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【プレビュー】プロ予備軍と東京五輪世代の宝庫・関東大学リーグ開幕…特別指定選手の制度変更にも注目

2018.04.07

関東大学リーグ1部・全12チームのキャプテンが会見に出席した [写真]=内藤悠史

 JR東日本カップ 2018 第92回関東大学サッカーリーグ戦が、4月7日に開幕する。開幕に先駆けて、3日にはJFAハウスにて記者会見が開催。1部リーグに参戦する全12チームのキャプテンが集結し、新シーズンへの抱負を語った。

 昨季の1部リーグでは筑波大学が圧倒的な強さを見せ、全22試合で17勝を記録。歴代最多勝利と最多勝ち点54でリーグを制した。そして夏のカップ戦「総理大臣杯全日本大学サッカートーナメント」では法政大学が、シーズンの締めくくりとなる「インカレ」(全日本大学サッカー選手権大会)では流通経済大学が頂点に立っている。昨季のタイトルホルダーが顔を揃え、まさに実力伯仲の関東1部。筑波大の新主将に就任したDF小笠原佳祐(4年)は「昨季の結果を超えるような、“凌駕”できるようなシーズンにしたい」と意気込みを語っている。果たして今季は、どの大学が王座に就くだろうか。

 各チームの実力が拮抗していることに加えて、大学サッカーの魅力として挙げられるのが“プロ予備軍”の選手を数多く抱えていることだろう。昨季の関東1部所属12チームからは、実に39名もの選手がJクラブへ加入した。ベガルタ仙台FWジャーメイン良やV・ファーレン長崎MF新里涼(順天堂大学出身)はすでにJリーグYBCルヴァンカップで初得点を記録。川崎フロンターレMF守田英正(流通経済大出身)、長崎MF米田隼也(順天堂大出身)、アルビレックス新潟MF戸嶋祥郎(筑波大出身)、ジェフユナイテッド千葉DF鳥海晃司(明治大学出身)ら、開幕から試合メンバーに定着して出場機会を得ている面々も多く、即戦力ルーキーとして存在感を示している。

 そんな先輩たちの後を追うように、今年の4年生もまた、Jクラブ注目の“プロ予備軍”揃いだ。3月1日に鹿島アントラーズ加入内定が発表された順天堂大MF名古新太郎を筆頭に、2015年1月の高校サッカー選手権決勝でキャプテンとして対峙した2人、筑波大のDF鈴木大誠(星稜高校出身)とMF鈴木徳真(前橋育英高校出身)、2016年に鹿島の特別指定選手として公式戦にも出場した流通経済大DF小池裕太、さらにU-21日本代表の早稲田大学GK小島亨介、全日本大学選抜の明治大DF岩武克弥といった実力者が最高学年を迎えている。

名古新太郎

鹿島加入が内定している順天堂大MF名古新太郎 [写真]=内藤悠史

 注目すべきは4年生だけではない。今年度の3年生以下(“早生まれ”の4年生を含む)は“東京五輪世代”(1997年1月1日以降生まれ)の選手たちであり、森保一監督が率いる代表チーム入りに向けたアピールにも期待がかかる。“森保ジャパン”にはすでに、早稲田大GK小島のほか、流通経済大DFアピアタウィア久(2年)や筑波大MF三笘薫(3年)、順天堂大FW旗手怜央(3年)、法政大FW上田綺世(2年)といった面々が招集された。2年後を見据えた意味でも、楽しみな人材が尽きない。

アピアタウィア久

インカレ制覇に貢献した流通経済大DFアピアタウィア久 [写真]=内藤悠史

 そして今季を迎えるにあたり、大きな注目ポイントとなっているのがJFA・Jリーグ特別指定選手制度の変更だ。高校や大学に所属した状態でJクラブでの公式戦出場を認める同制度だが、認定要件として新たに「受入先のJクラブにプロ選手として加入することが内定している選手(契約内定選手)であること」が追加された。

