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【インタビュー】「学祭を等々力に持ってきた」…学生の手で進化を続ける“早慶クラシコ”の魅力

2018.07.07

昨年度は早稲田大が5-1の大勝を収めた [写真]=金田慎平

 早慶サッカー定期戦は過去68回の歴史を誇る。昨年からは『早慶クラシコ』と銘打ち、ピッチ外でのイベントや告知方法を大胆にバージョンアップ。より多くの人に“伝統の一戦”の熱気と興奮を体感してもらうべく、学生たちは様々な“仕掛け”作りに励んでいる。

 第69回目となる今年は、7月7日の七夕開催。昨年に引き続き『早慶クラシコ』の運営を取り仕切る『一般社団法人ユニサカ』の代表理事・原田圭(慶應大4年)と理事・奥山大(慶應大3年)に、今年度の見どころを聞いた。

インタビュー・文=平柳麻衣
写真=金田慎平、池田みのり

■早慶のカルチャーを多くの方に知ってほしい

――『ユニサカ』は昨年から『早慶クラシコ』の運営に関わっています。昨年の大会をふまえて、今年新たに取り組んでいることは?
原田 昨年との大きな違いは、『早慶クラシコ』を部内にとどめないこと。それは『ユニサカ』が目指しているところでもあるのですが、早慶サッカー部だけでなく体育会全体、スポーツから離れた学生、地域の人や他大学の学生、ファン、OBなど幅広い層の人々に『早慶クラシコ』をとおして「大学サッカー」を知ってもらいたいと考えています。そのために、『早慶クラシコ』がただのサッカー観戦ではなく、各々が楽しみ方を見つけられるような仕掛けを作ることにチャレンジしました。

 なかでも今年は、『クラシコパーク』にかなり力を入れています。川崎フロンターレが等々力陸上競技場の場外スペースで行っている『フロンパーク』を真似たものですが、今年の内容としては「学祭を等々力に持ってきた」というイメージです。多くの学生や学生団体に協力していただき、ストリートパフォーマンスやステージ発表、アート作品の出展など様々な催し物を企画しています。メインイベントはもちろんサッカーの試合ですが、サッカーにあまり興味がない人にも、「『クラシコパーク』を見に来たついでに、サッカーの試合も見よう」と思ってもらえたらいいなと思っています。

――体育会以外の学生でも、足を運びやすくなりそうですね。
原田 昨年の『早慶クラシコ』は約14000人の方に来場していただき、そのうち早慶の学生は約7000人でした。それだけ学生が集まるイベントはなかなかないということで、今回出演や出展してくださる皆さんも『クラシコパーク』にはかなり強い思いを持って参加してくださっています。また、会場の等々力陸上競技場は川崎市が管理する緑地公園なので、行政の方とも話をしているのですが、いずれは『クラシコパーク』を武蔵小杉のイベントとして確立させていけたらいいなと思っています。スタジアムでは選手たちがバチバチと熱く戦う一方で、スタジアム外では学生と地域の方が一緒にワイワイ盛り上がる、という姿が理想です。近年、大学の価値が問題視されている中で、すごく頑張っている学生はたくさんいます。『早慶クラシコ』が一つのメディアとなって、今の早慶のカルチャーを多くの方に発信できる場にしていければと思います。

■「大学スポーツ界で最高のイベント」だと胸を張って言える

――『早慶クラシコ』当日に等々力のオーロラビジョンを用い、E-sportsの試合として『早慶レジェンドマッチ』を開催することも発表されています。出場選手は早慶OBの中から一般投票で決定しましたが、反響はいかがでしたか?
原田 投票開始初日にTwitterで「早慶レジェンドマッチ」というワードがトレンド入りし、投票ページも3万PVを獲得しました。自分たちで拡散したこともありますが、やはりOBの選手に拡散をお願いした影響が大きかったと思います。キャラクターを作る際に肖像権などの問題があったのですが、多くのOBの方々が協力してくださったこともありがたかったです。そのおかげで、Jリーグファンの間でも『早慶レジェンドマッチ』が認知されるようになり、例えば横浜F・マリノスのサポーターなら「中町公祐選手を当選させよう!」、FC町田ゼルビアのサポーターだったら「奥山政幸選手に投票しよう!」と盛り上がってくれたので、うれしかったですね。

 ただ、反省しているのは「OBの方を投票で選ぶ」ということがなかなか理解されない部分もあって……結果的に投票によって“落選”する人も出てしまうので、厳しい声が届いたりもしました。そこは配慮が至らなかったなと思っています。

