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失点後も焦らず、ひたむきに…同点、逆転劇を生んだ佐野日大・指揮官の言葉

2017.01.06

佐野日大は長崎のゴールで駒大高に勝利した [写真]=兼子愼一郎

取材・文=河治良幸(提供:ストライカーデラックス編集部)

 3回戦で山梨学院に4得点を奪った駒澤大高の攻撃を、これまでどおり5バックで跳ね返し、FW野澤陸をターゲットにカウンターを仕掛ける佐野日大。そのプランは後半途中まで見事にはまっていたが、駒澤大高は後半22分にGK鈴木怜のロングキックからヘディングを2本つないで、途中出場のMF米田泰盛が反転から豪快なミドルシュートを突き刺した。これで試合の流れが駒澤大高に傾いたかに思われたが、諦めない佐野日大は自陣のFKからGK中村一貴のキックを野澤がペナルティーエリアの手前でDFと競り、飯淵玲偉がヘッドで裏に出したボールを梅澤峻がスライディングで流し込み同点。そして80分では決着つかず、PK戦になりかけた後半アディショナルタイムに、セカンドボールを中央で素早くつなぎ長崎達也が劇的な逆転ゴール。佐野日大が初のベスト4進出を決めた。

 後半22分に喫した失点は、佐野日大のプランを大きく崩したものかに思われた。それまで5バックが見事にはまり、駒澤大高のパワフルな攻撃をほぼ完璧に封じていたからだ。しかし、駒澤大高が米田泰盛に続き、菊地雄介を投入した直後で守備の確認がうまくできていない状況で、相手GKのロングキックからDFラインの手前でヘッドパスをつながれた。このとき、佐野日大の左サイドバックを担う梅澤峻は中央に絞って菊地に対じしたが、反転する相手に対して「もう1歩寄せることができなかった」(梅澤)。手前からミドルシュートを決められた。

 残り20分を切ったところでリードを許した佐野日大。だが駒澤大高の選手たちがバックスタンドの応援団に駆け寄り、喜びを爆発させる間に佐野日大はキャプテンの福田一成が手をたたきながら「まだ行けるぞ」という意志をチームメートに示し、すぐに前を向いた。そして、それまでと同じく前線の野澤陸にボールを当て、後ろの選手が追い越しに走るという攻撃を繰り返す。

 その象徴的なシーンが後半24分、野澤が競ったこぼれ球を駒澤大高DFがGKに戻すと、長崎達也が猛ダッシュで追いマイボールにした。結局、駒澤大高DF高橋勇夢のクリアでCKとなったが、その2分後に同点ゴールがもたらされた。野澤の背後でセカンドボールを拾いにいった途中出場の大熊啓太がハーフウェーラインの手前でファウルを受ける。そこから佐野日大は全体を押し上げると、GK中村一貴のキックを前線で粘り強くつないで同点ゴールに結びつけたのだ。

「1点目までは海老沼(秀樹)先生もぜんぜん大丈夫と試合前から言っていたので、1点取られても冷静にと言われていたので、そこに関しては下がることもなく、逆に点を取りに行くぞと自分たちのモチベーションも上がったと思います」。一条との3回戦から連続得点となる同点弾を決めた梅澤が振り返るように、リードされた後も慌てず、ひたむきに、自分たちのできる攻撃を前向きにやり切る形が同点劇につながったのだ。

「守ってカウンターというよりも、前に出て行く準備を後ろでして、いい形でボールを奪ったら預けて前を向いて行こうという」。海老沼秀樹監督は現在のスタイルをそう表現する。だから選手たちにも「守備をしてるんだけど、攻撃の準備のための守備なんだよ」と言い聞かせてきた。試合の終盤になっても海老沼監督のその教えを忠実に実行する選手たちはセカンドボールを相手DFがクリアしかけたところでMF小林拓海がボールを奪い、大熊啓太とのワンツー突破から長崎が逆転ゴールを決めた。

