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帝京と習志野が大躍進、5位前橋育英が急成長…和倉ユース大会総括

2015.08.15

文・写真=安藤隆人

 前回は、ファイナリスト2チームを取りあげたが、ここではそれ以外のチームの躍進にも触れたい。

 3位となった帝京は、インターハイ予選では準々決勝で東京朝鮮と延長まで戦って、3-5という乱打戦の末に敗れた。和倉ユースではセンターバックの高橋心を中心に攻守においてハードワークを見せ、チーム一丸となって結果を残した。

 3位決定戦で帝京に敗れたが、4位でフィニッシュした習志野は、「大躍進の大会」となった。習志野は八千代を全国屈指の強豪校に仕立てあげた砂金伸監督が、3年前に監督に就任すると、昨年のインターハイ県予選準決勝で流通経済大柏を破って、山梨インターハイに出場。メキメキと力をつけきていた。だが、今年は春先から苦戦を強いられた。県リーグでは勝ち星から見放され、12試合戦って4勝8敗と苦しい状況にあった。

「点が取れず、我慢できずに失点してしまい、悪循環に陥っていた」と佐藤有毅コーチが語ったように、自信を失いかけていた。だが、今大会では見違えるように、堅守とカウンターがはまった。GK柳数馬、185センチの大型センターバック西村慧祐、ボランチの池田廉が軸となった堅い守備から、ボールを奪うと迷うことなく前線の安藤和輝、深山優太に当てて、質の高いカウンターを展開。試合途中には決定力のあるFW米田陽斗が投入され、リズムを変えて、終盤勝負もできた。

「しっかり守ってカウンターを仕掛けて、点を取ることができた。全国の強豪を相手に、ここまで戦えたことは大きな自信になったと思う」(佐藤コーチ)。間違いなく和倉の地で失いかけていた自信を取り戻した習志野。再開後の県リーグの戦いが楽しみだ。

 そして、個人的には前橋育英の成長ぶりは目を見張るものだった。昨年の主軸がごっそりと抜け、春先は相当な苦戦を強いられていた。しかし、インターハイ予選決勝で桐生第一に敗れてから、チームは大きく変わった。

「もう一度基礎からやろうと、キックやヘッドなどを徹底した。今年のチームは高さがないけど、サイドを突破できる力はある。なので、しっかりとサイドを崩して、精度の高いクロスに飛びこんで合わせる。サイドから良いクロスが入れば、高さは関係なくなる。この形を徹底してトレーニングしてきた」

 山田耕介監督がこう語ったように、MF金子拓郎、FW佐藤誠司、MF岡部哲也など、スピードとキックの精度が高い選手をフルに生かし、サイドを突破してから、ライナーのクロス、グラウンダーのクロス、ファーに落とすクロスと、種類の違う質の高いクロスから、FW横澤航平、高沢颯らが飛びこんで、ゴールを奪う形がはまった。狙いがはっきりしたことで、中盤のポゼッションの質も向上。共通理解の下、テンポの良いパス回しからの展開が目立った。

「役割分担を整理して、形ができた。新戦力も7人試すことができたし、非常に実りある大会となった」。結果は5位だったが、大きな収穫を手にした。5~8位決定戦でも東京ヴェルディユースを相手に、岡部、高沢、井上滉斗と長澤昂輝のダブルボランチ、大川夏輝と梶谷芳徳のセンターバックコンビと、新戦力がセンターラインを構築し、期待通りのプレーを見せた。ハイテンポなパス回しから、サイドを破っての攻撃を披露し、2-2のPK勝利。最終戦も大きな意義のあるものとなっただけに、前橋育英にとって、来週から再開するプリンスリーグ関東、そして選手権に向けて、弾みがつく大会となった。

 石川県の能登半島で4日間に渡って行われた和倉ユース。激しい優勝争いはもちろんのこと、ここに来るまでに数々の悔しい思いをした多くのチームが、全国トップレベルのチーム同士で激しくぶつかり合うことで、大きな収穫をつかんだ。

「和倉は優勝することが難しい、ハイレベルな大会。どの試合もかなり白熱するし、Jユース、高校サッカー、プレミアリーグ、プリンスリーグ関係なく、ガチンコで戦える貴重な場」(佐藤監督)

 単なる親善試合ではない、真剣勝負の数々。だからこそ、収穫も大きいものとなった。この4日間の出来事を糧に、それぞれの地域、リーグでさらに成長した姿を見られることを期待して、この大会のコラムを締めたいと思う。

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