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PK献上と退場…滝川第二の主将・今井悠樹は後悔も、監督は奮闘を称える

2017.01.06

試合後、悔し涙を流す今井(5番) [写真]=梅月智史

取材・文=森田将義(提供:ストライカーデラックス編集部)

 序盤から拮抗した試合展開が続く中、試合が動いたのは前半22分だった。右サイドからあがったクロスを前橋育英FW人見大地がヘディングで落とすと、飯島陸がこぼれ球に反応。ドリブルで仕掛けたところを倒され、PKを獲得すると、長澤昴輝が決めて前橋育英が先制した。以降は滝川第二がエース・持井響太を中心に反撃を試みたが、前橋育英の激しいプレスに苦しみゴールが奪えず。後半37分には人見をペナルティーエリア内で倒し、この日2度目のPKを与えると、人見自らに決められ、勝敗が決した。

 日本一となった2010年大会以来となるベスト8進出を決めた滝川第二は、ここまでの3試合で13得点を奪った攻撃陣に目が行くが、守備陣もここまで無失点。堅守を支えてきたのが、主将を務める今井悠樹だ。「今大会に入って、いちばん成長している選手」と松岡徹監督が名指しで称賛するほどの活躍で、勝ち上がりを支えてきたが、目標とした埼スタ入りを前にし、待っていたのは過酷な現実だった。

 前半21分に自らのファールによりPKを与えて、先制点を献上した。後半36分にはペナルティーエリア内で仕掛けた前橋育英FW人見大地に対して、「2点目を取られたら、終わりだと思い、冷静さを失っていた」とスライディングで倒してしまい、2枚目の警告を受けた結果、退場となった。このプレーによって与えた2度目のPKを決められ、0-2で敗戦。今井は試合後、「キャプテンの僕がレッドカードで退場し、チームに迷惑をかけてしまった。申し訳ない気持ちでいっぱいです。プレーとしても大したプレーができなくて、悔しい。ディフェンスリーダーとしても、キャプテンとしてもやってしまった」と無念を口にした。

 ただ、松岡監督が「彼自身は危ない場面を何度も防いでくれていた。PKを与えた場面はDFが悪いというよりも、その前の段階に問題があったと思う」とフォローしたように、彼一人のせいで負けたわけではない。それどころか、彼の存在がなければ、選手権でベスト8まで進むことなど不可能だったのは確かだ。

「個性強すぎるヤツが多すぎて、まとめるのがすごく大変だったし、苦しいことのほうが多かった」。そう振り返るように、主将を託された今季は重圧に耐えながらも、なんとかチームを勝たせようと奮闘を続けた。苦悩の中で成長を実感するのが人間面。「キャプテンとして、僕がいちばん元気を出して頑張らなアカンと思っていた」とこれまで自らの欠点として挙げてきた気分屋で、人の前で話せなかったという課題を少しずつ克服していった。

 滝川第二OBである松岡監督も現役時代に主将を経験。「チームのことばかりで、自分のプレーをあまり覚えていない。いつの間にか帝京さんにPKで負けていた」と苦笑いするように、キャプテンの重圧は誰よりも知っている。だからこそ、松岡監督は今井に伝えたいことがある。「今後の人生、いろんなことがあるし、彼はこれを糧に成長していくと思う。(今日の結果は)短い目でみたらかわいそうだけど、長い目で見ればすごく貴重な財産になると思う」

「ピッチにキャプテンがいなくなってからも、テーマである“心のあるチーム”を見せてくれたし、最後の最後まで戦う、滝川第二らしさは見せてくれた」と指揮官が称える今年の代の中心だったのは今井で間違いない。目標とした埼スタ行きを逃した悔しさを見せつつも、「正直、こんなところまで来られるとは思っていなかった。一試合一試合勝っていくにつれて、みんなの勝ちたいという想いが強くなっていった。いろんな人に良かったと言ってもらえたし、僕自身チームがまとまっていったように思う」という言葉を残し、高校サッカーを卒業した。

(試合後コメント)

前橋育英
山田耕介監督
滝川第二はこの3試合、開始から10分以内に得点を奪っているので、立ち上がりはリスクを避けて蹴り合いになるのを覚悟し、ボールを大きく蹴ろうと伝えていました。10、15分が過ぎたら、リズムよくつないでいこうという狙いでした。この試合、出場停止だった角田涼太朗のところで不安もありましたが、代わりに入った小山翔も2年生のころから試合に出ていた力のある選手。けがが多かったのですが、何とか間に合い、良いプレーをしてくれました。

24番 人見大地
前半の最初からゴールは狙っていた。後半もチャンスが多かったので、シュートを打とうと思っていたのですが、(PKをもらった場面は)相手がスライディングするのが見えたので、落ち着いて切り返したらハンドになりました。PKは練習をしっかりしてきて自信もあったので、しっかり決めることができました。競り合いで負ける場面もありましたが、チームのために走ることなどコツコツやっていたので、結果につながって良かったです。

滝川二
松岡徹監督
前橋育英さんはやっぱり強かった。技術の差を知ることができたのが勉強になりました。技術があってボールが収まる㉔人見大地を起点にした前橋育英の攻撃を奪い、攻撃に転じたかったのですが、思うようにボールが落ち着かず攻撃ができませんでした。この3試合、立ち上がりに点が取れていたので、ペナルティーエリア内に入ればチャンスがあるぞと選手に声をかけていたのですが、思うようにいきませんでした。前橋育英さんが自分たちの良いところを出したので、ウチからすれば良いところが出せなかった試合だったと思います。

ストライカーDX高校サッカー特集ページ

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