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東洋大MF宮吉悠太、4年目にしてスタメンを勝ち取ったある試合とは

2017.12.22

今季から左サイドハーフを務める宮吉 [写真]=藤井圭(スポーツ東洋)

 文=藤井圭(スポーツ東洋)

 今季から1部を戦っている東洋大サッカー部。その中で、最上級生になって唯一スタメンの座をつかんだ男がいる。宮吉悠太だ。

 三兄弟の末っ子として生まれた宮吉は、兄二人の影響でサッカーを始める。中学時代は出身である滋賀県のクラブチームに所属。その頃は「上を目指すというよりは、ただサッカーを楽しんでいた」。そんな彼が上のレベルを目指すきっかけとなったのが、京都橘高校への進学だった。高校では2年生から2年連続で、全国高校サッカー選手権大会に出場。さらに2年時には京都橘史上初となる決勝の舞台も経験した。決勝ではPK戦で敗れるものの、3人目のキッカーを任されるなど、チームの快挙達成に大きく貢献。「試合前の国立は本当にドキドキワクワクといった感じで。でも試合に入ったら緊張せずにいつも通りにできた」と当時を振り返った。2年生ではボランチを務めると、3年生では小屋松知哉(京都サンガF.C.)と2トップを組み、FWとして活躍。3年時もベスト4に進むなど、京都橘高の黄金期には欠かせない一人として名を馳せた。

 輝かしい高校生活を送った彼が次に選んだ舞台は、関東大学サッカーリーグだった。当時すでに同じ高校で1つ上の先輩・仙頭啓矢(京都サンガF.C.)が東洋大学へ所属している。その東洋大とのつながりに加えて「古川監督と小学校の時に、京都サンガのスクールで教えてもらっていた」と現役引退後、京都サンガF.C.のスクールコーチとして宮吉を見ていた古川毅監督との縁から東洋大への進学を決意。しかし大学では、試合に出場できない日々が続く。3年生まで公式戦での出場は0。同じ高校の仙頭は、1年生から試合に絡み、チームのエースに成長し、後輩で入ってきた倉本光太郎も自分より先に公式戦デビューを果たす。当時の宮吉は、その同僚たちの姿をスタンドから見つめることしかできなかった。

 しかし、上級生になっても彼がやめなかったこと。それが“出場選手へのサポート”だ。「試合に出ていなかった3年間も腐らずにトレーニングや、チームの裏方の仕事とかも自分から進んでやるような人間性だった。どこかで報われてほしいなと思っていた」。すぐ近くでその姿を見ていた古川監督のこのコメントに凝縮されている。宮吉自身も「(試合に)出てる出てないは関係なくサッカー部に所属していて、基本的には下級生が荷物の管理をしてくれているが、全てをやれっていうのは違う。学年に関わらず少しでもできればと常に思っている」という気持ちを上級生になった今でも忘れていなかった。

 その宮吉がスタメンに名を連ねるきっかけとなった試合が、第91回関東大学サッカー前期リーグ戦の第4節で明大に敗れた翌日に、出場のなかったメンバーで行われた練習試合だった。その試合で東洋大は明大に3ー0で完勝。宮吉は2得点1アシストと全得点に絡む活躍をして勝利に導いた。そこで「気が利いて、こぼれ球にしっかり詰めることができる選手」と見極めた古川監督は、翌週の第5節桐蔭大で先発起用する。「だいぶ緊張していて硬かった」と振り返った宮吉は、得点に絡むことはなかったものの、積極的にチャンスをつくり、チームの勝利に貢献。その後は毎試合スタメンに入るなど、ピッチ内外での貢献度を評価された宮吉は、大学4年目にしてチームの欠かせない存在に成長した。

 学生時代からボランチやFW、そして現在では左サイドと複数ポジションをこなし、その都度スタメンを獲得してきた宮吉。どのポジションが得意かという問いにも「メンバーの特徴やチームのスタイルに合わせてやってきたので、一番やりやすいところは特にないかもしれない」と分析する。現に古川監督は、今季リーグ戦の開幕前にボランチでの起用法を探しており、逃げ切り策の1つとしての投入も考えていた。しかし、今季は1部に昇格して昨年ほどボールを支配するサッカーができなくなった。その中で宮吉のサイドハーフへの起用が、高い位置から積極的に守備をするスタイルにはまり、定位置をつかんだ。このポリバレントな能力は彼の大きな持ち味の1つである。

 サッカーを好きな人には“宮吉”という名前に聞きなじみがあるかもしれない。彼の兄はJリーグでも活躍している宮吉拓実(サンフレッチェ広島)である。兄とはサッカーの話をほとんどしないというものの、プロサッカー選手が身内にいるということも向上心へとつながっている。高校時代には「宮吉の弟」と呼ばれ悔しい思いもしたという。しかし「自分のサッカー人生は兄のおかげでいろいろな経験をさせてもらえた。兄が目標であり、兄を超えたい」。この気持ちが、さらに上のレベルへと強く意識させる。「ハードワークもできて前からプレッシャーもかけることができて、そこからチャンスをつくれる」と古川監督が振り返るほど、守備での貢献度は高い。しかし本人は「攻撃の面で貢献できていない」と現状に満足していない。確かに3得点1アシストは、攻撃陣の中では1番低く「アタッカーとしては物足りない」と分析している。兄の待つプロの舞台へ。自身をさらに上へと進めるために、遅咲きながらも必要不可欠な存在となった宮吉のさらなる躍進に注目だ。

選手のコメントはスポーツ東洋のホームページ(http://sports-toyo.com/news/detail/id/7598)をご覧ください!

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