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本田とソルティーロの新たな挑戦とは…U-12ジュニアチャレンジで躍進した選抜チームに密着

2017.08.28

大会前には強化合宿を実施。即席チームながら、決勝トーナメント進出を果たした [写真]=川端暁彦

 8月24日から27日にかけて、『U-12 ジュニアサッカーワールドチャレンジ 2017』が東京都内にて開催された。今年で5度目の開催となった同大会へ、初めて出場して決勝トーナメント進出を果たした選抜チームがある。『SOLTILO WORLD SELECT』だ。

 SOLTILO FAMILIA SOCCER SCHOOL(ソルティーロ ファミリア サッカー スクール)は、本田圭佑が2012年に創始したサッカースクールである。現役選手がオフ期間などを利用してサッカースクールを開くことは別段珍しくないが、本田が仕掛けたのは常設のサッカースクールであり、当初から趣が違っていた。その後、本田率いるグループはオーストリアのSVホルンを買収したり、国内の中学年代のクラブチームを参加に加え、さらに千葉県に本拠地を置くジュニアユース、ユースチームも設立。短期間でスクールからトップチームまでのピラミッド構造を形成してみせた。

 現在、SOLTILOのスクールは関東、関西、九州まで幅広く展開するようになっており、このスクール生と、大会参加資格を持つジュニアユースチームの中学1年生の早生まれ選手たち、そこにさらに海外の選手たちも加える形で『SOLTILO WORLD SELECT』は編成された。「海外組」はSOLTILOが中国で展開するスクールから選ばれた日本人2名と、米国に持つ2つのチームから選ばれた米国人2名の計4名である。

 スタッフの一人は「最初は海外の子がいきなり来て大丈夫なのかなと思った」と心配していたそうだが、それも無理はない。この大会向けに編成された完全な急造の選抜チームである。チームを率いる監督についても立候補者を募っての「セレクション」を実施。グループを率いる本田自身が見守る中で、指導実践に加えて、ペーパーテストも課してスタッフが選定された。こうした指導者たちを競争させるようなやり方は、選手を育てることに加えて「指導者を育てたい」と本田自身が強く望んでいることを反映してのものだったという。

 選ばれたのは、かつて横浜FCや東京Vでプレーし、その後は米国や香港でもプレーした経験を持つ吉武剛氏。1981年生まれ、35歳の指揮官は「一人の指導者としてこの高いレベルの大会に参加できるのは楽しみだし、すごく面白い。子どもたちがやってきたことを表現できるようにしたい」と意欲と野心を隠すことなく、大会に臨んだ。

 最終日以外の会場となったヴェルディグラウンドは、かつて吉武監督自身が汗を流し、「特別な思い入れがあるし、思い出がある」場所でもあるが、そんな縁深い場所で『SOLTILO WORLD SELECT』は予想されていた以上のハイパフォーマンスを見せ付けることとなった。

 まずグループステージでは宮城県の街クラブであるACジュニオール、米国予選を勝ち抜いてきたパテアドーレス、そしてグループの本命と目されていた強豪Jクラブの川崎フロンターレU-12と対戦。初戦でACジュニオールを4-0の大差で破ると、続く2日目のパテアドーレス戦では常に先行される流れながら、FW松代陽翔のFKなどで追い付いて2-2のドロー。吉武監督が「外国勢はまず奪いに来る姿勢が違うので、その違いを感じながら、チャレンジする姿勢を見せてほしい」と願ったとおりの好ゲームだった。そしてグループ最終戦では川崎を2-0で破り、グループ首位で決勝トーナメント進出を決めた。

 続く決勝トーナメント初戦では、準優勝する東京都U-12に0-6の大敗を喫してしまったものの、5~8位トーナメントは見事に勝ち抜いて、最後は湘南ベルマーレスクール選抜を米国から参加のMFミゲル・チャベスの得点で破って、5位でフィニッシュ。国内外の強豪がそろった大会で24チーム中5位の好成績を収めることとなった。

 キャプテンを務めたDF菅原聖義は「どんなチームが相手でも、一対一だけは絶対に負けたくない」と話していたが、これは本田がSOLTILOで求めているこだわりの一つだという。「結局、上に行くのは一対一で勝てる選手」(吉武監督)ということを押し出しつつ、「しかしサッカーは一人でドリブルするのが正解のスポーツではない」(同監督)というバランスの部分を選手の段階に応じて、かつ選手のほうから引き出していくことを意識して指導に当たってきたという。

 10月からはオーストラリアでも新たなスクールがスタートするなど、さらに幅広く世界展開を図るSOLTILO。「本田圭佑のサッカースクール」という漠然としたイメージが先行してきたが、今回の『U-12 ジュニアサッカーワールドチャレンジ 2017』での躍進は日本サッカー界でより実体のあるプレゼンスを得ていくための第一歩となるかもしれない。

取材・文=川端暁彦

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