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遅咲きの流経大GK新井栄聡がインカレでベストGK賞…来季加入の清水でも「自分を磨きまくる」

2017.12.25

来季からの清水加入が内定している流経大GK新井 [写真]=瀬藤尚美

 スポットライトを浴びたのはわずかな時間だった。それでも、最後に一番輝く笑顔を見せた。

 流通経済大学のGK新井栄聡は、学生最後の大会となった第66回全日本大学サッカー選手権大会(インカレ)で全4試合に出場。チームの優勝に貢献し、同大会のベストGKに選出された。

 流経大で過ごした4年間。「あっという間だった」と振り返るが、その間には様々な苦悩も経験した。トップチームに上がることができたのは4年生になってから。リーグ開幕戦こそ先発出場したものの、東京国際大学に1-2で敗れると、以降は2年生GKのオビ・パウエル・オビンナにレギュラーの座を奪われた。

 それでも最上級生としての意地を見せ、ピッチ外からチームを支えた。「自分が出れないことに対して何を言っても仕方がないし、くさってちゃダメだなと。4年生になってからは寮長を務めさせてもらったので、キャプテンの石田(和希)や副キャプテンの守田(英正)をサポートしていこうと思っていました。チームの緩みは私生活の部分から出るのでルールはしっかり守らせましたし、そういう嫌われ役を買って出ることもありました」

 しかし、プレー面ではなかなか挽回の機会が訪れない。さらに、追い打ちをかけるように9月下旬の練習で左手首を骨折。「全治3カ月くらいと言われて、インカレも間に合わないと思った」。懸命にリハビリをしても、インカレ開幕に間に合うか分からない。また、自分自身が間に合ったところで、レギュラー争いに勝てる保証はない。それでも、「骨折した瞬間から、もうインカレのことしか頭になかった」という新井は、「インカレ」と書いた紙を寮のベッドの中で毎晩のように眺め、闘志を保ち続けてきた。

 また、リハビリ期間もプラスにとらえ、自身のレベルアップにつなげた。「ケガをした時こそいろいろな角度から物事が見れると思って、姿勢改善や下半身の強化に取り組んだり、フィールドの選手のトレーニングに参加させてもらってキックの練習も積みました。復帰して以降、セービングしやすくなったり、パワーの使い方も分かってきたりといい影響が出ていますし、付き添ってくれたトレーナーにはすごく感謝しています」

 何とかインカレに間に合わせて復帰を果たした新井は、オビがU-20日本代表に招集され不在となったこともあり、初戦からゴールマウスを守った。「どんな時もくさらず、人一倍努力してきた選手。試合に出たらやってくれるだろうと思っていた」(守田)というチームメイトからの信頼に応えるように安定したプレーを披露。チームを決勝の舞台に導いた。

 24日、法政大学との決勝戦でも好セーブを見せた。77分には、ペナルティーエリア内に進入してきた紺野和也の決定的なシュートを弾き出した。「準決勝の東京国際大戦でやられた失点が同じような感じだった。今度はしっかりDFと自分の位置を確認してポジションを取れたので、焦らずにセービングできた」。大会をとおしての成長を感じさせ、「今日(決勝戦)のパフォーマンスが自分の中で一番良かった」と充実感を漂わせた。チームは5-1の勝利で3年ぶり2回目の優勝。新井は目を潤ませた後、笑顔で仲間と抱き合い、喜びを分かち合った。

インカレではチームの優勝に貢献。ベストGK賞を受賞した(左から2番目)[写真]瀬藤尚美

 “大学日本一”の称号を引っさげ、来季からは清水エスパルスへ加入する。プロの世界では、今までよりもさらに厳しいポジション争いが待っている。だが、たとえ日の目を見なくても努力を重ねることができる新井の強さは、今後も彼の選手生命を支える軸となる。

「流経大にはいろいろなカテゴリーがあって、たくさんのスタッフが自分たちのプレーを見てくれるけど、やっぱり一番評価されるのはトップチーム。そこにたどり着くまでにこの4年間、もがき続けてきたけど、『プロになる』という目標に向かってずっとブレずに突っ走ることができた。そういう精神的な強さは身についたかなと思います」

「清水の練習に参加した時、ロクさん(六反勇治)に言われたのは、GKは一つしかないポジションだし、スポットライトを浴びる時期が他のポジションより遅いけど、そこまでに自分をどれだけ磨けるか。ロクさんはプレーも人柄も本当にお手本になる人です。でも、憧れだけで終わっちゃダメ。追い抜け、追い越せっていう気持ちでやることが大事なので、プロになっても努力を忘れずに、自分を磨きまくろうと思います」

 もがいて、もがいて、ようやくつかんだチャンスで最高の結果を残して見せた。しかし、そこは新たなスタートライン。次のステージでも大きな花を咲かせるため、新井はしっかりと地に足をつけて歩んでいく。

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