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伝統校を続々撃破の関東第一、ベスト4進出で指揮官が流した涙…膨らむつぼみが花開く時

2015.08.08

文・写真=川端暁彦

 試合後、日本サッカー協会のナショナルトレセンコーチの一人は「こんなチームもあるんですね。素晴らしい」と感嘆の声を漏らしていた。伝統校を次々と破ってきた関東第一は準々決勝でも広島皆実に4-2と快勝。その力を全国に誇示している。

 個々のタレント性で言えば、今年のチームよりも恵まれた年代はいくつかあった。たとえば、GK渋谷飛翔(現・横浜FC)を擁した世代などは全国に出ていれば躍進の期待も十分にあったチームである。ただ、肝心の試合で勝てず、結局はその舞台に届かず、ほとんどの人の記憶に残ることもなかった。

 準決勝進出を決め、にこやかに話を進めていた小野貴裕監督は、無念の想いを秘めて卒業していった「先輩たち」に話が及ぶと、涙が止まらなくなった。才能のある選手たちを晴れ舞台に出させてやれなかったという自責の念もあったのだろう。全国に出てきて初めて感じたという東京を代表する使命感・責任感も心を揺さぶったのだろう。全国舞台に届きそうで届かない時期が続いていただけに、この大会へ懸ける思いの強さが涙としてにじみ出てきたように見えた。

 純粋にサッカーとしても非常に調和の取れた好チームだ。「今年のチームは自分自身に対する謙虚さがある」と語るように、技術のある選手たちがエゴの強さを押し出すのではなく、周囲と調和しながら戦い抜く。抜きん出てテクニックを持つ10番・冨山大輔、岡崎慎司を彷彿とさせる魂の主将・鈴木隼平、クールなプレーメーカー道願翼といった個性的な選手たちがしっかりと噛み合っている様は単純に面白い。広島皆実戦も試合中にシステムを4-2-3-1からボックス型の4-4-2に改め、ポジションも入れ替えたが、それを遂行する戦術的な能力もしっかり備えていた。

 大津、広島皆実を倒して次に迎える相手は市立船橋。熱さ抜群の2年生ストッパー・鈴木友也の出場停止という手痛いダメージも負っているが、チームとしての総合力を見せるときとも言える。東京の眠れる獅子が、いま全国舞台で大きく花開こうとしている。

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