲームを勝ちに結びつけている。そこの差を我々は埋めないといけないと痛感しましたね。

――平野監督のサッカーとは攻撃色の強いものですが、今年のチームの攻撃は全国トップレベルの破壊力を備えているように感じます。
平野 攻撃が特長のチームですが、いい攻撃を仕掛けるためには守備が安定しないといけません。今年のチームは守備の意識がすごく高く保てている。それが攻撃の破壊力につながっています。また、僕自身のサッカーの考え方として、相手を見て判断することが一番大事なポイントだと思っています。相手守備陣のどこにスペースが空いているかを判断して、その空いているスペースにタイミング良く選手たちが飛びこんでいく。そうするといい攻撃が生まれるんです。そのためには選手たちが前を向いていないといけないので、自ずと全体のラインは低い位置になります。常に前でボールを回すのではなくて、低い位置からどんどん前に出ていくイメージです。そうすると、追い越していくタイミングが重要になる。だから、僕は選手たちに「慌てていき過ぎるな」と言っています。

――G大阪ジュニアユースの選手など、近年は多くの才能ある選手が履正社高等学校に入学しています。彼らを指導して何か感じることはありますか?
平野 もっともっとゴールに貪欲になってほしいですね。細かくボールをつないで、強引に中央突破していく崩し方に快感を覚えてしまっている気がします。僕はまず第一に効率を考えたい。密集している中央をグイグイ攻めこんで「俺はすごいだろう」というのではなくて、ゴールという目的に向かって、どうやって奪うのが効率的なのかを考えてほしい。それこそがサッカーにおける適切な判断だと思うので、自己満足でプレーするのは良くないですね。もちろん強引な突破も時には必要になると思いますが、まずはどちらが我々の目的に近いかを考える必要があると思います。例えば、選手の密集している中央のスペースを突破しようとすると、いつボールを取られてカウンターを受けるかは分からない。加えて相手はスペースを埋めようと、より中央に集まってくる。そんな状況下で中央を突破しようとしても難しい。逆にサイドにはもっと広大なスペースが生まれているんです。中央突破が絶対にダメなわけではないですが、どっちが得なのかを考えるようにと指導しています。

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――今でこそ履正社は全国の常連になっていますが、そこに至るまでには時間を要しました。奥井諒(ヴィッセル神戸)らを擁した代でも、大阪府の壁をなかなか破れませんでした。その頃を改めて振り返ってみると、今現在どのように感じますか?
平野 少しサッカーのクオリティーが低かったのかもしれません。ゲームを進めていく上での安定感が足りなかったと思います。それに加えて、大阪のレベルが全体的にかなり上がってきたこともあります。大阪を突破することが、相当難しくなっているのは間違いありません。ただ、自分のやっていることに大きな間違いはないと思っていたし、トレーニングマッチやフェスティバルで全国の強豪チームと戦って、大きな差があったかというとそうではなかった。やっていることは続けないといけないし、自分のやるべきことをぶれることなくやり通すことに変わりはありませんでしたね。

――一昨年度の選手権に初出場してから2年連続ベスト8、今年のインターハイもベスト8止まりでした。“ベスト8の壁”を破るべく、選手権に向けての抱負を教えてください。
平野 夏過ぎからは1年生も絡めて編成を考えていこうと思っています。8月の遠征(和倉ユースサッカーフェスティバル)も1年生を何人か連れてきた結果、新たなチーム内の競争が生まれつつあります。まずは守備をベースにした攻撃サッカーを展開して一戦一戦を大事に戦っていくことで、選手権の大阪代表に近づいていくと思うので、代表権を獲ることを目標にしたいです。それが実現したのちに全国タイトルを狙えるようにチームを構築したい。最後は埼玉スタジアムで勝ちたいと思います。それにプレミアリーグも戦っていて、残念ながら優勝するのは難しいのですが、まずは残留を決定させたい。リーグが再開したら、前期引き分けたチームには勝ち、負けた相手には引き分けか勝つという目標を設定して、一つひとつ勝ち点を積みあげたい。手応えはあるので、よりその質を高めていきたいと思います。

平野 直樹(ひらの・なおき)
三重県生まれ。四日市中央工業高校、順天堂大学を経て松下電器(現ガンバ大阪)でプレー。引退後はガンバ大阪ユース、ベガルタ仙台ユース、星稜高校などで指導者として経験を重ね、2003年の履正社高校サッカー部創部から指揮を執る。

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