 今回の制度変更は様々な議論を呼ぶこととなりそうだ。以前はJクラブが有望選手の将来的な獲得を視野に入れた、いわば“囲い込み”を意図した制度利用、あるいは即戦力の緊急補強的な意味合いで特別指定選手登録をしているように見受けられる事例もあった。しかし新制度では「内定を出さなければ、特別指定選手に登録できない」こととなり、今後はより早い段階での内定発表が続出する可能性がある。3月29日には名古屋グランパスが東海学園大学MF児玉駿斗(2年)の2021年加入内定を発表。3シーズン先取りの“青田買い”は大きな話題を呼んだが、同様のケースが生じる可能性は十分にあるだろう。

 3日の記者会見では、関東大学サッカー連盟の副理事長を務める流通経済大の中野雄二監督が「個人的には」と前置きしつつ、「リスクがありすぎるのではないか」と否定的な見解を示した。「学生は1年で大きく変わる」との言葉通り、選手の成長曲線は各々異なり、負傷やコンディション面の問題を抱える可能性もある。選手にとっても、内定先のクラブが加入年度にどのカテゴリーに属しているのか、どんな監督が率いているのか、どんなサッカーを志向しているのか…。未知数な部分が多すぎる状態で進路を決めることとなる。

 一方で、選手としては早い段階からJクラブの“看板”を背負ってプレーすることとなり、より一層の自覚と責任を纏うことでさらなる成長を遂げる可能性もある。昨年5月5日に浦和レッズへの加入内定が発表されたMF柴戸海(明治大出身)も「早く決めた理由の一つが、プロ選手としての意識を持って大学サッカーでプレーするということでした。周りからもそういう目で見られますし、上(プロ)でやっていくためには高いレベルでプレーしないといけませんから」と話していた。そしてJクラブのファンやサポーターが、加入内定発表をきっかけに大学サッカーに関心を抱き、試合会場へ足を運ぶことも増えるだろう。制度変更の是非を一概に言うことはできないが、今後の議論や各クラブ・選手の動向に注目が集まる中で、新たなシーズンを迎えることとなる。

小笠原佳祐

開幕会見で抱負を語った筑波大DF小笠原佳祐 [写真]=内藤悠史

 7日12時にキックオフを迎えるオープニングマッチでは、王者・筑波大と一昨季の覇者である明治大が激突。筑波大の新主将DF小笠原は「いい意味で絶対的なエースがいないチーム。点を取る選手が抜けた中で、誰もが得点を取る意識を高めています」と、新チームの特長を語っていた。昨季はリーグ歴代最多タイ記録の20得点を挙げたFW中野誠也(現・ジュビロ磐田)が攻撃陣をリードしたが、今季のエースとして名乗りを上げるのはどの選手になるだろうか。そして明治大の新主将DF岩武は「チームとしては勢いと元気があるので、勢いに乗っていけるようにまとめていきたいです。初戦では内容はもちろん、しっかりと結果にこだわりたいです」と勝利を誓っていた。他10チームに先駆けてキックオフを迎える“新旧王者対決”から、激闘の日々がついに始まる。

 7日に開幕を迎える関東大学リーグ1部、第1節の対戦カードは以下のとおり。

■関東大学リーグ1部
▼7日
筑波大学 vs 明治大学(味の素フィールド西が丘/12時)
流通経済大学 vs 専修大学(味の素フィールド西が丘/14時30分)
▼8日
法政大学 vs 駒澤大学(味の素フィールド西が丘/11時30分)
順天堂大学 vs 東洋大学(味の素フィールド西が丘/14時)
桐蔭横浜大学 vs 早稲田大学(龍ケ崎市陸上競技場たつのこフィールド/14時)
東京国際大学 vs 国士舘大学(山梨中銀スタジアム/14時)

■関東大学リーグ2部
▼8日
日本体育大学 vs 関東学院大学(龍ケ崎市陸上競技場たつのこフィールド/11時30分)
慶應義塾大学 vs 立正大学(山梨中銀スタジアム/11時30分)
東海大学 vs 立教大学(拓殖大学八王子国際キャンパスサッカー場/11時30分)
拓殖大学 vs 東京農業大学(拓殖大学八王子国際キャンパスサッカー場/14時)
青山学院大学 vs 神奈川大学(中央大学多摩キャンパスサッカー場/11時30分)
中央大学 vs 東京学芸大学(中央大学多摩キャンパスサッカー場/14時)

取材・文=内藤悠史

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