――一般層への周知という点では成功した分、難しい課題だと思います。
原田 早慶戦は今年で69回目を迎える、歴史のある大会です。僕たち『ユニサカ』は、「より良いものを作りたい」という思いから、かなりのスピードで新しいことに取り組んでいます。しかし、それに対して賛成意見ばかりではなく、OBや両部のマネージャーなどからは、「今までの形を継承すべきだ」という意見も出ています。特にマネージャー陣は「事故なく終わりたい」という思いから、新しいことに消極的な傾向があるので、準備段階で衝突することは何度もありました。もちろん僕たちもトラブルがないように精いっぱい努めていますが、やっぱり多くの人をどんどん巻き込んで、大会や大学サッカー界を盛り上げていきたい。なので、マネージャー陣とはしっかりと意見を交わしながら、協力して進めていきたいと思っています。

――先月より募集を開始したバスツアー企画も新たな取り組みの一つですね。
奥山 今年は『早慶クラシコ』と『第76回早慶バスケットボール早慶戦』が同日開催になってしまい、「両方見たい」という学生のニーズに応える方法はないかと考えました。そこで、『ユニサカ』のメンバーであるバスケ部の学生とともに企画したのが、『七夕だけど二股早慶戦』というバスツアーです。バスケの早慶戦終了後、等々力まで無料シャトルバスを運行します。バスは早慶両部が普段の遠征でお世話になっている京王観光さんがサポートしてくださり、アシックスさんには「バスツアー限定Tシャツ」を無料で提供していただきました。早稲田と慶應それぞれにバスケとサッカーの計4パターンのデザインがあり、参加者にとってもうれしいプレゼントになると思います。

 今回が初めての試みなのでどこまで反響があるのか不安だったのですが、現在バス7台、270人ほどの応募がきています。僕の友人は「たぶん電車だったら行かなかったと思うけど、みんなと一緒にバスで行けるなら参加したい」と言っていて、「みんなでワイワイしたい」という学生ならではのカルチャーに刺さったのかなと思います。

――集客の面では、昨年は小中高生の無料招待を大々的に行っていたと思います。
原田 今年もチケットの無料配布は継続しています。部の関係者以外へのリーチを広げたいのですが、昨年はなかなか動員につなげられなかったので、今年こそは増やしたいと思っています。『早慶レジェンドマッチ』も、OBの方やJリーグファンなど、早慶の学生以外へのリーチを広げるための企画の一つです。

奥山 今年の目標来場者数は2万人です。部員による手売りだけではなく、社会人の方や他大学の学生でも購入しやすいようにオンラインでの販売を拡大しました。また、小学生のサッカー教室を行った際に告知をしたり、一貫校の生徒にアプローチしていくことにも注力しています。

――早慶の学生以外へのアプローチはなかなか難しいと思います。
原田 ただ単純にお客さんの数だけ増やしたいなら、人気があるアイドルや声優さんにゲストとして来場していただく方法もあります。でも、それでは僕たちが理想とする大学スポーツの形からは遠ざかってしまう。道のりは長いですけど、できることから形にし、地道に拡大していくしかないと思っています。

――そのほかに今年の『早慶クラシコ』の見どころなどはありますか?
原田 今年はMONKEY MAJIKさんにハーフタイムライブを行っていただきます。MONKEY MAJIKさんはベガルタ仙台の大ファンらしく、サッカーにも理解のある方なので、すごく盛り上がると思います。また、男子の部の試合は「スカパー!」さんで無料生中継をしていただくので、どうしても来場できないという方は、「スカパー!」で観戦していただければと思います。

奥山 今年は『クラシコパーク』をはじめ、本当に多くの人を巻き込んだイベントが盛りだくさんです。普段、学校生活を送っているだけでは交流することがない分野の人とも『早慶クラシコ』をとおして新たな交流が生まれるのは、アマチュアスポーツならではの魅力だと思います。

原田 大学スポーツは、「個人が成長すればいい」とか「チームが勝てばいい」というものではないと思っています。『早慶クラシコ』は本当にいろいろな部活、分野の人が作り手となって関わっていて、プロスポーツとは違った面白さがある。新しい出会いや、新しい気づきがある。「大学スポーツ界で最高のイベント」だと胸を張って言えるので、ぜひ会場にお越しいただけたら幸いです。

ユニサカ代表理事の原田(右)と理事の奥山

By 平柳麻衣

静岡を拠点に活動するフリーライター。清水エスパルスを中心に、高校・大学サッカーまで幅広く取材。

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