 ベースとなるシステムや戦術はある。しかし「1プレー1プレーを一生懸命にやって、ひとつひとつのボールをひたむきに追った結果だと思います」と語る指揮官は初の舞台となる準決勝に向けても、その姿勢を崩さないことを選手に求める。「生徒には一生懸命やっている姿がいろんな感動を呼んで、一体感が出ると。ベンチもピッチも応援席もみんなが一体感を生めれば流れが来るよと伝えている。それを準決勝で出せれば。感動を生むようなプレーをできればと思います」

(試合後コメント)

佐野日大
海老沼秀樹監督
本当に生徒が頑張ってくれた結果だと思います。1プレー1プレーを一生懸命やって、1つ1つのボールをひたむきに追った結果だと思います。本当に駒大さんは力のあるチームなので、ウチとしてはもう頑張って頑張って、それしかないので。ただ、頑張っているときにチャンスがあるんだよというのはずっと言い続けてきたことなので、それを信じて生徒がやってくれたことが、ああいう形で点が取れたと思います。
(ゲームプランは)何試合か見させてもらって、やっぱり立ち上がりが強いチームなので、絶対にそこだけは失点しないようにということで、前半ゼロで行ければ(後半)チャンスがあるからっていう、そういう話をして。また0-1で負けていても、0-1の心理というのが相手にもあるものなので。
ウチは我慢して我慢してしかない。だけど前線で野澤が頑張って、あそこで1対3とか1対4の状況なんですけど、お前が前を向いてやってくれれば周りが信じて絶対に抜かすから、そこをやろうということで、本当に今日は野澤がいいプレーをしてくれたと思います。
(前半も守備から)チャンスは狙っていましたけど、ボールがあんまり蹴れる子たちではないので、危ないときはクリアでいいと。ただチャンスがあれば野澤や長崎のところから狙って行こうと。(長崎には)お前が走ればチームが活性化するから、野澤がボールを持ったらひたすら走れと。彼もチームプレーに徹してくれたと思います。

3番 梅澤峻
あのポジション(左サイドバック)で守備もやってみんなと連携で止めて、そこから攻撃参加していくという両方で貢献できるというか。それは自分にとってプラスになることなのかなと。
(失点は)19番を警戒していたんですけど、前の試合でも1タッチで点を取っていたので、もう一歩寄せることができなかったというのが自分の反省点です。すごいうまかったですし、あんなシュートが来ると思わなかったといいうか。(チームとしても)クリアもはっきりしていなかったというのもありましたし、クリアするところはクリアするというところが反省点になったのかなと思います。
ただ1点目までは海老沼先生もぜんぜん大丈夫と試合前から言っていたので、1点取られても冷静にと言われてたので、そこに関しては下がることもなく、逆に点を取りに行くぞと自分たちのモチベーションも上がったと思います。今までやってきた試合の中で、前の一条戦だったり、点を取られても自分らは取り返せるという自信がついていたので。
(逆転は)自分たちのサッカーが全員守備からやるコンセプトで、1回クリアしたらまた前に行こうと。セットプレーは絶対に取られちゃいけないので全員で守ってというのはありましたけど、PKというのは頭になかったですし、もう1点取りに行こうというほうが大きかったと思います。
(後半のほうがポジションが上がっていたのは)前半は絶対にゼロというのがプランだったので、後半になって落ち着いてきたら自分たちの時間帯になるので、そこから上がろうと。(FWの野澤は)足元があるので、自分たちは野澤に入ったら収めてくれるということで、1人残しておこうというのがあって、そこから長崎や(途中出場の)大熊、佐野が関わって、そこから自分や赤間(虹都)がというのがあったので。
歴史を塗り替えられたことはプラスになっていますし、コーチと自分たちの関係も良く取り組めているので、このまま勢いで行っちゃえばなと思います。(インターハイの惨敗も)今はプラスになっているので、その反省があって今があると思います。

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