2017.01.09

5戦連発で青森山田を優勝に導いた高橋壱晟、前回大会の挫折を経て変えた意識

高橋壱晟
表彰式後に笑顔を見せた青森山田の高橋壱晟(左)と廣末陸(右) [写真]=兼子愼一郎
世界各国を放浪するサッカージャーナリスト。巷ではユース教授と呼ばれる。

 青森山田は前回の高校選手権準決勝・國學院久我山戦で後半アディショナルタイムの失点で1-2と敗れ、ベスト4で姿を消した。

 高橋壱晟は「自分のせいで負けた」と悔いた。相手右CKの守備に回っていたが、ボールが流れた瞬間にラインを上げることが遅れ、相手シュートがオフサイドにならないままゴールに突き刺さったのだ。「すぐにラインアップをしていたら、失点していなかったかもしれない」と自分を責めたが、あの大会は“人生を変える大会”となった。

 昨年度の選手権前、黒田剛監督は「牙をむき出しにするとか、そういうプレーヤーではない。でもそういう雰囲気や怖さを出さないと殻を破れない。大舞台でこそ試されるし、この1年間、ずっと言い続けている」と言及。どこか自分を出さず、控えめな性格だった高橋はその性格が災いしたのか、持っているポテンシャルを引き出しきれないでいた。しかし、黒田監督の大会前の檄に「自分を変えないといけない」と、変化への欲望が沸き上がっていった。その選手権では4ゴールを叩き出し、ベスト4進出の原動力になり、最後の最後で悔いが残る結果だったが、間違いなく変化があった。

 今年は準エースナンバーの7番から、エースナンバー10番を託され、「選手権が大きな転機になった。点を獲ることがどこまで重要で、チームのためになるのか。もっともっと試合を決められる怖い選手になりたいし、ならなければいけない」と、自分を出すことを意識し、精力的に取り組んだ。

 高円宮杯プレミアリーグEASTでは総合力で上回る相手もおり、守勢に回ることも多かったが、その中でもチーム最多の7ゴールを挙げた。優勝を決めた最終節・FC東京U-18戦は佐々木快が得たPKを、「外す気が全くしなかった」というキックで決め、決勝点を挙げている。

 迎えた今大会では、初戦でチームのオープニングゴールを決めて勢いづけると、準決勝まで4試合連続ゴールの4ゴールと、昨年度大会と同じ得点数まで到達した。

 青森山田の選手にとって決勝戦は未知の領域になる。前橋育英が立ち上がりから前に圧力をかけてきたことから少し受け身になったが、高橋は虎視眈々とゴールを狙っていた。16分に決定的なピンチを廣末陸のファインセーブで凌ぐと、23分に鳴海彰人の右サイドからの折り返しを、左足でワントラップをすると、間髪入れずに左足を振り抜いた。これが相手DFに当たってコースが変わり、ネットを揺らした。5戦連発弾。緑のピッチに背番号10は輝いた。

 決勝前日に「埼スタでは今年こそ自分が点を獲ってチームを勝たせることができたらいいと思っている」と話していたとおりに有言実行してみせた高橋。「この3年間、監督が言っていること一つひとつが勉強になって、頭の中に入れるべきことだった。自分のメンタルをコントロールして、自分のプレーを発揮する。今大会は僕の中で安定したメンタルでやれている。監督に感謝しかありません」と口にした恩師への言葉は、自らがそれだけ青森山田で真摯にサッカーに打ち込んできた証拠でもある。聞く耳を持ち、それを行動に移そうと努力できる人間だったからこそ、高橋は変わることができた。

 卒業後はジェフユナイテッド千葉への入団が内定しているが、常に声を掛けてくれる黒田監督はいないし、何から何まで心配してもらえるほど甘い世界ではない。これからは自分で気付いて、自分で改善して行かなければいけない。今大会の5得点は「これからは自分次第。自分に厳しくやっていきたい」という恩師に向けての決意表明となった。

取材・文=安藤隆人

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